6月30日、カリフォルニア夏時間10時55分、みぬは虹の橋へと旅立ちました。
今までみぬを応援してくださった方々、どうもありがとうございました。
朝起きてみると、みぬはまだ苦しそうに時折悲鳴を上げていた。
もう下半身は全く動かない。
苦しむ様子を見て、ついに今日こそ決断すべきだと思い、電話を取った。
「みぬちゃん、長い間よく頑張ったね。これからは、全ての痛みから解放されて、フロちゃん(フローラ)とも一緒になれるよ。」
と、みぬに声をかけ、移動獣医のA先生に電話を掛けた。
ここでA先生が電話に出て、すぐに来てもらうことになれば、上司には「体調が悪いのでお休みします」とでも伝えて、会社を休む予定だったが、
まだ時間が早いのか、A先生は電話に出なかったため、メッセージを残して出社することにした。
10時ごろ、仕事をしていたらA先生から電話がかかってきた。
A先生:10時45分から11時の間に行けますけど、この時間で大丈夫ですか?
まま:はい。大丈夫です。
A先生:過程を説明しますと、まず飼い主の同意を得た後で、薬を使って安楽死を行います。その後、遺体は火葬業者に持っていけば処理してもらえます。お願いすれば遺灰を受け取ることもできますよ。
まま:はい。是非遺灰を受け取りたいです。どこかよい火葬業者をご存知ですか?
A先生:いくつかありますけど、Tさんという方がお勧めですよ。陶磁器を作っている方で、素敵な骨壺も選べますよ。連絡先をお伝えしますね。電話番号は、XXX-XXX-XXXXです。
A先生との会話が終了した後、すぐに紹介していただいたTさんという男性に電話を掛けた。
まま:本日猫を安楽死させる予定で、その際に先生から紹介していただいたのですが…。
Tさん:ご愁傷様です。どちらの病院で安楽死をされるのですか?
まま:家で行います。その後遺体を持っていこうと思うのですが。
Tさん:ご自分で持っていらっしゃるのですね。でしたら、ロス・ガトスの動物病院にいらしてください。午後4時より前ならいつでもいいですよ。
10時45分、帰宅してみると既にA先生が待っていた。
ドアを開けて中に入ると、みぬは既に猫用ベッドの中で意識を失い、全く動かなくなっていた。
まま:もしかしてもう死んでますか?
A先生:診てみましょう。(聴診器を当てて)まだ心音が聞こえますね。ずっと食事を摂っていなかったのですよね?
まま:はい。ここ数日、食欲は廃絶していました。
A先生:食欲が廃絶したということは、最期を迎えるサインなのですよ。そこで安楽死させるかの目安になります。
A先生は、診察票を取り出し、「Euthanasia(安楽死)」にチェックを入れた後、
コメント欄に
「私はA先生が私の猫みぬを人道的に安楽死させることを認めます」
と書き、飼い主の署名を求めてきた。
その後、A先生はバリカンを取り出し、注射部位の毛を剃り始めた。
最初は普段通りにA先生と話していた私も、この段階で耐えられなくなり、涙がボロボロこぼれ出した。
A先生:鎮静剤を打ちます。穏やかに永眠できますよ。
注射が終わった数秒後みぬの体を撫でてみると、まだ呼吸をしているように感じた。
まま:まだ呼吸していますか?
A先生:いえ、もう呼吸も心臓も止まっているはずですよ。確認してみましょうか?(聴診器を当てて)はい。もう心臓も止まっています。
まるで眠っているかのような穏やかな姿だった。
A先生:他の二匹の猫ちゃんたちにも、お兄ちゃんは旅立っていったんだよって、話しかけてあげてくださいね。みぬちゃんの遺体はしばらくここに置いておいてくださってもかまいませんが、この後排泄物等が出てくるかもしれません。
Tさんには連絡されましたか?
まま:はい。連絡いたしました。
A先生:Tさんは、ご夫婦で陶磁器店を経営していらっしゃって、とても素敵な方ですよ。ところで、ままさんはこの後またお仕事に戻られるのですか?
まま:その予定です。
A先生:お休みされた方がよくないですか?
まま:そうですね。上司には体調が悪いとでも伝えておきましょうか。
A先生が去った後、みぬをタオルに包み、更にビニール袋に入れた。
猫用ベッドに敷いていたシーツを見ると、少量の吐血および排尿した跡があった。
みぬの入ったビニール袋を抱えて家を出ると、丁度近所のWさんという男性がマルチーズ犬を一匹連れて通りかかった。
Wさんは、日本に英語講師として長年滞在していたそうで、たまに顔を合わせると会話をすることもある。
実は、Wさんは以前プードルも飼っていたが、その子は最近虹の橋に旅立ってしまったらしい。
まま:実は今猫を安楽死させたところなんです。
Wさん:ああ、ぼくも最近犬安楽死させたばかりだよ。あれは辛いよね。どの子?あのグレーの子?
まま:いえ、茶トラの子です。
そんな話をしつつ、Wさんの目の前で号泣してしまった。
Wさんのマルチーズ犬は、そんな私に親しげにじゃれついてきた。
みぬを助手席に乗せると、Tさんに教えてもらった通り、ロス・ガトスの動物病院へと車を走らせた。
グーグルマップのナビゲーションに従い、車は山の中へ入っていった。
こんなところに動物病院などあるのだろうか?と思っていると、左手に「Veterinary Hospital」の看板が見えてきた。
ロス・ガトスの山の中には、裕福な人たちが大きな家を建てて住んでいるので、そういう人たちがこの動物病院を利用するのだろう。
数分後、Tさんの車が到着した。
Tさんは、白髪頭のとても気さくで感じの良いおじいちゃんだった。
Tさんに、ビニールに入ったみぬの遺体を渡すと、Tさんはフォームを取り出した。
Tさん:このフォームに、飼い主さんのお名前と電話番号と、わんちゃんのお名前を書いてください。
まま:いいえ、わんちゃんじゃなくて、猫です。
Tさん:ああ、猫ちゃんなのね。わんちゃんだと思ってました。
Tさんの気さくな話しぶりに、今まで泣いていたのが嘘のように、涙が吹っ切れた。
Tさん:このカタログから、骨壺を選んでください。
まま:このデザインで、色は緑にしてください。
Tさん:グッドチョイスですね。
まま:受け取るまでにどれくらいかかるのでしょうか?
Tさん:一週間です。こちらからお電話しますよ。私は妻と一緒に陶磁器店を経営していますので、私の店まで受け取りにいらしてください。それでは、気を付けてお帰りください。
再び山道を運転して、帰途に就いた。
あまりにも精神的に辛ければ、今日は上司に連絡して仕事を休ませてもらおうかと思ったが、
時々思い出せば涙が出るものの、恐らく仕事はできるだろうと思い、家で少し休んだ後、仕事に向かった。
夕方、残業をしていながらふと思った。
「あ、そろそろみぬのインスリン注射の時間…、そうか、もう関係ないのか。」
診断から9年8か月続いた糖尿病との闘いは、これで幕を閉じた。
今までみぬを応援してくださった方々、どうもありがとうございました。
朝起きてみると、みぬはまだ苦しそうに時折悲鳴を上げていた。
もう下半身は全く動かない。
苦しむ様子を見て、ついに今日こそ決断すべきだと思い、電話を取った。
「みぬちゃん、長い間よく頑張ったね。これからは、全ての痛みから解放されて、フロちゃん(フローラ)とも一緒になれるよ。」
と、みぬに声をかけ、移動獣医のA先生に電話を掛けた。
ここでA先生が電話に出て、すぐに来てもらうことになれば、上司には「体調が悪いのでお休みします」とでも伝えて、会社を休む予定だったが、
まだ時間が早いのか、A先生は電話に出なかったため、メッセージを残して出社することにした。
10時ごろ、仕事をしていたらA先生から電話がかかってきた。
A先生:10時45分から11時の間に行けますけど、この時間で大丈夫ですか?
まま:はい。大丈夫です。
A先生:過程を説明しますと、まず飼い主の同意を得た後で、薬を使って安楽死を行います。その後、遺体は火葬業者に持っていけば処理してもらえます。お願いすれば遺灰を受け取ることもできますよ。
まま:はい。是非遺灰を受け取りたいです。どこかよい火葬業者をご存知ですか?
A先生:いくつかありますけど、Tさんという方がお勧めですよ。陶磁器を作っている方で、素敵な骨壺も選べますよ。連絡先をお伝えしますね。電話番号は、XXX-XXX-XXXXです。
A先生との会話が終了した後、すぐに紹介していただいたTさんという男性に電話を掛けた。
まま:本日猫を安楽死させる予定で、その際に先生から紹介していただいたのですが…。
Tさん:ご愁傷様です。どちらの病院で安楽死をされるのですか?
まま:家で行います。その後遺体を持っていこうと思うのですが。
Tさん:ご自分で持っていらっしゃるのですね。でしたら、ロス・ガトスの動物病院にいらしてください。午後4時より前ならいつでもいいですよ。
10時45分、帰宅してみると既にA先生が待っていた。
ドアを開けて中に入ると、みぬは既に猫用ベッドの中で意識を失い、全く動かなくなっていた。
まま:もしかしてもう死んでますか?
A先生:診てみましょう。(聴診器を当てて)まだ心音が聞こえますね。ずっと食事を摂っていなかったのですよね?
まま:はい。ここ数日、食欲は廃絶していました。
A先生:食欲が廃絶したということは、最期を迎えるサインなのですよ。そこで安楽死させるかの目安になります。
A先生は、診察票を取り出し、「Euthanasia(安楽死)」にチェックを入れた後、
コメント欄に
「私はA先生が私の猫みぬを人道的に安楽死させることを認めます」
と書き、飼い主の署名を求めてきた。
その後、A先生はバリカンを取り出し、注射部位の毛を剃り始めた。
最初は普段通りにA先生と話していた私も、この段階で耐えられなくなり、涙がボロボロこぼれ出した。
A先生:鎮静剤を打ちます。穏やかに永眠できますよ。
注射が終わった数秒後みぬの体を撫でてみると、まだ呼吸をしているように感じた。
まま:まだ呼吸していますか?
A先生:いえ、もう呼吸も心臓も止まっているはずですよ。確認してみましょうか?(聴診器を当てて)はい。もう心臓も止まっています。
まるで眠っているかのような穏やかな姿だった。
A先生:他の二匹の猫ちゃんたちにも、お兄ちゃんは旅立っていったんだよって、話しかけてあげてくださいね。みぬちゃんの遺体はしばらくここに置いておいてくださってもかまいませんが、この後排泄物等が出てくるかもしれません。
Tさんには連絡されましたか?
まま:はい。連絡いたしました。
A先生:Tさんは、ご夫婦で陶磁器店を経営していらっしゃって、とても素敵な方ですよ。ところで、ままさんはこの後またお仕事に戻られるのですか?
まま:その予定です。
A先生:お休みされた方がよくないですか?
まま:そうですね。上司には体調が悪いとでも伝えておきましょうか。
A先生が去った後、みぬをタオルに包み、更にビニール袋に入れた。
猫用ベッドに敷いていたシーツを見ると、少量の吐血および排尿した跡があった。
みぬの入ったビニール袋を抱えて家を出ると、丁度近所のWさんという男性がマルチーズ犬を一匹連れて通りかかった。
Wさんは、日本に英語講師として長年滞在していたそうで、たまに顔を合わせると会話をすることもある。
実は、Wさんは以前プードルも飼っていたが、その子は最近虹の橋に旅立ってしまったらしい。
まま:実は今猫を安楽死させたところなんです。
Wさん:ああ、ぼくも最近犬安楽死させたばかりだよ。あれは辛いよね。どの子?あのグレーの子?
まま:いえ、茶トラの子です。
そんな話をしつつ、Wさんの目の前で号泣してしまった。
Wさんのマルチーズ犬は、そんな私に親しげにじゃれついてきた。
みぬを助手席に乗せると、Tさんに教えてもらった通り、ロス・ガトスの動物病院へと車を走らせた。
グーグルマップのナビゲーションに従い、車は山の中へ入っていった。
こんなところに動物病院などあるのだろうか?と思っていると、左手に「Veterinary Hospital」の看板が見えてきた。
ロス・ガトスの山の中には、裕福な人たちが大きな家を建てて住んでいるので、そういう人たちがこの動物病院を利用するのだろう。
数分後、Tさんの車が到着した。
Tさんは、白髪頭のとても気さくで感じの良いおじいちゃんだった。
Tさんに、ビニールに入ったみぬの遺体を渡すと、Tさんはフォームを取り出した。
Tさん:このフォームに、飼い主さんのお名前と電話番号と、わんちゃんのお名前を書いてください。
まま:いいえ、わんちゃんじゃなくて、猫です。
Tさん:ああ、猫ちゃんなのね。わんちゃんだと思ってました。
Tさんの気さくな話しぶりに、今まで泣いていたのが嘘のように、涙が吹っ切れた。
Tさん:このカタログから、骨壺を選んでください。
まま:このデザインで、色は緑にしてください。
Tさん:グッドチョイスですね。
まま:受け取るまでにどれくらいかかるのでしょうか?
Tさん:一週間です。こちらからお電話しますよ。私は妻と一緒に陶磁器店を経営していますので、私の店まで受け取りにいらしてください。それでは、気を付けてお帰りください。
再び山道を運転して、帰途に就いた。
あまりにも精神的に辛ければ、今日は上司に連絡して仕事を休ませてもらおうかと思ったが、
時々思い出せば涙が出るものの、恐らく仕事はできるだろうと思い、家で少し休んだ後、仕事に向かった。
夕方、残業をしていながらふと思った。
「あ、そろそろみぬのインスリン注射の時間…、そうか、もう関係ないのか。」
診断から9年8か月続いた糖尿病との闘いは、これで幕を閉じた。