ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

LOVERS ONLY(R18+)

2009-10-22 16:51:28 | (R18+)大人のターザン

-------以下の文章には、
 同性愛およびわいせつな表現が含まれていますので、
 十分に注意して先にお進みください。-------------




      。。。。。


バリーはバーなどには行きはしなかったが、
部屋で酒と煙草をたしなむことを覚えた。
それと同時にジャニールウの面影を
心の中だけで味わうことに満足出来なくなっていた。
心の中のジャニールウ。
今まで大切に貯めて来たそれらは彼のために何かをすべきだ。
彼はそう感じた。
すると、彼の手は自然と自分の足の間をさまよい始めた。
女に対する想いは心(ハート)を通じて
そこに降りて行くということをバリーは初めて知った。



        PRECIOUS PRECIOUS
       「ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー/山田詠美」より           

        



ついこの間のテレビの中で、
マツコデラックスが
「不謹慎だけど私、
 当選2期目の頃の中川昭一で自慰行為したことがあります。」
って言っていた。
それはもちろん亡くなった中川さんを偲んで
どれだけ自分が彼のファンだったのかということの
マツコデラックスらしい表現からの発言だったんだけれども、
自分はそれを聞いた時にものすごく頷いた、
突然の自慰行為という単語に少し驚きながらも
それでも、
「わかる、わかるよ」と心のそこから同意せずにはいられなかった。
と言うか、
この感情を実感として理解することが出来るということを
自分自身でとても嬉しいと感じた。


自分を慰める行為って書き表すくらいだから
この自慰(G)行為ってやつは、
想いを寄せる誰かを頭に描きながら
その切ない思いを自分自身で慰めるためにするものなのだろうけど、
僕はこの行為においてそんな特定の対象を持つことなんて
ずっと以前から一度も無かったように思う。

よくノンケの友人たちが、
大好きな相手を思い描いて昨晩抜いてしまったよ
なんて話してるのを時おり耳にして知ってはいても、
そのような特定の人物に対して
遠いところから想像して欲情するという感情を
自分の実感として体験することはあまり無かった。

G行為というものの背徳性や非道徳性
それらを大好きな誰かに向けるということを
どうしても自分自身が許さなかったと言えば
なんだかすごく真面目でいい人に見えるのかもしれない。

でも、
今になって思うのは、
怖かったのだ。
誰か特定の相手をその欲望の対象にするという事にして
それに付随する自分の心の動きが恐ろしかったのだ。

誰かを心に想うということはとても面倒なこと、
誰かに恋するということは辛く手に負えないこと、
そう言った甘味な恋愛事ってやつは
最後には必ず自分がひどく傷付いて泣くことになる、
僕はいつしかそんな風に考えるようになっていたんだと思う。

多分そのような理由から
自分の中で特定の相手を想うというような
扇情的で艶かしい感情を
決してその行為に重ねないようにしていたのかもしれない。

たとえば、
相手のことが好きなんだと誰かに話してみたりしてみても、
後になってみれば、
あの想いは間違いだったのだと、
ひとときの心の迷いだったのだと言い訳の出来ること。

たとえば、
その人のことがこんなにも好きなんだと
こんなにも夢中なんだと、
想いを詰めた手紙にしたためてみたとしても、
それはほんの思い違いだったんだよと笑って見せる
そんな隠れ場所をどこかに見付けて置くこと。

(この自分の中にそのような稚拙で滑稽で
 どうしようもない弱さがあるのだということを
 恥かしながらここで報告しておこう)

でもさ、
G行為というこれ以上生々しいものはないというような
その行為において、
特定の誰かを思い描くということは、
自分がその相手を好きなんだということだもん。

僕はそれが怖かったのだ。

その相手に自分が囚われてしまうような気がして、
他の誰かに心を砕くと言うようなことが
これからはもう出来なくなるような気がして
それがどうにも怖かったのだ。

かと言って、
誰かを好きになるというような恋愛経験さえなかったのかと言えば
それはさすがに噓になる。
というよりも、ほんとは自分、恋愛ということにおいては
それはとてもいいものなんだということは
すでに十分にわかっていたのだとは思う。

恋愛において自分の欲望を満たすには
誰かと実際にするセックスが一番充実しているもの。
相手の気配や温度や匂い、
そんなものこそがこの自分を欲情させてくれるもの。
当たり前なんだけども。

だからこそセックスはいいものだよ。

そのいいものと
このG行為はまったく違ったもので
自分の中でこのふたつが
重なることは無いんだと思っていた。

その反面。

実際に誰かが目の前にいて
あったかい身体を重ねてみれば、
それはもう、大嫌いだ!と言うような相手じゃなければ
大体の状況においてはやってしまえるもの、
なんじゃないかなと、思う。

自分において、セックスって実はそんなことでもあったりする。

でも、

このG行為においては、
その相手を自分の想像力でもって
リアルに欲情すると言うレベルまで持って行かないといけない。
それって・・・
なかなかにすごいことかもしれないと思う。

性を覚え始めた中学生や高校生だったら
助平な想像力と言うものは
いつだって頭の中から溢れ出しそうなものだから
頭に思い描くだけで我慢出来なくなるような事なんて
それこそ日常茶飯事なんだろうけど、
年齢を重ねるにしたがって
そんなことも少なくなって行くものだろうしね。

だとすれば、
このG行為において
誰かを想い誰かを願って
この自分自身が欲情するということのできる相手こそが
心底、この自分自身にとって
影響を与える人なのかもしれない。
と言うか、この自分の場合においては
おそらくそうなんだよな。

セックスというものは
機会さえあったなら割と簡単にできるもの。
もしもそうなのだと仮定してみたならば、
それに対してこのG行為ってやつは
逆にもっと複雑な一面を持っている
と言うことなのかも知れない。

かわいいなぁとか、愛しいなぁとか思う相手のことを
この自分の頭の中でもって愛するってことだもんね。

自分の感覚に一瞬で記憶された相手のことを
どれだけ鮮明に蘇らせることが出来るかということの勝負。

そう思うと、すごく不思議なんだよな。

この頭で何を思ってみても
それはいつの間にか特定の誰かの背中の影になって、
この自分の頭の中で何を描いてみても
それは誰かの目をつぶったままの長い睫(まつげ)に変わる。

最近自分、
いつだってそうなんだ。
いつだってこうなんだ。

そろそろ勇気が必要だということなんだろうな。


たぶん。



        。。。。。。 



今まで、大量に積み重ねられたジャニールウの記憶は、
際限なく彼の股間に流れ落ちた。
彼女の黒い瞳のまばたきや耳朶の下に光る産毛など、
どんな些細な事柄であっても、
彼の足の間を熱くするのに充分だった。

彼はそんな時、ジャニールウを心ゆくまで味わった。
心と体でその女の面影を味わい尽くすこと。
それが恋と呼ぶべきものだとバリーはようやく気が付いた。



      "PRECIOUS PRECIOUS"
      SOUL MUSIC LOVERS ONLY
      AMY YAMADA 1987


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