保健福祉の現場から

感じるままに

保健所長の十分な医学知識要件廃止

2008年05月29日 | Weblog
昨日の地方分権改革推進委員会(http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai49/49gijishidai.html)で第一次勧告案(http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai49/49shiryou2.pdf)が出ている。注目していた保健所長の医師資格要件見直しについてはp16に「保健所長の資格要件については、公衆衛生行政への精通度合や、健康危機管理への対応能力という観点も踏まえつつ見直し、平成20年度中に結論を得る」とされている。要は先送りである。これについては、これまで何度もブログ(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/874361dd8682b54ab2366fc29fc65aba)(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/78394f32ab34eb0c6c75a3f960cb5251)(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/129aa4b561fb59deb8905e0fa9cff7a2)(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/3fe62164947660f97afd9c89d3dcb87b)(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/e/853c3a65bf81cdef5de09809a31d6848)ったとおりである。過去に保健所長をしていた者として、様々な機会において、保健所長には、十分な医学知識がない者が良いかどうか、問いかけてみたい。しかし、現状では、医師資格だけでは保健所長になれず、公衆衛生行政に精通していなければならないことは理解しておく必要がある。これは、平成16年の「保健所長の職務の在り方に関する検討会」報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0331-2.html)に詳しい。その後の見直し(http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/04/tp0423-2a.html)(http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/04/dl/tp0423-2.pdf)によって、例外的に医師以外が保健所長になる場合であっても十分な医学知識を要件としている。まさに、地方分権改革推進委員会の議論は、保健所長の要件として「十分な医学知識」を外すかどうか、であるが、果たして、この真のねらいは何か、いろいろ想像されるところかもしれない。保健所長の「医師資格要件廃止」ではなく、「十分な医学知識要件廃止」なのである。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

介護保険

2008年05月29日 | Weblog
「社会保障費、攻防火ぶた・財務省、介護保険の改定契機に圧縮提言」(http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080514AT3S1302613052008.html)が出ていた。<以下引用>
<高齢化で急速に膨らむ社会保障費の抑制に向けた政府内の攻防が本格化する。財務省は13日の財政制度等審議会で、2009年度の社会保障制度改革の焦点となる介護保険を巡り、要介護認定者の割合に最大1.6倍の地域差が生じている点などを指摘し、給付抑制策を提言した。雇用保険についても国庫負担の廃止を厚生労働省に求める構えだ。年末の予算編成までの長期戦がスタートを切った。「2200億円の圧縮は揺るぎないものでなければならない」。額賀福志郎財務相は政府が06年に決めた社会保障費の抑制計画の堅持を訴える。11年度までの5年間で国費ベースで1兆1000億円、毎年2200億円ずつ圧縮する計画だ。>
 
「介護保険、「軽度者2割負担」軸に・給付抑制へ検討」(http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080514AT3S1302D13052008.html)。<以下引用>
<財務省は13日、介護保険給付費の抑制に向け、要介護度の軽い人への給付を減らした場合に保険料や国庫負担がどう変わるかなど3種類の試算を財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に示した。給付範囲を最も狭めた場合、給付費は約2兆円、国庫負担が6000億円の削減になる。自己負担を2割に上げるケースでは1人当たり保険料が年1700円減る。財務省は自己負担増の案を軸に厚生労働省と調整するが、厚労省や与党には慎重論も強い。試算は「要介護1」「要介護2」などの軽度者の給付や自己負担割合を見直した場合、国庫負担と地方負担、65歳以上と40―64歳の保険料負担がそれぞれどう変化するか、3つのケース別に算出した。>
 
5月13日の財政制度分科会財政構造改革部会では、社会保障費を毎年2200億円抑制するとの方針を堅持する考えで、介護保険の受給者範囲見直しによる財政影響試算の3案が提示されている。①要介護度が軽度の者(要支援、要介護1,2)を介護保険の対象外とした場合の介護給付費影響額はマイナス約2兆9000億円、②軽度で生活援助のみの者の給付を介護保険の対象外とした場合はマイナス約1100億円、③軽度者の自己負担割合を2割にした場合はマイナス約2300億円(日本医事新報5月17日号)。いよいよ、介護給付抑制の大ナタがふるわれるのであろうか。
ところで、5月20日の参議院厚生労働委員会(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0107/main.html)では、介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案及び附帯決議が全会一致で可決され、大臣から「ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。」と発言されている。附帯決議には、「次期介護報酬改定に当たっては、介護従事者等の処遇の改善に資するための措置を講ずること。なお、地域差の実態を踏まえ、必要な見直しを検討すること。また、サービス提供責任者等の処遇に配慮するとともに、介護福祉士等の専門性を重視し、有資格者の評価の在り方について検討を行うこと。介護保険料の算定については、税制等の制度改正が高齢者世帯へ与える影響を十分踏まえ対応すること。今後の介護保険制度の在り方については、国民の老後生活における介護の不安に応えるセーフティネットとして機能するよう、介護報酬の引上げによる保険料の急激な上昇を防ぐための方策を含め、十分な検討を加えること。」とある。要介護度が軽度の者(要支援、要介護1,2)の負担割合が2割に引き上げられた場合は、利用行動にも影響がでるおそれがあり、結果的に重度の要介護者の増加になるかもしれない。そういえば、国資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0227-8n.pdf)p57にでているように、今後さらに「介護保険施設等の重度者への重点化」が進められ、「施設入所者における要介護4・5の割合が70%以上」が目標とされている。
こんな記事もでている。

「介護保険「家族介護」へ逆戻り」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/16236.html;jsessionid=CE2CFF959FB0E4A8612B59D925B5C41A)。<以下一部引用>
<介護保険の利用者に家族が同居しているという理由で、ホームヘルパーによる「生活援助」を打ち切る事例が各地で相次いでいる。「生活援助」の可否については市区町村の裁量で、極端なケースでは、利用者が独り暮らしにもかかわらず、「家族が通える範囲に住んでいる」として認めない場合もある。介護保険は、介護を社会全体で支える仕組み(介護の社会化)をつくるために導入されたが、多くの関係者が「介護の社会化の理念は捨て去られ、自己責任を土台にした家族介護へ逆戻りしている」と、制度の在り方を批判している。>

介護保険が附帯決議にある「国民の老後生活における介護の不安に応えるセーフティネット」であり続けてほしいところである。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする