ターザンが教えてくれた

風にかすれる、遠い国の歌

その爪に この体温を乗せてくれ 番外編

2008-05-02 16:59:36 | 物語という昨日



これで本当にこの物語は終わりです。
おまけとして、
架空のインタビューってやつを付録にしました。

どうぞ笑って読んでいただけたらと思います。(笑)

いろいろとワタクシ、
こんな、恥ずかしいったらありゃしねぇ話を
こうやって皆さんに読んでいただくことに対しての
言い訳を考えたのですが、ほらこれでも自分、
なかなか正直になれない性質ですので。。。

ああ言えばよかった、こう言えばよかった。
いつもそんなことで後悔をするのなら、
いっそのこと、架空の人物に登場していただこうかなと。
そして、その彼らに好き放題に発言してもらおうかなと。
そんな事を、ワタクシ考えたわけですよ(笑)

あぁ、とにかく。

最後までお付き合いくださいまして
本当にありがとうございました。
心より感謝申し上げます。

今回のお話はいかがでしたでしょうか。
そのことだけが気掛かりです。
もし少しでも楽しんでいただけたのなら
自分は本当に本当に嬉しいです。


最後まで、お付き合いありがとうございました。


-----------------------------------------b-minor---------





   『その爪に この体温を乗せてくれ』作者インタビュー


記者  こんにちは。
    本日は「その爪に この体温を乗せてくれ」の作者である
    b-minorさんにお話をうかがいたいと思います。
    どうぞよろしくお願いいたします。

作者  こんにちは。どうぞお手柔らかにお願いいたします。

記者  では、まずこのストーリーを読んだみなさんが
    b-minorさんに一番に訊いてみたい事だと思うのですが、
    この物語はフィクションなのですか、それとも
    実際の体験をもとにしてお書きになったのですか。

作者  いきなりですか?(笑)そうですね、
    この物語は約半分ほどが実際の体験から出来上がっていて、
    後の残りの半分は想像上の出来事、つまりフィクションです。

記者  そうですか、半分が本当で半分が創作だということですね。

作者  はい、そうです。ただ、物語の中でどこの部分が本当で
    どの部分が創作かと言うことになると、その扱い次第で
    ずいぶんと感じの違った読み物になるとは思うのです。
    物語そのものなのか、シーンの中なのかという・・・

記者  物語を構成する核となるストーリー自体に創作があるのか、
    それとも、そのストーリーを繋ぐそれぞれの場面の中に
    実際とは違った作られたものが置かれているかということでしょうか。

作者  ええ。そうですそういうことになります。
    実際の体験をただそのまま書いていたのでは、それは物語ではなくて、
    ドキュメンタリーというものになります。ドキュメンタリーと
    いうものは、そのテーマ自体に強い求心力がないと成立しないのです。
    今回のこのストーリーのようなある男同士のカップルの話を、
    実体験そのままに書いてみても
    それは誰も興味を示すことはないものになってしまうと思うのです。

記者  はい、少なくともこの私はその恋人同士の話を
    読んでみたいとは思いますが(笑)
    おっしゃっていることはよくわかります。

作者  この物語のふたりの関係においては、実際にはもっと不純物が
    たくさん含まれていると思うのです。人間関係の話ですので
    ほんとはもっとドロっとしたものがあるものですよね。

記者  ええ。

作者  実は、その部分を僕はなるべく表現したくありません。
    そうすることで、ストーリーの中に風が通るのでは
    ないかと思うのですね。僕は自分でそう説明するんですけれど、
    登場人物の間を風が吹き抜けて行くというようなことが
    この僕が描きたい風景なのかなと思っています。

記者  なんだか、少しだけ寂しいような気になりますね。

作者  ええ、そういう印象をも持たれるかもしれません。
    でも、人はどんなときにも寂しいというものを
    気持ちのどこかに抱えているものじゃないですか。
    だから、人は誰かを求める、だから人は優しくなれると
    そんな風に思いますね。

記者  では、もう一度あえてお訊きしますが、
    その半分だという実際の体験とは、b-minorさんにとって
    忘れがたい大切な思い出なのですか?

作者  本当のことを言うと、
    その質問には「違います」としかお答えすることができません。
    僕は、文章にするということはある意味で
    記憶を葬るということになるんだと思っているんです。
    
記者  記憶を消すということですか。

作者  記憶を消し去るというより、記憶の価値を自分の中で
    変化させるということでしょうか。
    例えば、とても辛く悲しい記憶はまず忘れる努力をしますよね、
    心の中で考え続けても、
    答えは出ないままに悶々としてしまうからです。
    文字にその記憶を固定すると、脳はもうこれ以上憶えていなくても
    いいと思う。脳にもう大丈夫、これ以上考えなくても
    いいと言ってあげる。そして自分の書いた文章を誰かに
    読んでもらうことは大変な覚悟が必要で、
    またそのある種の緊張でもって脳に強い刺激が行くんですよね。
    その出来事はもう自分の手を離れてしまったんだなと。
 
記者  つまりその記憶の責任を皆に分けてしまうと。

作者  はい、皆さんには迷惑でしょうけれど
    そういう事になるのかもしれません。(笑)
    わたしは本来はずっと心にしまって
    同じ事をぐるぐると考えてしまう性質を持っているのですが、
    そこで逃げずに覚悟を決めて文章にしてしまう。
    思い出を自分の中にだけ閉じ込めずに、それを読んだ人の中に
    それぞれ少しずつ預かっていただいて、
    後はもう好き勝手に忘れ去ってもらったらいいのかなと思っています。
    そして、もうこの話は自分の手を離れてしまったと思うのです、
    ですからこの先この僕の中でぐるぐると
    悲しく廻り続けることはありません。
    
記者  忘れるためのストーリーなのですね。

作者  はい。そのような物語があってもいいと思っています。

記者  なるほど。そのことを意識しながらこのストーリーを
    あらためてもう一度読んでみたいと思います。
    ところで、もうひとつ気になることがあるのですが。

作者  はい。

記者  それはこの登場人物であるふたりの男が
    ある歌手を共に贔屓にしているというくだりがありますが、
    その歌手というのは実在の人物なのですか。
    もしよろしければ教えていただく事はできますか。

作者  ええ。実在の人物です。それは「中島みゆき」さんです。
    実はこの物語のタイトルである「その爪に この体温を乗せてくれ」
    という言葉も、中島さんの「ボディ・トーク」という曲の歌詞から
    お借りしています。身体を通して伝わろうとする言葉ではない何か。
    そんなイメージをこの曲からもらって、
    それを出発点にこの物語を書きました。

記者  相手の男が歌を口ずさむ場面がありますが、
    その歌は中島みゆきさんの歌だったのですね。

作者  ええ、そのように思っています。この物語の中でふたりの男は
    心の奥にそれぞれが口に出せない想いを持っています。
    共通の歌手の歌を通して、ふたりの男は相手に何かを伝えようとした、
    そのことを僕はとても貴重な体験として描いたつもりです。

記者  はい、そのことはこのストーリーを読む中で感じる瞬間がありました。
    
作者  そうですか、ありがとうございます。
    文字の中には実際に音楽と言うものを流すことはできませんが、
    濃密な時間の中でふたりの気持ちにはずっとこの歌が流れていた、
    その事を少しでも感じていただけたとしたらたいへん嬉しいです。
    そこで、ひとつお願いしたいことがあるのですが。

記者  はい、何でしょう。

作者  先ほどもう一度この物語を読んでみるとおっしゃいましたけど、
    それは本当ですか。

記者  ええ、この後すぐにでも読ませていただこうと思っています。

作者  では、是非もう一度だけ読んで下さい。お願いします。

記者  はい。

作者  そして、忘れてください。

記者  はい。

作者  こんなふたりはどこにもいなかったんだと忘れてください。

記者  はい、忘れます(笑)。

作者  (笑)ありがとう。
    
記者  最後にもうひとつ、この後の続編の予定はありますか。

作者  いえ、ありません。
    この物語はこれで忘れるためのものなのですから、
    つづきも何も存在することはないのです。

記者  今日はどうもありがとうございました。

作者  こちらこそ、ありがとうございました。



『ボディ・トーク』収録アルバム「I Love You, 答えてくれ」
 YCCW-10037/ヤマハミュージックコミュニケーションズ




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