保健福祉の現場から

感じるままに

糖尿病重症化予防とヘルスケア産業

2016年05月07日 | Weblog
SankeiBiz「社員に装着端末 糖尿病改善 医療費削減 経産省、月内から公募実験」(http://biz-journal.jp/sankeibiz/?page=fbi20160503001)。<以下引用>
<経済産業省は、糖尿病疾患の可能性が高い企業の社員に、ウエアラブル端末を着用させて健康状態を管理し、改善指導を行う実証実験を5月から開始する方針だ。糖尿病患者数や医療費の削減に加え、実験データを蓄積し、ビッグデータ解析を活用した糖尿病治療や予防に役立てる狙いだ。5月にも実証実験に参加を希望する企業や団体を公募する。6月に選定し、7月に実験を開始。約半年間のデータを採取した後、来年1月をめどに検証結果をまとめる。6企業・団体から約100人分のデータ収集を想定。使用するウエアラブル端末などは無償で貸し出す。対象となるのは糖尿病予備軍の診断基準とされる、ヘモグロビンA1c(NGSP)値が6.5以上の社員や職員。同意を得た上でウエアラブル端末を着用してもらい、対象者の歩数・活動量を常時計測し、体重と血圧の変化を職場で記録する。担当医師は日々のデータから改善活動を実践しているかどうかを確認。症状に応じて生活習慣の改善を指示し、悪化した場合は警告する仕組みを目指す。これまで糖尿病の改善指導をする際、対象者の活動量などの計測は自己申告だったため正確性に欠け、生活改善活動を行っているかどうかも把握できなかった。ウエアラブル端末を活用すれば「日々の活動量と改善度を正確に把握でき、糖尿病予防や治療に役立つ有益なデータを蓄積できるなどのメリットは大きい」(経産省ヘルスケア産業課)と強調する。今後、実験の検証結果を介護やフィットネスなど関連産業のサービス向上にも役立てたい考えだ。厚労省によると近年の糖尿病の国民医療費は年間1兆2000億円程度で、全体(約40兆円)の約3%を占める。経産省は一連の取り組みで改善効果が確認できれば「大幅な医療費削減効果が見込める」と期待を寄せる。>

メディウォッチ「厚労省が糖尿病重症化予防プログラムを策定、患者の把握と受診勧奨を促す関係者間の連携方法を提示」(http://www.medwatch.jp/?p=8757)。<以下引用>
<厚生労働省は先ごろ、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し、公表しました。また日本医師会および日本糖尿病対策推進会議と重症化予防に係る連携拠点を締結しており、都道府県や市町村に対して、重症化予防プログラムの周知と取り組みの推進を依頼しています。呉市や荒川区などの先行事例を横展開し、糖尿病性腎症患者の重症化を予防 糖尿病が重症化し、最終的には人工透析に至ってしまうケースが少なくありません。透析に至ってしまえば、患者のQOLが著しく低下するだけでなく、医療費も高騰することが知られています。このため、厚労省は2012年度の診療報酬で「糖尿病透析予防指導管理料」(月1回、350点)を設置。これは入院外の糖尿病患者に対して、医師や看護師・保健師・管理栄養士などが共同して必要な指導を行うことを評価するものです。さらに、最近の研究から「運動療法」の併用によって腎機能が改善することや、透析に至るまでの期間を遅らせられることが分かったことを受け、今般の2016年度診療報酬改定で、糖尿病透析予防指導管理料に「腎不全期患者指導加算」(100点)を新設しました。しかし、糖尿病患者が医療機関を受診しなければ、こうした点数が活用できません。そこで厚労省は、重症化リスクの高い「医療機関の未受診者」や「受診中断者」に対して、自治体をはじめとした関係機関が適切な受診勧奨・保健指導を行うことで治療に結びつけ、最終的に透析予防(重症化予防)につなげたいと考え、本プログラムの策定に至ったものです。このプラグラムは、東京都荒川区や広島県呉市、埼玉県などの先行自治体の事例を横展開するものと言えます。市町村・都道府県・医師会・糖尿病対策推進会議の有機的連携が重要 この受診勧奨などを進めるためには、関係機関の有機的な連携が重要です。このため厚労省は関係機関がどのような役割を担い、どのように連携すべきかを示しています。まず住民に最も身近な基礎的自治体である市町村では、「地域における課題(疾病構造や健康課題)の分析」→「対策の立案」(地域の医師会などとの協議も含む)→「対策の実施」→「実施状況の評価」を行うことが求められます。都道府県(後期高齢者広域連合も含む)は、市町村の実施状況をフォローするとともに、都道府県レベルでの「医師会や糖尿病対策推進会議などとの取り組み状況の共有」「対応策などに関する議論」「連携協定の締結」「糖尿病性腎症重症化予防プログラムの策定」などを行う必要があります。厚労省は個別プログラム策定に当たり、▽対象者の抽出基準が明確である ▽かかりつけ医と連携したものである ▽専門職が保健指導を実施する ▽事業の評価を行うものである ▽都道府県の糖尿病対策推進会議などとの連携を図る―ことを求めています。医療・介護分野でも「身近な市町村での具体的な取り組み」と「都道府県による市町村への支援」の2輪の重要性が指摘されており、ここでも同様の関係構築が求められます。また、具体的な取り組みにおいては地域医師会の協力が不可欠です。厚労省は、▽郡市区医師会に対する動向の周知や助言 ▽会員への周知、かかりつけ医と専門医などとの連携支援―を求めています。さらに都道府県の糖尿病対策推進会議に対しては、▽医学的・科学的観点からの助言▽地域住民や患者への啓発▽医療従事者への研修―を行ってほしいと求めています。個別患者の状況に応じて、受診勧奨・保健指導を柔軟に進める こうした自治体・医師会・推進協議会の連携の下で、大きく「受診勧奨」と「保健指導」の2つの取り組みを行うことで、適正な治療に結びつけることが期待されます。前者の受診勧奨では、▽手紙の送付▽電話▽個別面談▽戸別訪問▽受診後のフォロー―などが例示されていますが、地域の実情に応じて柔軟に対応することが必要です。具体的には、▽第1-2期の患者では勧奨の優先順位を検討する▽第3-4期では受診を確認の上で未受診の場合には別の手法も考える(手紙→電話→訪問など)―といった対応が考えられます。また後者の保健指導に当たっては、▽電話などでの指導▽個別面談▽訪問指導▽集団指導―などさまざまな手法が考えられますが、厚労省は「健診データなどを用いて患者自身に自分の健康状態を理解してもらう」ことと、「生活習慣の改善につなげる」ことが重要であると強調します。ただし、誰しもが「生活習慣の改善」が必要なことは一般論として理解しており、それを、「自分がどの程度のリスクを保有しているのか」「今のままではどれだけ危険なのか」に結びつけることは容易ではありません。丁寧なフォローが極めて重要です。具体的には、▽第1-2期の患者では個別・集団指導の組み合わせ ▽第3-4期では初回は個別面談、訪問などの対面指導を行う―ことが考えられます。糖尿病治療を中断してしまった患者や健診未受診者などハイリスク患者を抽出 また厚労省は、▽2型糖尿病である(空腹時血糖126mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上、糖尿病治療中、過去に治療歴ありなど)▽腎機能が低下している―患者を次の3つの手法で選定し、指導などを行うよう求めています。▽健診データ・レセプトデータなどを活用し、ハイリスク者を抽出する(日本糖尿病学会、日本腎臓病学会のガイドラインに基づく基準を設定する)▽医療機関において糖尿病を治療中の患者から、「生活習慣改善が困難な患者」や「治療を中断しがちな患者」などを医師の判断で抽出する ▽治療を中断してしまい、かつ健診未受診である患者を抽出する(過去に糖尿病治療歴があり、最近1年間に健診受診・治療歴がないなど) かかりつけ医と関係機関の連携が重要、地域連携パスの構築・運用も さらに、重症化予防を推進するためには、「自治体や関係機関」と「かかりつけ医」「専門職」が連携することも重要です。厚労省は、▽あらかじめ自治体と医師会・糖尿病対策推進会議などが十分協議し、推進体制を構築する ▽かかりつけ医が個別患者の状況などを保健指導実施者に伝達する ▽地域連携パスなどを作成し、運用する ▽医科・歯科連携の仕組みを構築し、活用する ▽臨床における検査値(血圧、血糖値、腎機能など)を、糖尿病連携手帳などを活用して、本人・関係機関・かかりつけ医で共有する―ことなどを求めています。>

先月出された「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000121902.pdf)の対象は、「①2型糖尿病であること:a.空腹時血糖126mg/dl (随時血糖200mg/dl)以上又はHbA1c 6.5%以上、b.糖尿病治療中、c.過去に糖尿病薬使用歴又は糖尿病治療歴あり、のいずれかであること」かつ「②腎機能が低下していること」であるが、p7「特定健診では尿蛋白が必須項目であり、糖尿病に加えて尿蛋白(+)以上であれば第3期と考えられる。(±)は微量アルブミン尿の可能性が高いため、医療機関では積極的に尿アルブミン測定を行うことが推奨されている。尿アルブミンは健診項目にはないが、糖尿病で受診勧奨判定値以上の場合、医療機関への受診勧奨がなされ医療機関において尿アルブミンが測定され、第2期の把握が可能となる。」は認識したい。重症化予防は、医療機関と保険者の連携で取り組む必要がある。糖尿病重症化予防はヘルスケア産業(http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/index.html)の関与にも期待したい。経済産業省「企業保険者等が有する個人の健康・医療情報を活用した行動変容に向けた検討会」資料(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mono_info_service.html#kenkou_iryou_joho)(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/jisedai_healthcare/kenkou_toushi_wg/kenkou_iryou_joho/pdf/003_02_00.pdf)も参考になる。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000015v0b-att/2r98520000015v4o.pdf)p11~15、(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001w361-att/2r9852000001w3ai.pdf)では、それぞれ保健事業による大幅な医療費適正化事例が紹介されているように、保健事業による医療費適正化はけっして夢物語ではないように感じる。そういえば、経済財政諮問会議(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/)の経済・財政一体改革推進委員会(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/index.html)のKPI・「見える化」項目一覧(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280419/shiryou3.pdf)p15「かかりつけ医等と連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体の数、広域連合の数;※初期値の把握は2016年」とあった。「保険者インセンティブの検討状況」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000121285.pdf)p5「国保保険者努力支援制度の前倒し」は今年度からであり、国保部門と健康増進部門の連携は喫緊の課題かもしれない。「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html)は被用者保険以上に、国保の取り組みが注目されるように感じる。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする