実務家弁護士の法解釈のギモン

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嫡出否認の規定は合憲?(2)

2017-12-13 10:35:21 | 家族法
 最近の報道の事件は、こうして無戸籍となってしまった女性から、嫡出否認の訴えが夫にのみ認められているのは、性別による差別で憲法違反であることを理由に国に損害賠償を請求した事件である。いわゆる国賠訴訟であろう。
 まだ、一審判決が言い渡された段階であるが、神戸地裁は合憲だと判断したとのことである。ただし、判決は法整備の必要性を指摘しているとも報道されている。

 私は、大分前に300日規定の問題についてこのブログで述べたことがあり、そこで、嫡出否認の訴えを夫のみに認めている現行法を憲法違反だと考えていると述べた。今もそれに変わりはない。
 憲法違反と考える理由は,単純である。嫡出否認の権利を夫にのみ認め、妻には認めていないのであるから、権利面で明らかに夫と妻を区別している。あとは、その区別が合理的かどうかであるが、私には合理性は認められないと思えるのである。神戸地裁の判決も、法整備の必要性を指摘しているくらいだとすれば、合理性に疑問を持っていることの現れのはずなのである。だったら、性別を理由とした不合理な差別として、憲法違反にしてもいいはずである。

 嫡出否認の仕組みは、この出生を知ってから1年以内に夫から訴えを提起する方法でしか嫡出否認を認めないことにより、親子関係の早期安定を図ることが立法趣旨のようである。しかし、妻からの嫡出否認をおよそ一切認拒否することによる親子関係の早期安定が、そこまで合理的な立法趣旨かどうか、かなり疑問があるし、世の中の実体は、その結果、無戸籍児が発生してしまい、無戸籍児の身分そのものが長期不安定状態が発生しているのである。これでは、親子関係の早期安定という理想とは全く逆の方向性に向かっているのではないか。

 以上が、夫にしか嫡出否認を認めない現行法が合理的とは思えないと、私が考える理由である。

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