「支那そば?ハムが乗っとる?昔からあった? 知らーん。」(家内)
家内が電話で、義姉と何やら話し込んでいる。
ヤツの口から漏れ出てくるのは、超気になるフレーズばかり。
(支那そばにハム?昔からある?)
「何だ、今の電話。詳しく話して聞かせろ。」
「何かね。大川に・・・」
当然、翌日のお昼は、
その食堂の前にいる。
にしても、この外観。
店名ではなく、声高に《天麩羅・モツ鍋》である。
もうこれだけで、只者でない。
店内に入ると、それは確信に変った。
合格!
大衆食堂の全てが、ここにある。
まさに、大衆食堂の教科書だ。
うどんに焼きそば、チャンポン、丼もの、おっと、オムライスてのもある。
支那そばとは別に、ラーメンの文字も見える。
「この、ラーメンと支那そばって・・・」
「あ、はい。うちは、ラーメンが豚骨で、支那そばが醤油系ですかね。」
いや、大事なことが、まだあるだろうよ。
ハムの件はどうした。俺は知ってるぜ。
しかし、そこは知らんぷりするのが、大人ってもんだ。
「じゃあ、その支那そばにしようかな。」
待つこと暫し。
「支那そば大盛り、お待たせしました。」
目の前に置かれたのが、
これだ。
白っぽいスープに浮かんでいるのは、海苔と、
ハムはハムでも、ベビーハムである!
義姉の情報通りだ。
皆さんは、想像できただろうか。
ベビーハムちゃあ、魚肉だよ。
もう胸が一杯で、泣きそうである。
では、
ズズズー
あ、なるほど。
スープはうどん出汁か。
言い足すと、とてもよく取れてる出汁である。
スープに浮かぶ、小さなツブツブはと言うと、
「これ、胡麻だよね。」
「そうそう。すりゴマですね。」
そしてそして、ひときわ異彩を放つベビーハムである。
この景色を見たくて、ここに来たようなものだ。
とは言えである。
この形態を、『支那そば』と断言する理由は?
最大の個性と言える、ベビーハムと純和風スープに、その由来があるとは思えない。
あるとすれば、中華麺、、、あ、すりゴマか!?
げに支那そばとは奥が深い。
「でも、なんか美味しか、これ。」
「うん、それは激しく同意する。」
ズズ、ズルズルズルー