鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『スギハラ・ダラー:手嶋龍一・著』

2010-04-26 21:01:12 | Weblog
よく晴れて爽やかな一日。


土曜日の夜から読み始めた手嶋龍一さんの『スギハラ・ダラー』。
一晩で、読み終えてしまった。
今少し、後悔している。
なんで、この本を今週半ばから始まるゴールデン・ウィーク用にお取りおきしておかなかったのか・・・。

面白い・・・。

この小説は、グローバルな金融・経済小説と取るか、或いは、スパイ小説と取るか・・・それとも、歴史関係なのか・・・多分、いろいろな読み方(愉しみ方)のできる本だと思う。
(甲冑姿の戦国武士に萌~~~の歴女諸姉も、こういうの読んでみたら・・・とお勧めしたい。きっと、もっと知的に見えるよ・・・たぶん・・・)

英国秘密情報部の貴族のお坊ちゃま・スティーブンと米国の先物取引捜査官・マイケルが探り当てた細い情報の糸。

ポーランド系ユダヤ人・アンドレイと日本の伝説の相場師・ライジの奇妙な運命の糸。
細い糸の先に幻のように浮かび上がっては、消える金融市場を巧に動かす美しいユダヤ人女性の見えない影。

第二次世界大戦中、ナチスから逃れるために、リトアニア駐在大使・杉原千畝の発行したユダヤ人救済のビザ。

70年近い過去が、記憶に新しいリーマン・ショック、9・11、ブラックマンディ・・・金融恐慌に複雑に絡みつく。

面白い・・・。

金融経済に疎いワタシが読んでも面白かった。

第二次世界大戦中のユダヤ人の悲劇を扱った作品は、数多い。
小説・映画・ドキュメンタリー・・・
『禁じられた遊び』もそうだろうし、『ソフィーの選択』を思い出させるし、『夜と霧』も印象深いし、『宮廷の道化師たち』という作品もあったな・・・。
以前このブログ内にも書いたけれど、『青年は荒野をめざす』の中にも登場する。

現代アメリカの政治、経済金融、メディアは、ユダヤ人なしでは、考え難いと聞く。
ノーベル賞受賞者も人口の割合からみても、ユダヤ人がダントツだという。

久々に堪能した端正な小説である。