保健福祉の現場から

感じるままに

公費事業と単価格差

2013年10月18日 | Weblog
10月17日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会基本方針分科会資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000026722.html)が出ているので目を通しておきたい。予防接種に関する基本的な計画素案(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000026715.pdf)p5では、「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会等において、「広く接種することがのぞましい」とされた7つのワクチンのうち、平成25年度にHib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症の3ワクチンが予防接種の対象疾病となったが、その他水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、成人用肺炎球菌の4ワクチンについては、ワクチンの供給・実施体制の確保、必要となる財源の捻出方法等の検討を行った上で、関係者の理解を得るとともに、副反応も含めた予防接種施策に対する国民の理解を前提に、必要な措置を講じていく必要がある。また、ロタウイルスワクチンについても、4ワクチンと同様に、必要な措置を講じていく必要がある。」とされており、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、成人用肺炎球菌、ロタウイルスの5ワクチンについては期待される表現である。それ以上に注目されるのは、予防接種に関する基本的な計画素案(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000026715.pdf)p7で、「予防接種に要する費用については、自由取引で価格が決められているが、接種費用の多くが公費により実施されている。そのため、国、地方公共団体、その他の関係者が連携しながら、ワクチンに関する価格調査の実施、公平で透明性の高い価格決定プロセス及び接種に要する医学的管理の費用水準の検討等を行い、その結果について国民や関係者に情報提供する取組みが必要である。」とされていることである。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b5l0-att/2r9852000002b5nr.pdf)p41~に出ている指定都市の平成23年度予防接種委託単価をみると大きな格差があることがわかる。予防接種は自由診療であり、市町村による定期接種であっても自治体間で異なっている。一方で、保険診療には公定価格である診療報酬が設定されている。予防接種では、安全に実施する行為は同様であり、自治体によって、単価に大きな格差が生じることは本来はないはずであろう。以前の参議院質問主意書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/syuh/s180147.htm)、答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/180/touh/t180147.htm)では「ワクチン価格等の接種費用の実態調査のうち、市町村と医療機関との間の委託契約の価格については、都道府県を通じて市町村に対して確認中であり、ワクチンの卸売販売業者から医療機関に対する販売価格については、調査時期、調査方法等を検討している。」とあり、調査結果を踏まえた検討に注目である。しかし、公費事業の大きな単価格差は予防接種だけではない。例えば、今年7月に出た「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000363zv-att/2r98520000036455.pdf)p7で、各がん検診の自己負担額が出ており、自治体によって大きな格差があることがわかるが、おそらく、単価自体にも大きな格差がみられるはずである。それは、例えば、日本対がん協会(http://www.jcancer.jp/)が出している各支部のがん検診単価表をみれば確認できるであろう。そういえば、がん検診のあり方に関する検討会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000363zv.html)の資料4-1の6枚目のスライドで、平成24年度に、厚労省報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0301-4c.pdf)チェックリストの大項目を8割以上実施している自治体割合は胃がん67.1%、子宮がん66.4%、肺がん66.3%、乳がん67.7%、大腸がん63.9%とある。がん検診の精度を確保するためには、当然、一定水準以上の機器、スタッフ、情報管理などの確保が不可欠であって、それなりにコストがかかる。診療報酬に準じて単価設定している自治体も少なくないであろうが、自治体によって公費事業の単価設定に大きな格差がみられる実態を放置すべきではないように感じる。結論からいえば、予防接種事業や検診事業の自由診療では、統一単価設定は難しいかもしれないが、公費で行われる場合は、財政措置する際の積算単価を明らかにするとともに、全国自治体の実態調査を実施し公表することを期待したい。最近の「ユッケ事件」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%83%E3%82%B1%E9%9B%86%E5%9B%A3%E9%A3%9F%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6#.E3.83.A6.E3.83.83.E3.82.B1.E9.9B.86.E5.9B.A3.E9.A3.9F.E4.B8.AD.E6.AF.92.E4.BA.8B.E4.BB.B6)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025ttw-att/2r98520000025tz2.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025ttw-att/2r98520000025tzb.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025ttw-att/2r98520000025tzk.pdf)や「ツアーバス事故」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E8%B6%8A%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E9%81%93%E9%AB%98%E9%80%9F%E3%83%90%E3%82%B9%E5%B1%85%E7%9C%A0%E3%82%8A%E9%81%8B%E8%BB%A2%E4%BA%8B%E6%95%85)のような、「見た目がよく、安ければ良い」を医療の世界に持ち込んではならない。何でも市場原理や自由競争を煽り立てる風潮を少しでも変えたいものである。
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医学部新設の行方

2013年10月18日 | Weblog
読売新聞「東北新設医学部に地元医師採用しないで…市長会」(http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131017-OYT1T00957.htm)。<以下引用>
<国が復興支援策として東北地方に医学部の新設を検討していることに対し、東北6県の75市長でつくる東北市長会(会長=奥山恵美子仙台市長)は17日、医師不足を助長しないためにも、東北で勤務する医師を教員に採用しないよう求める特別決議を全会一致で採択した。宮城県石巻市の亀山紘市長が、岩手県花巻市で開かれた総会で「医学部新設の検討は大変心強いが、医師不足が生じない方策が必要だ」として提案した。特別決議は学生についても、多くは将来長期間、東北の地域医療に携わることなどを条件に募集するよう求めている。東北市長会は11月、国への要望活動を行う予定。>

河北新報「宮城医師会、医学部新設に反対 勤務医引き抜きを懸念」(http://www.kahoku.co.jp/news/2013/10/20131016t11016.htm)。<以下引用>
<安倍晋三首相が東北への医学部新設を検討するよう下村博文文部科学相に指示したことに関連し、宮城県医師会は15日、新設に反対する要望書を安倍首相をはじめ関係国会議員に郵送したと発表した。要望書は11日付。「医学部が新設されれば、教官として東北の基幹病院から多くの勤務医が引き抜かれ、東北の医療は間違いなく崩壊する」と反対姿勢を示した。理由としてほかに(1)東日本大震災で被災した県沿岸部の医師数が震災前の状態に回復した(2)既に実施した医学部の定員増で医師不足は解消する(3)医師の粗製乱造に拍車を掛ける-の三つを挙げた。嘉数研二県医師会長は「医師が大都市に集中したり、特定の診療科で極端に不足したりする偏在の是正こそが優先すべき課題だ」と語った。医学部の新設をめぐっては、安倍首相が4日、村井嘉浩宮城県知事の要望を受けて下村文科相に検討を指示した。宮城県内では、財団法人厚生会仙台厚生病院(仙台市)と、東北薬科大(同)が医学部新設構想を発表している。>

9月25日、日本医師会が会見で医学部新設に反対表明(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)し、「医学部新設で医師不足加速、壊滅的な状況に」(http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/182088/?category=)と大変な危機感が表明されている。9月30日には全国医学部長病院長会議も医学部新設に反対を表明している(http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/181761/?category=)。国家戦略特区の官邸資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai1/siryou5.pdf)p1で、「国際医療拠点の創設と連携して、医学部の新設」があり、日本医師会資料(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)p1にあるように、国家戦略特区第1次提案募集において、成田市、静岡県が医学部新設を要望している。今回は東北での新設が検討されているが、行方はどうなるであろうか。日本医師会の見解(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)では、医学部の教員確保が大変懸念されているが、そもそも東北地方に医学部が新設されても、東北地方に医師が定着しなければ意味がない。例えば、M3「医師不足への処方せん 東大、医科歯科大の2強続く、臨床研修マッチング「地域枠」が影響し始めた可能性も」(http://www.m3.com/iryoIshin/article/181666/?portalId=iryoIshin&pageFrom=openIryoIshin)では、医学部を持つ医科大学・医科大学、計79の本院分集計;「1位希望人数」が多い順ランキングにおいて、岩手医科大学79位、福島県立医科大学75位、弘前大学74位、秋田大学73位、東北大学70位、山形大学66位で、東北地方の各大学の大苦戦が目につく。東北地方への医師定着に力を入れるべきではないか、と感じる方が少なくないであろう。第一、これから医学部を新設しても卒業は最短で6年後である。日本医師会の見解(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130925_12.pdf)p2に、「人口減少など社会の変化に対応した医師養成数の柔軟な見直しを行いにくくなる。」とあるように、一旦、医学部が新設されると、医学部の定員調整と違って、柔軟な対応がしにくくなる。歯科医師過剰(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E9%81%8E%E5%89%B0%E5%95%8F%E9%A1%8C)や法科大学院定員割れ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E7%A7%91%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E5%AE%9A%E5%93%A1%E5%89%B2%E3%82%8C%E5%95%8F%E9%A1%8C)等と同じ轍を踏んではいけない、と思う方は少なくないかもしれない。国家戦略特区の官邸資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai1/siryou5.pdf)p1では、そのほかの規制改革提案として、「国際医療拠点において、病床規制の撤廃、外国医師・看護師の業務解禁、海外で認められる医薬品等を対象に混合診療の解禁」もある。以前、全国保険医団体連合会「TPP協定交渉と医療制度」(http://hodanren.doc-net.or.jp/tpp/130627TPP-iryo.pdf)p31では、「四病院団体協議会は、日本政府が米国に対応できる交渉能力があるかを疑問視しつつ、むしろ日本政府が米国の圧力をくみ取りながら、規制を緩和し混合診療を広め、医療法人制度(配当禁止)を突き崩すという点についても、注意を喚起している。」とあったが、9月11日に、大阪府・市が国際メディカル特区を申請(http://www.pref.osaka.jp/attach/20252/00133494/ganban.pdf)し、p7にあるように、①外国人医療スタッフによる特区内医療看護の規制緩和、②先進医療の推進・具体化のための混合診療の実施、③高度医療を提供するため内外から患者を受け入れる医療機関に対する病床規制の見直し、④株式会社による病院・診療所経営の参入が図られることはぜひ知っておきたい。そういえば、医師臨床研修マッチング(http://www.jrmp.jp/)の組み合わせ結果発表は10月24日(http://www.jrmp.jp/yotei.htm)であるが、東北地方の結果が気になるところである。
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精神病棟転換型施設の行方

2013年10月18日 | Weblog
キャリアブレイン「「病棟転換型施設」導入の検討を求める声も- 精神障害者に対する医療の指針検討会」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/41145.html)。<以下引用>
<厚生労働省の「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」が17日に開かれ、委員からのヒアリングが行われた。委員からは、精神病棟に長期入院する人の地域での生活を支えるため、病床を宿泊型の自立訓練施設や介護精神型施設などに転換する「病棟転換型居住系施設」の導入を検討すべきとする意見が相次いで上がった。岩上洋一委員(NPO法人じりつ代表理事)は、精神障害者らの地域での生活を支援する上での今後の検討課題として、▽保健所と市町村における精神保健福祉業務運営要綱の見直し ▽医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談や指導を行う者の配置 ▽重度かつ慢性の疾患を抱える人以外で、入院期間が1年を超える人への退院支援―などを提示。「課題が多岐にわたることから、常設の検討会の設置が必要」と指摘した。特に、病棟転換型居住系施設の導入については、「入院している人たちの意向を踏まえた上で、早急に議論することが必要」と述べた。岩上委員の意見に対し、伊澤雄一委員(NPO全国精神障害者地域生活支援協議会代表)は賛意を示した上で、「(地域生活の場である)街の中とはどういう概念なのか。そこも議論が必要」と指摘。河崎建人委員(日本精神科病院協会副会長)や千葉潜委員(青仁会青南病院院長)、伊藤弘人委員(国立精神・神経医療研究センター社会精神保健研究部長)らも、岩上委員の意見に賛同した。一方、広田和子委員(精神医療サバイバー)は、「現在、入院している人が、どうすることによって幸せな生活を送れるかと考えれば、病棟転換型居住系施設(の導入に)は反対」と訴えた。また、田川精二委員(日本精神神経診療所協会理事)は、精神障害者の地域生活の支援を考える上では、就労支援の充実が必要とした上で、「就職の支援だけでなく、継続して働くことへの支援も必要」と指摘。野沢和弘委員(毎日新聞論説委員)も同様の意見を述べた。>

精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000almx.html#shingi141270)の資料が出ればみておきたい。介護精神型老人保健施設に関してはネットで詳細な解説記事(http://hidekiueno.net/wordpress/wp-content/uploads/2013/05/9dd0cf294dced8be95fb8ffe64b85b001.pdf)が出ている。この際、「精神医療の現状」(http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=146953&name=2r98520000037jxk.pdf)の普及を図りたい。また、改革するためには、精神保健福祉資料「630調査」データ分析(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)をもとにした政策科学としての戦略的な対応が求められるように感じる。
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PET検査

2013年10月18日 | Weblog
がん検診としてPET検査を受けている方は、ぜひ、日本核医学会「FDG-PET がん検診ガイドライン(2012年改訂)」(http://www.jcpet.jp/files/pdf/がん検診ガイドライン2012マイナー改訂版120910.pdf)をみておきたい。p33に一覧表が出ており、癌検出におけるFDG-PETの有用性について、食道癌、肝臓癌、胃癌、前立腺癌、子宮頸癌、腎臓癌、膀胱癌が「有用性は高くない」とされていることはどれほど認識されているであろうか。特にp19で、消化器癌について「早期癌の発見に関しては、FDG-PET 検査は無力であることを認識すべきである」と強調されている。また、某施設の成績(http://www.pet-toyama.jp/seiseki.htm)が出ているように、PET検診の発見癌は甲状腺癌が圧倒的に多いことも理解しておきたい。さて、2006年日米投資イニシアティブ報告書(http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/0606nitibei1.pdf)p10「米国政府は、日本では血液検査の外部委託により、かなりの効率化が図られたことを指摘した上で、リスクの低い医療行為、特にMRIやPET、CTスキャン等反復性のある医療行為については、株式会社に柔軟に外部委託できるよう要請した。」とあったが、血液検査の外部委託と違って、PET検査は実施施設に患者が検査を受けに行かなければならない。しかも、薬剤の筋肉への生理的な集積があるため検査前には身体をあまり動かせない(http://www.nakatsu.saiseikai.or.jp/pet/pet/attention.html)という制限がある。確かに、PET検査は集約化しないと採算性が気になるが、平成16年8月1日の通知;医政発第0801001号(http://www.jrias.or.jp/statute/pdf/koseirodo20040801-0801001.pdf)p6~7に記されているように、「PET-CTによるCT単独撮影」が認められていることや「医師は専任や専従ではなく常勤であればよい」こと等も勘案されるであろう。今年3月4日の全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002woxm.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002woxm-att/2r9852000002wp3b.pdf)p72で「新たな医療技術への対応等を図るため、「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」の一部改正について(平成24年12月27日付け医政発1227第1号)により、PET-MRI複合装置の陽電子断層撮影用放射性同位元素使用室における使用に関し、MRI単独目的での撮影を行う場合を含め、当該装置を使用する場合の適切な防護措置や安全管理体制について明らかにしたところであり、各都道府県においては、ご留意の上、その遵守について管下医療機関に対する適切な指導方よろしくお願いする。」とされた。PET/MRI装置は既に商品化(http://www.innervision.co.jp/expo/products/philips_petmr_ingenuitytf)され、昨年12月には厚労省から、PET/MRI装置の取り扱いに関する通知(http://www.hokkaido.med.or.jp/new/juyo/pet-mri.pdf)が出された。また、従来から、PET検査は虚血性心疾患も保険適用であり、心臓核医学検査ガイドライン(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010tamaki.h.pdf)p20でわかりやすく解説されている。特に虚血性心疾患はMDCTの普及によって、画像診断が飛躍的に向上しており、既にMDCTを搭載したPET/CT(http://www.innervision.co.jp/041products/2008/p0801_12xctpet.html)も使用されている。平成24年度改定では心筋PET検査の保険適用が拡充された(http://www.jsnc.org/sites/default/files/paper/49-1/jsnc-49-19.pdf)ことも知っておきたい。さらに、PET検査は、てんかん(外科治療のための病巣診断)や心サルコイドーシスの診断も保険適用(http://www.ncgm.go.jp/sogoannai/housyasen/kakuigaku/medical.html)である。なお、平成24年度診療報酬改定の厚労省通知(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/6-2-1.pdf)p39で、PET検査に関する「該当しない場合は所定点数の100分の80に相当する点数を算定することとなる施設基準」について、「特定機能病院やがん診療連携拠点病院の指定を受けた病院を除く」とされた。特定機能病院(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000253pd-att/2r985200000253u3.pdf)やがん診療連携拠点病院(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_byoin03.pdf)は、がん診療だけではなく、虚血性心疾患の診療も多いであろう。また、専門医からは、既に認知症診療ではアミロイドPET検査(http://www.innervision.co.jp/suite/ge/advanced_report2011/120107.html)(http://www.j-adni.org/)が一般化してきていることを聞いている。PET検査をがん診療でのみ考える時代ではないであろう。医療介護情報局HP(http://caremap.jp/)では、都道府県、医療圏、市区町村ごとの保険診療届出件数が公開されており、略語(http://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/gyomu/gyomu/hoken_kikan/documents/ryakusho_ichiran.pdf)の「ポジ」;ポジトロン断層撮影又はポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影は332件であるが、このデータはいつのものであろうか。平成24年11月14日の中央社会保険医療協議会総会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000024885.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000024882.pdf)p13で、平成23年7月1日現在の届出状況が出ており、PET-CTは病院194(前年179)、診療所46(前年42)、PETは病院168(前年166)、診療所42(前年41)であるが、平成24年度診療報酬改定の厚労省通知(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/6-2-1.pdf)p39が出た以降はどうなっているであろうか。
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医療計画の機能強化

2013年10月18日 | Weblog
10月11日の社会保障審議会医療部会資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000026447.html)には目を通しておきたい。この資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000026440.pdf)p17で「医療機能の分化・連携について、二次医療圏ごとに協議する場を医療法上、規定することとするか。」が課題・論点になっていることは注目である。厚労省医政局通知(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_keikaku.pdf)p36では「圏域連携会議は、各医療機能を担う関係者が、相互の信頼を醸成し、円滑な連携が推進されるよう実施するものである。その際保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互または医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすものとする。」とある。しかし、厚生労働省資料(http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=148716&name=0000014431.pdf)p3では、圏域連携会議「実績なし(秋田県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、三重県、京都府、奈良県、岡山県、徳島県、香川県、愛媛県、大分県、宮崎県、鹿児島県)」とある。2次医療圏をベースに「地域医療・包括ケア計画」を推進するのであれば、圏域連携会議を重視すべきであり、医療法上の規定も有効かもしれない。また、この資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000026440.pdf)p15では、「保険者協議会の意見を聴くこととしてはどうか」、とし、「保険者協議会を法定化し、機能を強化することが前提となる。」が課題・論点になっていることも注目される。保険者協議会は特定健診・保健指導の円滑な実施や医療費適正化計画の推進(http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/02/dl/tp0222-1b.pdf)のために設置された協議会であるが、従来その活動がかなり低調であったように感じる。医療費適正化計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02c.html)は、特定健診・保健指導によるメタボリックシンドロームの減少(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000amvy.html#shingi129200)だけではなく、目標(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info02_70.pdf)には、平均在院日数の短縮が柱の一つになっており、医療計画との一体的推進が不可欠であるが、官邸資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/dai8/kyoukaikenpo2.pdf)p5に出ているように、都道府県の医療計画策定に関する場に参画している全国健康保険協会支部は9支部(秋田、福島、埼玉、大分、富山、岐阜、三重、広島、徳島)に留まっている。保険者協議会の法定化と医療計画策定の場への参画は大きい。その際、ぜひ推進すべきと思うのは、NDBの分析・評価である。厚労省資料;「National Databaseを用いた医療計画策定のための基盤資料の作成に関する研究」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001g288-att/2r9852000001g2d4.pdf)、「NDBを活用した医療計画策定の考え方」(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/shiryou_b-4.pdf)、「NDB配布データの理解と可視化ツールの操作方法」(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/shiryou_b-3.pdf)に出ているように、NDBのレセプトデータを用いて、2次医療圏ごとの傷病構造及び医療提供体制を把握することは容易であり、医療計画にも活用できる。今年2月19日の全国厚生労働関係部局長会議(http://www.mhlw.go.jp/topics/2013/02/tp0215-1.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2013/02/dl/tp0215-01-02d.pdf)のp6「PDCA サイクルに活用できるNDB レセプトデータ等を集計・可視化したデータの作成を行い、都道府県に配付。統一した形で指標を容易に作成できる支援ソフトの開発を行い、都道府県に配付するとともに、都道府県の担当者に対する研修を実施。」とあったが、医療計画の策定・推進にあたって、都道府県は、いつまでも国から与えられた分析結果を利用する時代ではないであろう。厚労省ガイドライン(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/reseputo/dl/guide02_02.pdf)p8~に記されているように、既に都道府県や大学は、健診・レセプトデータ(NDB)提供依頼申出が可能であるが、これまで非常に低調であったように感じる。平成26年度厚生労働省所管概算要求(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokan/)の新規事業(http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokan/dl/02-11.pdf)p47に、「NDB データの活用の促進等【新規】(推進枠) 4.9億円;医療の質の向上や研究基盤の強化を進めるため、NDBデータ(国が保有するレセプト情報、特定健診情報及び特定保健指導情報のデータ)を活用した研究に対する費用の助成や、研究者向けにNDB データの分析施設の整備を行うことなどにより、NDBデータの活用を促進する。」があった。「保険者協議会の法定化と医療計画策定の場への参画」を進めるのであれば、都道府県レベルのNDBの分析・評価を推進すべきであり、都道府県と地元大学の協働が期待される。資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000026440.pdf)p26で示すような、都道府県知事が「法的根拠を持って、医療機関に対して、過剰な医療機能からの転換等の要請又は指示を行うことができるようになる。」ためには、客観的データ分析・評価が不可欠と感じるのである。ところで、資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000026440.pdf)p19では「医療計画の策定サイクルを見直す(両者の計画期間が揃うよう、平成30年度以降、計画期間を6年に見直し、在宅医療など介護保険と関係する部分等は、中間年(3年)で必要な見直しを行う」とある。医療計画と介護保険事業計画との整合を考慮すれば、医療計画の計画期間の6年化は悪くないかもしれない。しかし、前述の医療費適正化計画のほか、健康増進計画、がん対策推進計画など、医療計画と整合を図るべき各種計画との関係も考慮されるべきではないか、と感じる。p20~21のように、医療費適正化計画との整合を強調するのであればなおさらであろう。
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院内感染対策ネットワークと保健所

2013年10月18日 | Weblog
平成24年度診療報酬改定(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021ei1-att/2r98520000021ele.pdf)p149~で、感染防止対策チームを持つ医療機関と300 床未満の医療機関との連携、及び感染防止対策チームを持つ医療機関同士が相互に感染防止対策に関する評価を行った場合や連携して院内感染対策に当たった場合の評価が行われ、感染防止対策加算の算定要件の一つに、「年4回以上、感染防止対策加算を算定する医療機関と合同の感染防止対策に関する取組を話し合うカンファレンスを開催していること。」がある。平成24年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の本報告案(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000025547.html)の「医療安全対策や患者サポート体制等に係る評価についての影響調査報告書(案)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000025689.pdf)p13~に院内感染防止対策の実施状況が出ているのでみておきたい。感染制御チームを設置し院内感染防止対策に取り組んだ結果、様々な効果が上がっていることがわかる。p37では「保健所などとの連携が行いやすくなった」とあるのが目にとまった。院内感染対策にかかる指導は、医療法第25条1項に基づく立入検査(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20130610_02.pdf)でも重点事項であり、一昨年6月には通知「医療機関等における院内感染対策について」(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110620G0010.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)が出ている。通知(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)では、地方自治体の役割として「地方自治体はそれぞれの地域の実状に合わせて、地域における院内感染対策のためのネットワークを整備し、積極的に支援すること」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)とある。厚労省作成図(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_4.pdf)でも保健所が地域におけるネットワークを支援することになっていることは認識したい。
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