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『侍タイムスリッパー』

2024年09月24日 | 映画(さ行)
『侍タイムスリッパー』
監督:安田淳一
出演:山口馬木也,冨家ノリマサ,沙倉ゆうの,峰蘭太郎,庄野崎謙,紅萬子,福田善晴,
   井上肇,安藤彰則,田村ツトム,多賀勝一,吹上タツヒロ,佐渡山順久他
 
8月のお盆の頃に池袋のミニシアターたった1館で上映を開始したら、
瞬く間に口コミで「面白い」と評判になり、ひと月経とうとする今、
全国100館以上で上映されることになったという正真正銘の自主製作映画です。
 
ミニシアターどころかシネコンでも上映されるようになったというから凄い。
まさに『カメラを止めるな!』(2018)の勢い再び、という感じだけれど、
なんぼなんでもTOHOシネマズ梅田のシアター3でというのは読み違いじゃないでしょか。
だってここは同劇場で3番目に大きなシアターで、470人以上入るんですから。
もう少し徐々に拡げて行けばよいものを最初からこれでは。昼間の回、2割の入りです。
 
でも、口コミで噂になるだけあって面白いのは事実。
 
幕末の京都。剣豪として名を馳せる会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、
長州藩士・山形彦九郎(庄野崎謙)を討つように命じられ、そのときを迎える。
強者同士が刃を交えたところ、突然落雷に見舞われて意識を失う。
 
目を覚ました新左衛門は、どうもまわりの様子がおかしいことに気づく。
自分と同じ侍の格好をした者もいるが、見たことのない格好をしている者も。
しかも町人たちが同じふるまいを繰り返し、訳がわからない。
 
しばらくして、おなごが絡まれているところ、「心配無用之介」なる侍が助けに来たのを見て、
居ても立ってもいられなくなった新左衛門が「助太刀いたす!」と飛び出すと、
「カット!」の声がかかり、えらく怒られる。そう、そこは現代の時代劇撮影所の中だったのだ。
 
江戸幕府が滅んでから140年が経っていることを町のポスターで知る新左衛門。
しかしその江戸時代から来た本物の侍だと言ったところで誰にも信じてもらえないだろう。
行くあてもなく彷徨ううち、自分が彦九郎とにらみ合った寺の前にたどり着く。
そこで倒れているところを寺の住職夫婦(福田善晴&紅萬子)が見つけて介抱する。
 
寺は撮影のロケに必ず使われているらしく、時代劇の助監督・山本優子(沙倉ゆうの)と住職夫婦は懇意。
撮影所をうろついていた新左衛門の行く先を気にしていた優子は、住職から連絡を受けて駆けつける。
新左衛門を記憶喪失の時代劇役者だと思い込み、住職夫婦は彼の面倒を見ることに。
真実を口に出せない新左衛門もまた、この世で斬られ役として身を立てようと考えて……。
 
安田淳一監督が貯金を使い果たしたことをSNSに投稿していますが、
エンドロールを見れば誰もが手弁当で参加していることがありありとわかる。
キャストと裏方の名前が同じなんだもの。皆さんよう頑張りましたねぇ。
 
時代劇に苦手意識のある人には本作から入ることをお勧めしたいぐらいです。
こんな時代があったこともわかるし、いま時代劇が置かれている状況もわかる。
そして、見ている人は見ていてくれるのだということを信じたくなる。
 
日本一の斬られ役、故・福本清三に今もう一度、これからもずっと敬意を表して。
シネコンの大きなシアターがいっぱいになるまで上映が続きますように。

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