保健福祉の現場から

感じるままに

医師偏在是正策

2018年04月23日 | Weblog
M3「「医師少数区域」勤務に「経済的インセンティブ」検討 参院厚生労働委員会、医療法・医師法改正法案を審議」(https://www.m3.com/news/iryoishin/598580)。<以下引用>
<参議院の厚生労働委員会は4月19日、今国会に提出された「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」について審議、厚労省医政局の武田俊彦氏は、医師偏在対策として法案に盛り込まれた「医師少数区域」で一定期間勤務した医師を厚労大臣が評価・認定する制度について、認定医師には経済的インセンティブを設けることも検討すると答弁した。経済的インセンティブとしては、若手医師にとって、専門医取得が困難であることが地方勤務を躊躇する一因であることから、当該認定医師の専門医の取得・更新に係る費用支援などが想定されている。「地方で勤務をする意思を持っている医師が、適切にその選択ができる環境整備と、認定医師への評価を同時に進める」(武田局長)。「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」の目的は、医師偏在の解消。さまざまな施策が盛り込まれているが、与野党合わせて、計12人が質問した厚生労働委員会では、「医師偏在指標」や「医師少数区域」の定義、認定医師の仕組みについての質問が相次いだ。医師の多寡については、人口10万人当たりの医師数で見ているが、「医師偏在指標」に変更する理由について、武田局長は、医療ニーズや人口構成、患者の流出入を踏まえる必要性を指摘。国が定める「医師偏在指標」を基に、都道府県が、2次医療圏単位で「医師少数区域」または「医師多数区域」を指定。「医師少数区域」に一定期間勤務した医師については、厚労大臣が評価・認定。地域医療支援病院のうち、医師派遣の環境整備機能を有する病院の管理者は、認定医師等にすることを義務化する(法施行日以降に選任する管理者に適用)。診療科別の偏在については、産婦人科や小児科などで医師の多寡を可視化する指標を導入する。「医師偏在指標」や「医師少数区域」などについて、「法案成立後、客観的な議論に資するデータを基に、速やかに公開の場での議論を開始する」(武田局長)。2018年度中を目途に結論を得て、厚労省が示す指針に基づき、都道府県は2019年度中に医師確保計画の策定、実施するというスケジュールが予定されている。一方、「医師少数区域」で勤務する意思がある医師の不安解消策については、▽定期的に休暇取得ができるように、交代勤務できる医師派遣の支援、▽医師少数区域で勤務を行った後でも、専門的な研修を受けられるように、都道府県、大学、地域の医療機関などが協力して中長期的なキャリア形成プログラムを作成、▽育児休業明けの復職支援、院内保育所の設置――などを例に挙げた。また「地域の外来医療機能の偏在・不足等への対応」策として、(1)外来医療機能に関する情報を可視化、(2)その情報を新規開業者等へ情報提供、(3)地域の医療関係者等において外来医療機関間での機能分化・連携の方針等について協議――という仕組みを想定。地域医療対策協議会、地域医療構想調整会議などが既にある現状で、地域医療、医師確保対策についての会議体が増えることへの懸念も相次いだ。加藤勝信厚労相は、「屋上屋を重ねることを求めているわけではない。地域において弾力的な運用な運用を行うよう、都道府県に周知を図る」と答弁した。なお、医師の地域偏在の現状について、武田局長は次のように説明した。2016年の医師・歯科医師・薬剤師調査によると、人口10万人当たりの医師数は、最高の徳島県(315.9人)と最少の埼玉県(160.1人)で約2倍の開きがある。その上、同一の都道府県内でも、2次医療圏間で医師偏在があり、47都道府県のうち、34都道府県で、最大の圏域と最少の圏域で2倍以上の差がある。また医学部定員増に舵を切った2008年度から2014年度にかけて医療施設に従事する医師数は、約10%増加しているが、2次医療圏のうち、全国平均以上に医師数が増加しているのは21%の圏域、一方、24%の圏域は医師が減少している。武田局長は、医学部定員増加の効果が、全国各地に及んでいないことが、今回の法案提出の理由だと説明した。>

毎日新聞「医師不足の地域どうする 医学部の「地元枠」拡大を」(https://mainichi.jp/articles/20180421/ddm/005/070/062000c)。<以下引用>
<医師不足を解消するため、国は医学部の新設や定員増を図っている。ただ、いずれは人口減少のため、医師が過剰になり、医療費の膨張を招くことが懸念される。厚生労働省の推計では、働く医師の総数は2028年に約35万人になり、そのころに必要とされる医師数と均衡する。2年前の推計に比べて医師不足解消は4年遅れる見込みだ。若い勤務医の過労死や過労自殺が後を絶たないことを受け、勤務時間に上限を設けることが検討されていることなどが影響したという。 琉球大医学部の新設(1979年)以降、国は一貫して医師の抑制策を取ってきた。医学部志望熱は高いが、医師の供給体制を拡大すると、過剰になったときに減らすのが難しいとされるためだ。国が方針転換をしたのは、00年以降に病院の閉鎖が相次ぎ、「医療崩壊」が問題となってからだ。医師不足といっても、実際には地域差が大きい。人口10万人当たりの医師数で最も多いのは徳島県で316人。埼玉、茨城、千葉各県はその半数程度しかいない。このため医師不足の地域の医学部に定員を上乗せした「地域枠」を認め、定員増を図るようになった。地域枠の学生には奨学金を支給し、医学部卒業後の臨床研修はその地域で行うことを義務にした。医学部の新設についても16年に仙台市、17年には千葉県成田市の大学で実現した。「地域枠」は08年に始まってから導入する大学が増え続け、現在の定員は計1600人を超える。医学部を16カ所新設したのと同じ規模だ。ただ、その半数ほどは他の地域から入学する学生で、義務とされる臨床研修を終えると、都市部の医療機関に移るケースも多い。一方、地元で生まれ育った学生は卒業後も地元の医療機関に定着する確率が高い。地域枠を拡充する中で、地元の学生の割合を増やす方策を検討してはどうだろう。柔軟な発想で対策を練ることが求められる。地域の医療ニーズは診療科によっても異なる。現在は都道府県が地域の実情に応じて地域医療計画を策定することになった。医師の養成や定着も含めて、実効性のある医療供給体制を整備しなければならない。>

今国会(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/196.html)の「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/196-21.pdf)について、「医療法及び医師法の一部を改正する法律案の 閣議決定について」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000203213.pdf)p4「都道府県における医師確保対策の実施体制の整備」の「<医師確保計画の策定> ① 医療計画において、二次医療圏ごとに、新たに国が定める「医師偏在指標」を踏まえた医師の確保数の目標・対策を含む「医師確保計画」を策定する。(2019年4月1日施行) ※ 都道府県は、「医師偏在指標」を踏まえて「医師少数区域」又は「医師多数区域」を設定。<地域医療対策協議会の機能強化> ② 地域医療対策協議会は、「医師確保計画」の実施に必要な事項について協議を行うこととする。(公布日施行) <地域医療支援事務等の見直し> ③ 都道府県は、大学、医師会、主要医療機関等を構成員とする地域医療対策協議会の協議に基づき、地域医療支援事務を行うこととする。また、地域医療支援事務の内容に、キャリア形成プログラムの策定や、「医師少数区域」への医師の派遣等の事務を追加する。(公布日施行) ④ 都道府県の地域医療支援事務と医療勤務環境改善支援事務の実施に当たり、相互に連携を図らなければならない旨を定める。(公布日施行)」とある。「医師少数区域」、「一定の勤務経験」、「一定の病院の管理者」要件の具体的設定が注目される。さて、「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=436600)の「都道府県協議会に関する調査」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000192673.pdf)では都道府県別の状況が出ており、格差が大きいようである。地域医療対策協議会の機能強化には、「見える化」こそが重要と感じる。平成29年度全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000197363.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000197362.pdf)p40「地域枠の導入状況(都道府県別)」、p41「各医学部の地元出身者(地域枠を含む。)の割合」、p43「(参考) 秋田県地域枠の状況」が出ており、「これまで地域枠で秋田大学医学部に入学した者全員が、卒業後に秋田県内に勤務している。」とあるが、各都道府県ごとに、これまでの年度別の「自治医大・地域枠出身医師の勤務先(診療科、地域)」「派遣ルール」「キャリア形成プログラム」が公表されるべきであろう。そういえば、財政制度等審議会財政制度分科会(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)の「社会保障について」(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia300411/01.pdf)p77「都道府県へのインセンティブ;進捗に応じた財政⽀援(保険者努⼒⽀援制度、地域医療介護総合確保基⾦)- 保険者努⼒⽀援制度(平成30年度〜)及び地域医療介護総合確保基⾦の配分において、地域医療構想の進捗に応じた配分を⾏う仕組みを導⼊すべき」とあったが、地域医療介護総合確保基⾦の配分には地域医療対策協議会の組み入れも考えられるかもしれない。
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