夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『フローズン・リバー』

2011年01月09日 | 映画(は行)
『フローズン・リバー』(原題:Frozen River)
監督:コートニー・ハント
出演:メリッサ・レオ,ミスティ・アッパム,チャーリー・マクダーモット他

2008年に各地の映画祭でグランプリを受賞した作品でありながら、
地味すぎるゆえ、日本ではDVDスルーになるかと思われましたが、
昨年晴れてミニシアターにて公開。

あまりに暗鬱そうで劇場へは足が向かず
(暗い作品は基本的に好きですが、心身共に元気なときでないと疲れるので)、
クエンティン・タランティーノ絶賛という触れ込みに惹かれてレンタル。
劇場で観なかったことを強く後悔しました。

アメリカ、ニューヨーク州の最北端。
カナダとの国境近くの、先住民モホーク族の居留地と隣り合わせの町。

この町のトレーラーハウスに住む中年の白人女性レイは、
新しいトレーラーハウスの購入資金を車に積んでおいたところ、
ギャンブル好きの夫に車ごと持ち逃げされ、
2人の息子を抱えて途方に暮れる。

レイは、モホーク族が経営する賭博場で夫の車を発見。
しかし、運転していたのはモホーク族の若い女性ライラで、
盗んだのではなく、バス停に放置されていた車を拾っただけだと主張する。
車を返そうとしないライラに銃を向けるレイ。
ライラは仕方なく返却に応じる。

息子たちを独りで育てる覚悟はできていても、生活費が底をつき、
食事としてポップコーンしか与えることができない。
どうにかしてこの生活から抜け出したいと思うレイ。
一方のライラは、夫に先立たれた後、幼い子どもを義母に奪われ、
いつか子どもを引き取ろうと決心していた。

レイの様子から何かを察したのか、
ライラは車を高く買い取ってくれる人物を紹介すると言う。
ライラを車に乗せて向かった先は、実は密入国の斡旋事務所。
カナダ側から来た密入国希望者を車のトランクに隠し、
凍ったセントローレンス川を渡ってアメリカ側に入れるのだ。
違法なことはできないと思いつつ、
1人につき1200ドルという報酬を得るチャンスを逃したくなくて……。

厳しい冬の景色のなか、淡々と物語は進みますが、
魂を揺さぶられる作品です。

カナダからアメリカへの密入国については本作で初めて知りました。
監督が、犯罪の善悪を問う以前に主人公に感情移入させたいと話していたと知り、
その狙いどおりになっていると思いました。
サスペンスとしての醍醐味もたっぷり。

ラスト間際はふたりのやりとりが胸に染みます。
年始早々こんな佳作に逢えたことに感謝。

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『バーレスク』

2011年01月05日 | 映画(は行)
『バーレスク』(原題:Burlesque)
監督:スティーヴン・アンティン
出演:シェール,クリスティーナ・アギレラ,エリック・デイン,
   カム・ジガンデイ,ピーター・ギャラガー,スタンリー・トゥッチ他

昨年の秋頃から本作の予告編を目にするたびに
クリスティーナ・アギレラの声量に圧倒され、
久々にシェールを見たいということもあり、映画館へ。

アイオワの田舎町のウェイトレス、アリは、
スターになることを夢みて単身ロサンゼルスへ。
歌って踊れる自分の才能を活かすべく勤め先を探すが、なかなか見つからない。

そんなとき、“バーレスク”のネオンサインが目に留まる。
バーレスクとは、露出度の高いコスチュームに身を纏い、
歌や踊りを見せる大人のためのショー・クラブ。
ストリップ劇場かと怪しみながら店内に入ったアリは、
その華麗なショーに言葉を失うほど惹きつけられる。

“バーレスク”のオーナーであり、
かつ、数十年にわたってスターであり続ける女性テスに、
アリは自分を使ってほしいと懇願するが、軽くあしらわれる。
そこで、知り合ったばかりのバーテンダー、ジャックの協力を得て、
まずはウェイトレスとして雇ってもらうことに。

ある日、酒に酔って出勤したスター、ニッキの代役がアリに回ってくる。
それを面白く思わないニッキは、ステージの音楽を止めてしまう。
テス以外の出演者は口パクでおこなっていたステージでは
それは致命的かと思われたが、アリがいきなり歌い出して……。

とってもクラシックな作りです。王道の安心感。
若い女性が夢を叶えようと田舎から都会へ。
最初はそう上手くは行かないけれど、
成功から見放された優しい男性に助けられて、才能を開花させ、
経営の危うくなっている店の救世主に。
ところが、彼女を引き抜こうとする金持ちの中年男や意地悪なライバルが登場。
あれやこれやと困難を乗り越えて、最後はこのうえないハッピーエンド。

台詞も普通に交わされるので、ミュージカル色はありません。
なのに、クリスティーナ・アギレラやシェールが突然歌い始めたりして、ちょい苦笑。
けれど、この2人の歌唱力は本当に素晴らしく、聴き惚れてしまいます。
脇にはアラン・カミングやスタンリー・トゥッチなど、
大好きな役者が並んでいて、これも嬉しいところ。

シェールが64歳であることにビックリ。
30年前からあの見た目だったことにもっとビックリ。
久々にCDを出してきて聴きました、『Believe』。

楽しかった~。

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