時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

妄想で中国批判をする池上彰

2014-08-18 21:33:34 | マスコミ批判
完全にテレビタックルの後継番組と化したなぁ……

今日のテレビタック、じゃなかった、
池上彰氏のニュース番組を見て呆れてしまった。時事解説ですらない。
チャンネル桜の合法詐欺番組のほうがまだ開き直っていて潔い。


中国に足りないものはモラル(!)なんだそうだ。

経済では世界一になった!だが道徳心が足りん!

……だそうだ。お前は頑固おやじか。


池上氏は中国のモラル低下の具体例としてメラニンを混入した粉ミルク事件や、
2011年に起きた鉄道事故への対応などを列挙していたのだが、
それはないんじゃないのか?


同氏の理屈に従うと、日本についても同じことが言えてしまう。
原発事故の政府や東電の対応などはその典型だ。


原発事故は偶然おきた事故ではなく、その危険性は以前から問われていた。
しかし、一基につき5000万の金が動くプロジェクトであるためか、
無視や隠ぺい、つまり「安全神話」がささやかれていた。
起こるべくして起こったのである。


他にも、粉ミルク事件のように企業が起こした事件すらモラル低下の事例として扱うならば、
日本でも2013年にカネボウ化粧品が美白効果があるとして肌がまだらになる商品を売りつけ、
6808人から症状や不安を訴える申し出があり、うち2250人は、症状が重いのである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502V_V00C14A7CC1000/

カネボウは日本を代表する大企業の一つであり、その社会的責任は重大だ。
しかし、この事件をもって日本に足りないものはモラルと断定できるだろうか?

原子力発電に対する自治体や電力会社、経産省の動きも非道いものであるが、
それを理由に、日本人のモラル低下を主張できるのだろうか?


さらには、10年以上前から続いている歴史の否定および改善、
慰安婦問題へ対する不誠実な対応、靖国神社参拝、在日コリアンへの差別など、
モラルに欠けた行為を日本はいくらでもしているではないか?


しかし、これらをもって日本人のメンタル自体が劣化したなどと言えるのか?
絶対に言えないはずだ。そもそも、「日本人」というのは非常に大きなカテゴリーで、
その中には帰化した人間や、私のように武家の流れを組む人間もいるし、
網野善彦氏が指摘したように、東日本と西日本では文化も歴史も異なるのである。

このように、日本ですら地域ごと、階級ごとに多様な文化と歴史を
それぞれの人間が背負っているのであって、いくつかの大々的な事件を根拠に、
すべての日本人および日本社会のモラルが低下したなどとは主張できない。

ましてや、12億人もいる中国ならなおさらだ。


しかも、その12億はモンゴルや満州、回、ミャオ、漢などの
多民族で構成され、内陸部と沿岸部では歴史も文化も異なる。

「中国人は~だ」という言説は、中国の多様性を無視した極論であり、
 それは日本人に対しても跳ね返ってくる差別的な発言でもある。


さて、池上氏によると、中国人のモラルの低さは歴史的産物であり、
毛沢東の文化大革命によるものなんだそうだ。馬鹿馬鹿しくて声も出ない。


池上氏の解説は、もはや在特会やつくる会、日本維新の会の解説と
同レベルの出鱈目と化している。完全に合法詐欺師となっている。


池上氏によると、文革は毛沢東による恐怖政治だったそうなのだが、
これは非常に文革の複雑性を無視したもので、嘘と言っても良いレベルだ。


実際には、文革は地方や都市の青年革命家を毛沢東が焚きつけたことで
起きたものであり、当時の中国社会に存在した党における幹部の腐敗や
行き過ぎた中央集権のために生じた非民主的な政治制度に反対して起きたものだった。

当時は世界中で学生運動が活発に行われていた時代だが、
この運動を毛沢東は積極的に支持したわけである。

日本の場合も同様であったが、いわゆる内ゲバが発生してくると、
エリート出身の学生と非エリート出身の学生、あるいは労働者や農民との間の
具体的な軋轢が問題化し、それを暴力によって解決する方向へと向かっていく。

内戦にも似た混乱が各地で発生し、きっかけを作った毛沢東は次第に
この混乱を鎮めるために、当初応援していたはずの改革派を弾圧していく。

加えて、四人組と俗に言われる権力者集団が実権を握り、
党内においても、毛沢東、四人組、反文革との間で抗争が続いた。

結果としては反文革が勝利し、周恩来と小平がその後の中国を築いていく。


このようにザッと説明しただけでも、非常に複雑な事件であることがわかるだろう。
実際に、この複雑性と運動の多様性のため、様々な視点から研究が行われている。


それなのに、中国人のモラルが低いのは文革で儒教が否定されたからだ
という妄言を電波に乗せて叫ぶのは、聴衆を惑わす詐欺行為に等しい。

小平以降の中国では文革は間違いだったと認めているのだが、
このような事実も池上氏はもちろん、触れていない。

また、現在の中国の識字率は95%なのだが、
池上氏は文革のせいで字が読めない人間が何人もいると、
まるで現在の中国が教育後進国であるかのようにウソをついている。

確かに12億の5%だから、6千万の人間が読み書きができないわけで、
これはこれで問題である。だが、そもそも識字率と道徳の間に関連性はない

字が読めればモラルが上がるなら、日本人は善人だらけになるだろう。
中国にしたって11憶人の人間は字が読めるのに事件は起こすのである。

儒教やキリスト教が濃い韓国でも凶悪犯罪や腐敗は起きているし、
今の韓国政府のトップがあのパク・チョンヒの娘であることからも、
軍事独裁政権の記憶を美化し、反動化させる動きがあることを匂わせる。


要するに、池上氏の主張は言いがかりも甚だしいものであり、
到底、まっとうなジャーナリストなら言うはずがない内容のものだ。


氏は以前から中立性のある報道を心がけていたはずなのだが、
ここに来てついにメッキがはがれたような気がする。

中国を批判するのは構わない。
だが、それは専門性のあるもので、
ゴシップであってはならないと思う。


そういう意味では丸川哲史氏の『魯迅と毛沢東』は
現在の中国における批判的知識人が両名の著作を読みなおしていることを
紹介しており、また双方を事例に現代中国の思想史を叙述しており面白い。

私が以前、このサイトでも紹介したユー・ビン氏の資本論入門でも、
小平以降の開放路線によって、行き過ぎた資本主義が正当化されたと
いう批判が書かれており、仮にモラルが低下したとしても、
それは文革というよりも、文革以降によるものだという意見もある。

中国に関心がある者は、なるべく多角的な視点からこの国を見るべきだ。
池上氏の解説はウソと煽動に満ちたもので、とても中立な視点のものとは思えない。

池上彰のテレビタックルに改名しろと書いたこともあったが、
ここまで来るとさすがに笑えない。テレビ朝日の責任は重大だ。

靖国について

2014-08-15 23:44:43 | 軍拡
8月15日は「敗戦」の日であるのだが、さすがに「記念日」とするには
「不謹慎」だからか、メディアでは「終戦」記念日と言われている。

よそのサイトで靖国神社の話題になった。
この神社の異様性はいくらでも指摘できるが、一言言うならば、
この神社は大日本帝国の誕生と共に建設された(明治二年)もので、
その目的は官軍のために戦った官軍の兵士を祀るものであった。

裏を返せば、実は日本人の中のごく限られた層(薩長の侍)のためのものであり、
それに属さない東日本(つまり朝廷に侵略された幕府側の地域)の人間は、
原則として勘定に入れられていない。それが日清・日露と大日本帝国による
他国への侵略戦争が進むにつれて次第に「私たちの」靖国神社となったわけだ。


この点について、結構うまい文章を書いたと思うので、以下に転載する。

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靖国神社がテーマになったので、一つ豆知識を紹介すると、
あそこには大村益次郎という人物の銅像が建っています。

この人は、大日本帝国の陸軍を創設した人物で靖国神社の創建に尽力した一人でもあります。


銅像は大村が指揮をとった彰義隊討伐時の姿を描いたもので、
その目線は上野や東北地方を睨んでいると言われています。


彰義隊とは簡単に言うと賊軍の一つで、
新撰組十番隊組長を務めた原田左之助も参加しています。

さて、時代は経って戦時中、国内で鉄が不足し、各々の持つ銅を提供せよとの
いわゆる金属供出という命令が下されました。

その際、今も靖国にある第一鳥居(当時日本一の大きさの鳥居でした)は
「戦力増強のため」撤去されたにも関わらず、大村の銅像はそのままだったのです。


要するに、靖国神社というのはどこまで行っても官軍の視点で建てられたもので、
皇軍の皇軍による皇軍のための施設なんですね

(「靖国」という言葉も「安国」、つまり、戊辰戦争が終わり
  天皇の国になった日本が安らかでありますようにとの意味が含まれている)

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天皇に従う兵士のみを英雄視する宗教施設。それが靖国神社であり、
逆を言えば、天皇に忠誠を誓わない限り、奉じられることはない。


その点を指摘しないから、話がこんがらがっているような気がする。
よく右翼は、「この国のために戦った人々の死を悼み~」と話すが、
正確には、この国のために戦った人々の中で
自分の意に沿う形で死んだ人々を祀っているのであって
(病死や餓死した兵士は除外されている)、選別的なのである


もし仮に、本当に心からあの戦争で亡くなった全ての人の
犠牲を受けとめるのならば、靖国神社という場所はあまりにも不適切だ。

メディアは単純に参拝に賛成か反対かの大衆の反応だけを報じがちであるが、
仮にもメディアならあの神社の歴史的性質を懇切丁寧に解説すべきなのだが……


そういえば、平凡社新書から新刊で靖国批判の書が出るはずなのだが、
なぜか18日にまで延期され、しかも本屋の店頭に並んでいない。

だいたい、この手の本は発売日の数日前には店にあるはずなのだが、
代わりにあるのは新潮社や文春、角川から出た美化本のみ。

間違いなく今年はハズレ年だ。良い本があまり売られていない。
残念至極極まりない限りである。

シベリア抑留しか誇り高き史実()がない日本

2014-08-13 23:35:33 | 日本政治
NHKでシベリア抑留の特集が放送されていた。
テレビ朝日が731部隊の特集番組を流したのとは対照的である。

率直に答えると、日本が被害者でいられる事件というのは、
シベリア抑留しかない。あとは全て加害者として関わっている事件だ。

私は負の歴史も直視できてはじめて日本人は誇りを持てると思っているのだが、
誇り高き日本人どもはそう思っていないらしく、必死に自分たちが善人として
描くことができるストーリーだけ追っている。前述の『永遠の0』もその一つだ。


私はこの手の美化運動こそ、逆に日本人の自信のなさを表しているような気がする。
洗浄された小綺麗な歴史でない限り、受け入れられない。受け入れようとしない。

そういう態度がますます近隣諸国から顰蹙を買っていて、
ますます孤立していく。唯一の味方であるアメリカも見放してしまった。
まさに負のスパイラルに陥っているのではないかと思っている。

今更、消費税増税を反省し始める政府とメディア

2014-08-13 23:26:03 | マスコミ批判
NHKのニュースでGDPが6.8%も増税のせいで落ち込んだことを報じていた。
経済専門家いわく「予想はしていたが、ここまで落ちむとは」だそうだ。


そんなん、ずっと言ってたわ。

「福祉にあてる」とか「国の借金を返すには仕方ない」とか
 メディアにせよ専門家(笑)にせよ今までずっとそう言ってきたじゃないか。

旗色が悪くなったとたんに、手のひらを返すのはご勘弁願いたい。

リーマン・ショックの時も、今まで新自由主義を推進していたくせに
急に手のひらを返して「いや、自分は前から批判してたよ」と言い訳する人間が
ものすごく多かった。彼らの多くはほとぼりが冷めた今、アベノミクス礼賛を
行っているが、これもまた失敗が明確になった時に立場を変えて保身に努めるのだろう。

なお、消費税については山家悠紀夫氏の『消費税増税の大ウソ』がある。
消費税についての問題点をあますところなく解説しているので、
興味がある方は読んでみてほしい。特に消費税が増額した分、
法人税が減らされているという指摘は、実に興味深い。必読の書だ。

古市憲寿は研究者ではない(&日本学術振興会は死んだ)

2014-08-09 23:09:53 | マスコミ批判
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はてなブックマークから来た方へ

まーた古市憲寿が政府に尻尾を振りだした

なぜだか、2年前に書かれた当記事が読まれているようなので、
現時点での古市氏・・・というより彼をタレントにしてしまった主流左翼に対する批判を
上の記事に書きました。合わせてお読み頂ければ幸いです。

なお、私は以前、アベノミクスを批判した記事を書いたところ、
アベノミクス信奉者の連中にはてなブックマークをつけられ、執拗に攻撃されたことがあり、
それ以来、はてなブックマークに関しては、申し訳ありませんが、良いイメージは持っていません。


ちなみに、その攻撃の主体者が本人曰く、改憲に反対する左翼であり、
そういう点からも日本のメディアに露出してくるリベラル知識人たちの劣化を感じてしまう次第です。

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古市憲寿については、以前の記事で、彼の著書をこっぴどく批判したことがある。

簡単に要約すると、彼は世界各国の博物館を巡ってレポートをまとめているのだが、
靖国神社や遊就館の存在を度外視して日本には国営の戦争博物館がないと断言したり、
各国の展示物を通じての隠された歴史観(例えばアメリカのエノラ・ゲイ事件
ではアメリカ社会で今なお原爆肯定論が根深く存在することが露見された)
を指摘・批判するまでもなく、歴史学としても、社会学としても、
とても研究者の論文・報告書とは思えない内容だった。

こんな駄作をあの加藤典洋が推薦しているという時点で、
かつ、なぜか巻末にアイドルの桃色クローバーZとの対談があったりする時点で、
かなりのイロモノと言おうか、戦争を扱った本としては最低の部類だと思ったものだ。



その後は「今年で29歳なのに若者を代表するのは無理あるだろ」といった
さりげないツッコミで無視していたのだが、
偶然読んだ文春スペシャルに彼の対談があって、愕然とした。


ぼくら若者が考える『永遠の0』


・・・ギャグなのか?

(なお、対談相手は32歳と35歳。無理しすぎである)


内容も非道いもので、歴史評論としても文学評論としても
研究者のレベルに達していない。ネットのおしゃべりのようなものだった。


例えば、嫌韓本が売れているがKPOPはもっと売れているから
日本の若者は右傾化していないといった物凄い詭弁をのたまうのである。


マイケル・ジャクソンやマイルス・デイヴィスの人気があるからといって、
アメリカの人種差別が解消されたと言えるのだろうか?

(なお、アメリカの人種差別については、ティム・ワイズが
 オバマがあれだけ人気があった時期にすら、彼の政策を分析すると、
 実は白人に妥協したものであり、また新たな人種差別も散見されると
 彼の自著『オバマを拒絶するアメリカ」で述べている)


ネトウヨのまとめブログはいくらでもあるし、
サブカル・エンタメ系のサイト(芸能・漫画等)にも、
嫌韓・嫌中系の記事を載せてアクセス数を稼いでいる所がある。

しかし、その逆の現象は無い。
天皇制や戦争犯罪、欧米の植民地主義を糾弾するサイトが
保守速報や、はちま寄稿なみに人気があると言う話を聞いたことが無い。


同様に、池上彰や佐藤優の保守本は大ヒットしているが、
その逆が売れているという話も聞いたことが無い。

比較をする際に、同一の種類を対象に設定するのは常識である。
基本的な社会調査の方法を彼は学んでいないのではないだろうか?


簡単に言えば、ラーメンと鉛筆を食べ比べて、前者は後者よりも美味しい、
だから、このラーメンは不味くないと結論を下しているようなもの
なのだが…


『永遠の0』の批判は今後、行うつもりだが、
それに先行して彼を批判したのは、彼の経歴を読むと、
日本の学問の世界が右傾化しつつあることをヒシヒシと感じるためである。


ウィキをみると、彼は育志賞という賞を日本学術振興会から受賞している。
同団体は、若年研究者に特別研究員制度という就労支援を行っており、
これがなければ、日本の若手研究者は、よっぽどコネがあるか、
准教授レベルの実力がない限り、非正規の教員として生きていかざるを得ない。

そう断言できるほど、日本の研究者の働き口は狭いのである。

この手の話になると何度も例にあげてしまうのがアメリカ・インディアン研究者の
鎌田遵氏で、彼はアメリカ学会という日本を代表する由緒ある学会で受賞したり、
大月書店や岩波書店から数冊の本を出版したにも関わらず、長年講師に留まっていた。


つまり、特別研究員制度というのは若手研究者にとっては希望と言えるものであり、
そこには研究員として採用するさいに、公平性というものが要される…はずだ。


ところが、この育志賞、設立の経緯からして
既に政治的なのである。



ホームページから該当部分を引用しよう。

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日本学術振興会から日本学術振興会は、
天皇陛下の御即位20年に当たり
社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる
若手研究者を支援・奨励するための事業の資として、
平成21年に陛下から御下賜金を賜りました

 このような陛下のお気持ちを受けて、本会では、
将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される
優秀な大学院博士課程学生を顕彰することを目的として、
平成22年度に「日本学術振興会 育志賞」を創設しました。

http://www.jsps.go.jp/j-ikushi-prize/
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学問の中立性はどこに行ったのだ?


育志賞の受賞者が保守(それも極右)の雑誌で、
南京事件を否定する作家の書く特攻隊美化小説を絶賛する。

これは果たして偶然なのか?

どうりで、語り口が砂を噛むような要領を得ないものになっていると思った。

彼の元々の研究は、「若者は貧乏でも幸福感を得ている」という
下手をすれば、労働条件の改悪や社会保障少の縮小を是認するような内容に
なっているのだが、なるほど、確かにこういう政府にとって都合のよい主張は
表彰に値するだろう。だが、仮にも日本の若年研究者に仕事口を与える組織が
お上を批判する内容が書けないような賞を設立して良いのだろうか?



他、彼の経歴をみると、

2012年、野田内閣の内閣府国家戦略室「フロンティア分科会」部会委員
2013年、安倍内閣の「経済財政動向等についての集中点検会合」委員
2013年~ 内閣官房行政改革推進本部事務局「国・行政のあり方に関する懇談会」メンバー

となっており、ベッタベタの御用学者の道を進んでいる

野田も相当な右翼だったが、歴史研究者としては絶対に行ってはならないこと、
すなわち、歴史改ざんを行う連中への協力という歴史研究そのものを否定する行為
を行っている人間が、かつこれといって実績を挙げていない人間が、
どうして内閣の有識者会の一員になれよう?

彼の出身は知らないが、保守勢力とのコネクションが
相当強いのだなということが伺える。


竹島は日本領という主張を出鱈目の根拠をもって主張している下條正男氏も、
韓国でヒラの日本語講師をしていたはずなのに、なぜか大学教授にまで出世して
彼の教え子が外務省や防衛省の役人になっているのも、露骨な裏の力を感じるが、
古市氏も学者というよりは、汚職政治家である。


今となっては転向してはいるが、東裕紀氏や宮台真司氏は、
それぞれオタクやブルセラといった当時の社会学では無視されていた存在を
対象にして、画期的な論文を世に送り出したのがきっかけで大ブレイクした。

いわゆる一発屋だったために、その後は評論家(笑)に落ちぶれているのだが、
それでも彼らは自分の実力と発想力を武器に名を挙げたのである。


右翼の代表格である渡辺昇一氏も英語学ではきちんと結果を出しているし、
もっと大物でいえば、第3世界を経済的に侵略したミルトン・フリードマンも
20世紀を代表する経済学者である(それゆえに近代経済学の問題点が見えてくるのだが)


それと比べて、皇族…というより皇族を信奉する右翼勢力に媚を売り、
日本史研究および研究者の実績をないがしろにし、侮辱する行為を行う人間が
堂々と政府の有識者会議に参加し、日本の右傾化に拍車をかける真似をしている。

こういう人物を支援する日本学術振興会の社会的責任は重大だ。

私もこんな賞がいつのまにか出来ていたので驚いたのだが、
天皇陛下がお喜ばれになる学問を研究するのが学者だというのならば、
そんなのは糞くらえである。学問は権力に抗う最後の砦だ。

その砦の一つがいつのまにか知らないうちに占領されていた。
このことに私は底知れぬショックを覚えてならない。


・追記
中立性が試されるはずの学会で政治やコネが影響を及ぼしているのなら、
真っ当な研究者が働く機会がますます減るではないか。

これでは就労支援どころか就労への妨害を務めている。
どうしてこの国は君が代といい、真面目な教員が迫害される制度になっているのだ?


・追追記

こんな研究者の風上にも置けない人間に仕事を与えている国や
出版社に憤慨することこの上なしだが、よく調べてみれば、この男、
あの上野千鶴子と対談もしているのである。

上野は、もともとはマルクス主義社会学者であり、
女性学やフェミニズム研究に大きく貢献した人間ではあるが、
その後、慰安婦の国家責任を放棄させるアジア女性基金の中心的メンバーとなり、
自らがそれまで築き上げた研究を全否定するような真似をしたことを覚えている。


要するに、金で解決するからこれ以上の日本政府への追求はやめましょうという
恐ろしく身勝手かつ政治的な運動で、慰安婦研究者はこの運動を否定しているのだが、
まさかその後の上野がこのようなコネだけのペテン師と仲良くお話していたとは…


彼女がすべきなのは、彼(というより彼を持ち上げる保守勢力)との対決だったはず。

先述の加藤といい、上野といい、世間的には左翼とみなされていたであろう面々だ。
戦後左翼の失敗を考えるに当たって、やはり左翼の隠れた転向を指摘せざるを得ない。


・追追追記

ところで、AKBに熱を上げている小林よしのりといい、
よりによって自民党の先輩党員が来る場所で、アニメのコスプレパーティを
開いて顰蹙を買った三橋貴明といい、桃色クローバーZと対談する古市といい、
この手の輩はなぜヲタク気質なんだ?さっぱり理解できない。


なお、古市についての批判は、右のサイトでも行われている。

古市憲寿の「おじさん」批判は的外れ
http://blogs.yahoo.co.jp/halfjapankorea/33934263.html


独断と偏見だが、何だかんだで在日・ハーフコリアンのブログのほうが
そのへんのサイトよりも意義深いものが多く見受けられる。


古くは岩波書店と対決し、佐藤優氏を批判した金光翔氏とか。
http://watashinim.exblog.jp/

冷静に考えれば、日本社会のためを思えば、金氏のような
批判力のある人物こそメディアは取り上げるべきだろう。

どうも、古市が目立ったのは、宮台と同じく、メディアの貢献も
あるようで、それは今のメディアがどれだけクソかという試験紙でもある。
(もっとも内容は、宮台のほうが遥かに優れているのだが・・・)


・追追追追記

とはいえ、さすがに岩波や大月、青木書店等の出版社は
今のところ、古市に執筆を依頼していないようで、その点に関しては安心している。


結局、古市がこれから辿る道は宮台や東と同じ、ある一時期に
テレビや保守系雑誌にもてはやされる一過性のピン芸人的評論家ではなかろうか?


彼は西尾幹二や渡辺昇一のようなリーダーシップを取るタイプではないし、
冷静に考えれば、彼の売りは「若者」であること以外にない。

さすがに40を超えてもなお、若者を自称するわけにはいかないだろう。
実は、彼と同じような若者論でウケを誘った人間は左翼にもいる。
赤木智弘というのだが、彼も今はもう、時の人になっている。

なんだかんだで保守系論者も競争が激しいようだから、
彼も今のうちに政府と親密になるでもしない限りは、
過去の人として飼い主から捨てられるような気がする。
(意外とそういう人間は多い。右にも左にも)


第一、若者論にしたって、同世代に後藤和智という本格的な研究者がいるわけだから、
このジャンルで彼が生き残る道はないのではないだろうか?

というか、実際に古市が既に歴史改ざんに関与し始めているあたりで、
彼もまた自身の研究が既に終わっていることを自覚しているのではなかろうか?


この手の特定のグループを代表して読者やメディアの受けを狙う人物として、
姜尚中が想起されるが、彼は有名になる前から哲学者として、
実績を挙げているので、ブームが過ぎた今も健在である。

・・・が、古市の若者ビジネスは実績を挙げる前に始めているし、
その実績も同世代に強力な上位互換が存在するわけで・・・
政府や右翼の人間といっそうのコネクションをつけるよう、
日々両手が摩擦熱で炎がでるほどすりまくらない限り、
ある一定の段階で路頭に迷ってしまうのでは…?

(まぁ、この手の卑怯者はずるがしこく生き延びるんだけどね)

イスラエルの空爆行為をなぜか非難する国連

2014-08-05 22:55:10 | リビア・ウクライナ・南米・中東
今月の1日には、新たにイスラエルに対空ミサイル支援のための資金援助を
申し出たアメリカ。ガザ地区での人権侵害調査委員会構成に関する決議にて
棄権したヨーロッパや日本。さすがにやりすぎたと思ったのか態度を変え始めている。



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イスラエル軍が3日、パレスチナ自治区ガザ南部のラファにある
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校を爆撃し、
少なくとも10人を死亡させたことについて、国連をはじめ
イスラエル寄りともみられる米欧諸国からも異例の強い非難の声があがっています。


国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は3日、
イスラエル軍による爆撃を「道徳上の乱暴であり犯罪行為だ」と強く非難しました。
報道官を通じて発表した声明で述べました。


7月末の二度の国連運営学校砲撃に続くだけに、潘氏は
「またもや国際人道法の重大な違反行為が起きた」と指摘。
民間人が身を寄せている国連施設の場所についてイスラエル軍は何度も連絡を受けていたとし、
「この攻撃に関して、他の国際法違反とともに、直ちに調査し、
実行した者に責任を取らせなければならない」と強調しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-05/2014080507_01_1.html

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アメリカもここ最近のオバマ政権のやり方に批判がされたようで、
付近で武装勢力が活動している疑いがあっても、
 多数の罪のない民間人の生命を危険にさらす攻撃は正当化されない

 と指摘したようだ。


これらはウクライナの惨状を知る者にとっては噴飯ものの言動である。

今日のロシア・トゥデイのニュースでは、
ルガンスクにおける25万の他の地域へ避難できない人間が、
水や電気などのインフラがストップされている状態に陥っていることが判明した。


前々からキエフ軍が反対者たちに対して地域規模の水責めと兵糧責めを
していたことはわかっているが、改めて中央政府の残虐性に気づかされる。


さて、イスラエルのガザ地域への空爆が道徳上の乱暴行為であるならば、
キエフのドネツク・ルガンスク地域への空爆もまた道徳上の乱暴行為であるはずだ。

しかるに、なぜ前者は責められて後者は賛美されるのかが全く理解できない。

おまけに後者は10人などという規模ではなく、数千・数万の犠牲者が生まれている。
ロシアを悪漢に仕立て上げるなら何をやっても許されるのだろうか?

どうも納得がいかない。


ちなみに、最近、またキエフ軍から軍を裏切って自警団に参加した集団が
あったそうだ。これが主体と客体が逆だったならば、自由が奪われたロシアから
亡命した勇気ある人々として讃えられるのであろうが、現実は…ご覧のとおりだ。

パレスチナ虐殺を支援する朝日新聞

2014-08-05 00:30:25 | リビア・ウクライナ・南米・中東
未だにガザ地区への砲撃を止めないイスラエル。

この件について、朝日新聞と朝鮮新報の社説を比較すると面白い発見がある。
まずは、朝鮮新報から。


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パレスチナに対するイスラエル軍の無差別攻撃が続いている。
犠牲者の数は3日の時点で1700人を超えた。国連の発表によると、
パレスチナ側の犠牲者の8割以上が民間人で、そのうち約300人が子どもだ。
学校を含む100カ所以上の国連施設がイスラエル軍の攻撃を受けた。



英国のある議員がネット上で、「もし自分がガザで暮らしていたら、
(イスラエルに)ロケット弾を打ち込んだだろうか?-多分そうする」と発言。
これに批判が集まり、懲戒騒動にまで発展した。
数十人、数百人の命を一瞬にして奪うイスラエルの砲撃に対する非難よりも手厳しい。



▼「パレスチナの女性や子どもは、爆弾ベルトを身につけており、
イスラエルのカフェに入って自爆する」-米英の市民の大半がそう信じていると、
元米財務次官補で著名なコラムニストのポール・ロバーツ氏は指摘する。

パレスチナがイスラエルにより、巨大な壁で隔離され、
生活空間を日々侵食されている現実は無視されている。



米議会は1日、イスラエルの対空ミサイル支援のために
 2億2500万ドルもの資金を新たに提供する
ことを承認。


 米国防総省はイスラエルに戦車用の砲弾などを再補給することに合意した。
 米国はイスラエルに毎年、約30億ドルを支援しているが、それとは別予算だ。
 イスラエル政府は7月30日に攻撃拡大を閣議決定していた。
 大量虐殺を幇助する米国の大罪をあらためて非難する。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/sinbo-j_140804/

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次に朝日新聞の社説(2014年7月25日朝刊)を読む。




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ガザ紛争―流血拡大を防ぐ収拾を

▼どの国や地域であれ、人間の安全と財産、権利を守るのが政治の役割のはずだ。
 中東のイスラエルとパレスチナとの間で今起きているのは、その逆ではないか。
 政治の思惑で紛争が起こされる。市民が逃げ惑い、次々に命を落とす。


▼パレスチナ自治区ガザの紛争は悪化の一途をたどり、23日までの死者は700人を超えた。
 双方の指導者の責任は重い。


▼長く複雑な歴史をくぐってきた紛争である。根本的な解決は容易ではない。
 だとしても、いま眼前で続く流血を止めるのが何よりも最優先である。

 力の差を考えれば、紛争を収束させる主導権はイスラエルにある。
 ネタニヤフ政権は無差別の攻撃をやめるべきだ。

 一方のイスラム組織ハマスもこれ以上ガザの市民を危険にさらす行為を続けてはならない。
 ロケット攻撃などを控え、紛争の収拾を急がねばならない。

 
▼イスラエルが先週から踏み切った地上戦は、流血の規模を一気に拡大した。
 国内の強硬派をなだめる意図だったとすれば、なおさら無謀というほかない。

 ネタニヤフ政権はしきりに自衛権を主張しているが、
 いまの侵攻は明らかに自衛の範囲を超えている。
 犠牲者の大半がパレスチナ人で、23日までに700人余り。
 そのうち200人以上は子どもや女性だ。

 地上侵攻でイスラエル側も兵士を中心に被害が急増し、死者は30人余りに達した。
 イスラエル側もこれ以上、痛ましい犠牲を重ねるのは理不尽だ。


▼ガザの人口は約170万人。その地域全体がイスラエルの強いる検問と
 人工壁などで封鎖されており、「天井のない監獄」とも呼ばれる。

 抜本的にはその窮状の改善が必要だが、
 当面の域内ではハマスの側に重い統治責任がある。
 市民の犠牲をいとわず戦い続けて内外の同情を集めようとするならば、大きな間違いだ。


 侵攻前の先週、エジプトが停戦案を示し、
 今週からは米国のケリー国務長官も中東入りして
 仲介にあたっている。


 ハマスに影響力のあるペルシャ湾岸の国カタールやトルコも巻き込んで、
 一刻も早く安定化を図る必要がある。

 このまま悲惨な状態が続けば、もっと過激な勢力がガザに台頭するおそれもある。
 イスラエル側で誘拐やテロが頻発する事態も考えられる。


 長期的にはイスラエルとパレスチナの共存を探る和平交渉を復活させるべきだろう。
 そのためにもまず、今は双方が武器を置いて頭を冷やすときだ。

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朝鮮新報がイスラエルの蛮行を痛烈に批判し、その協力国の責任まで追及しているのに対し、
朝日新聞ではケンカ両成敗の論調を取っている・・・ように一見、みえるがそれは違う。


朝日の本音は末文にある。

つまり、
「このまま悲惨な状態が続けば、もっと過激な勢力がガザに台頭するおそれもある。
 イスラエル側で誘拐やテロが頻発する事態も考えられる。」

だから、
「イスラエルとパレスチナの共存を探る和平交渉を復活させるべきだ」

と主張しているのである。これは明らかにイスラエルの安全を考慮した見解だ


そもそも、虐殺を終結する主導権はイスラエルにあると自ら判断しているのだから、
理屈の上では、イスラエルにより責任を強く追及すべきではないか?

ところが、朝日は「当面の域内ではハマスの側に重い統治責任がある」として
パレスチナ側により問題があるかのような論調を取っている。これはおかしい。


ガザ地区を閉鎖したのも、同区域を砲撃しているのもイスラエルであり、
なぜその責任がハマスになすりつけられるのか?全くもって理解できない。


どうも朝日新聞は、中立性を装うためにわざわざパレスチナ側も批判したようだが、
被害者側の責任を強調することで、加害者側の責任を緩和させることは
侵略行為の弁護や支持をしていることと同然である



加えて、イスラエルを公然と軍事支援しているアメリカを
仲介者であるかのように演出する表現も現状認識を妨げるものだ。


朝日は本当に虐殺に心を痛ませているのだろうか?
もし傷んでいるなら、なぜ購読者をだます様な文章を載せるのか?
(しかも、記事ではなく社説にである)

試しに、朝鮮新報の次の記事を読んでみるといい。


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パレスチナ人に対するジェノサイド
●イスラエルのガザ攻撃
 イスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイド(大量虐殺)がまた始まった。


●「ガザ紛争」の実態

7月8日から始まったイスラエル軍のパレスチナ自治区・ガザ地区の
パレスチナ人に対する無差別攻撃によりすでに1千人以上の死者が出た。

その大多数が民間人、とりわけ子ども、女性、老人である。
住宅、病院など民間施設が主な攻撃の的となっている。



2007年以来、ガザに住むパレスチナ人の現状は
「封鎖下で緩慢に殺されるか、軍事攻撃で一瞬で殺されるか」というところまで追い込まれている。




イスラエルは、今回のガザ攻撃がイスラエル人少年3人の殺害(6月12日)が発端で、
これはイスラエルのハマスに対する報復であり「自衛戦争」だと言い張っているが、
現実はまったく異なる。


この事件はヨルダン川西岸で起きた事件であり、
ガザとは関係なくハマスによる犯行だという証拠はない。



これを口実にイスラエルは、西岸で400人以上を逮捕、2200軒もの家を家宅捜査し
その過程で10人のパレスチナ人を殺すと同時に、西岸と東エルサレムに対する残忍な弾圧を加えた。
1千人以上の人民虐殺は2009年1月にも起きているが、イスラエルはガザに対する
こうしたジェノサイドを(定期的に伸びた)「芝を刈る」と呼んでいる。


●問題の本質

だが問題の根源は、イスラエル建国の歴史そのものにあり、
ガザに関して言うならば、国際法上違法な47年間の占領と8年間の封鎖にある。



今回のイスラエルのパレスチナ人大量虐殺の直接の動機は、
4月27日、ガザを「実行支配」しておりパレスチナ住民の大きな支持を受けているハマスと、
米国に支えられながら西岸を「統治」しているPLOの最大組織ファタハの
歴史的な和解、暫定政府樹立と1年以内の総選挙決定である。


抑圧された民族が自主権を回復するべく分裂より
大団結を選択したことをイスラエルが許さず、つぶしにかかったのだ。



ハマスが停戦の絶対的な条件として掲げているのは、
イスラエル軍の撤退、囚人釈放、封鎖解除
ハマスとファタハ和解合意へのイスラエルの介入禁止
経済開発の改善など至極当然な権利の保障である。


西側メディアは、「ガザ紛争」はロケット攻撃をやめない
「イスラム原理主義・テロリスト」のハマス側にあるかのように喧伝する一方、
朝鮮がハマスに武器を提供しているなどとデマを故意に流布している。

情報源はテロ国家・イスラエルと、この国に毎年30億㌦の無償援助
(その金で殺戮兵器を米国から大量購入している)を続けて支えている
世界最大のテロ国家・米国だ。


国連人権理事会は、ガザ地区での人権侵害調査委員会構成を
柱とする決議案を可決したが、結果は賛成29、反対1、棄権17だった。

反対は米国のみというのは当然だが、
EUの主要国と日本と南朝鮮が棄権した


この一つの事実にも国際政治の現実が如実に現れている。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/sinbo-j_140804/

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おそらく、パレスチナ問題の解説としてこれより優れた文章はないと思われる。

今の朝日新聞にここまで真っ向からイスラエルや
その支援国の卑劣な印象工作と侵略行為を否定することができるのか?




パレスチナ問題はウクライナ問題と同一の問題であり、
それは欧米およびその属国による東側への侵略問題なのである。


その本質的部分を朝日に限らず、日本の主要メディアは指摘することが出来ない。
なぜならば、それは必然的に自国の外交政策を否定するものだからだ。


よその国に対して、安全な所から一般論の範疇での
形ばかりの反対を叫ぶふりをして、購読者の同情を誘う。


それが結果的に読者の国際認識を歪ませることになっても知らぬ存ぜぬだ。


このように日本を代表する新聞社が醜態をさらす一方で、
朝鮮新報のような弱小メディア、それも悪の巣窟であるはずの
総連の機関紙のほうがジャーナリズムを貫く記事を掲載している。


誰かにこの奇妙な現実の説明を加えてほしいものである。

中公新書からの新刊 横手慎二『スターリン』

2014-08-03 21:53:55 | 反共左翼
シリアやウクライナなど、国際紛争においてロシアが米英の敵対者として
君臨している今、ロシア理解のために満を持して登場したような気がする。


その辺のソ連史の本よりもよっぽど読む価値がある。悲しいことに。

本書の特徴は「スターリンの見直し」を念頭にして書かれたことである。


日本のスターリン評価は彼を悪魔化して説明するものしかなく、
そのような歴史解釈は日系アメリカ人を収容所に連行したり、
原爆を落としたルーズベルトやトルーマン、そしてナチスをソ連の当て馬に
利用しようとしたチャーチルなどの悪漢を相対的に天使化することに他ならない。


…などと書くと「いや、彼らも良いことをしたよ?」と反論する人がいるだろう。
まさにそこが問題で、実はロシアでもスターリンの評価は分かれていて、
政府としてはスターリンを批判しているのだが、他方でソ連の近代化や
第二次世界大戦の勝利に大きく寄与した人物として評価する者もいる。

実は今、空爆を受けているウクライナ南東部では
スターリンは民主主義の伝道者としてヒーローになっている。

では彼らはスターリン主義者と俗に呼ばれる乱暴者かといえば、
全く逆で、代表制や自治権の確保、そしてネオナチへの抗議をしているのである。


要するに同地では、スターリンは、地方の意向を無視して
国内を植民地化しようとする強圧政権に抗議するための、
反ナチスと民主主義の象徴として機能されているわけだ。



これは私にとっても、かなり意外なことだったが、
スターリン時代のソ連というのを単純に地獄絵図として
描く歴史叙述は「欧米や国内の反対者(現在の東欧・ロシアの権力者)
中心のものではないか」という疑問に応えるものだった。

この本の筆者もまた、スターリン評価は見直しの余地があることを
指摘し、ソ連時代をもう一度読み直している。


ただし、構想の割には、どちらかといえば、先行研究を
なぞっただけのような気もして、そこが残念と言えば残念だが、
発想としては大変意欲的な作品で、著者の今後の研究の発展に期待したい。



私は「独裁というのは民主的に行われる」という考えを、
ここしばらくのウクライナに関連する欧米のネオナチ政権へ対する民主的な支援と、
安倍政権の国民の排外主義を煽った上での軍拡推進から経験的に感じており、
従来の「スターリンは自由がない地獄の世界を築き上げた」という説明には
激しい疑問を抱いている。


つまり、スターリン時代のソ連は、「そこそこ」民衆が主体的に
活躍できる場が約束されており、「そこそこ」自由があったのではないかと。


現に、ナチス研究では国民が積極的にナチスに協力していたこと、
日本史研究でも国民が積極的に天皇と軍隊を支持し肯定していたという解釈が
すでにあり、これはスターリン政権においても通じるように思われる。

(ホロコーストや三光作戦、ユダヤ人や朝鮮人への人種差別を
 ほかならぬ民衆が積極的に関与し協力していたという事実。
 これはスターリン時代の粛清にも通じるのではないか?)


戦前の日本がジョージ・オーウェルが描くような自由が全くない
灰色の社会だったかと言えば、そんなことはないのは自明である。

確かにその社会では共産党や社会主義者のような国内の反対者を
拷問にかけたり、あるいは無実の罪を着せて処刑したりしているが、
それでもほとんどの日本人には「ある程度の」自由があったのである。


問題の本質は、その「ある程度」や「そこそこの」自由を与えて
飼殺しにし、それに異を唱える者を物理的あるいは社会的に抹殺する
システムであり、実はこのシステムは現在の欧米や日本などの
民主主義国家で当然であるかのように存在するということだ。



現在はより巧妙で、戦争に反対する自由はあっても、
戦争を終わらせる権利を民衆は持っていない。


国内の人種差別に反対する自由はあっても、
国内の人種差別を戒める法律を民衆は作れない。


口をパクパク動かすだけの自由を与えられ、
仮に国家や社会に逆らう行為を行えば(例えば君が代を歌わなければ)
国民失格とみなされ、実際に排除されている。


こういう社会をスターリン時代の社会とは別物だと印象付けるような
愚かな行為を研究者も喜々として加担していたような疑念が拭えない。

というのも、ソ連研究は無色透明の歴史家というよりは、
反共主義的な政治学者や国内外の共産党勢力を攻撃することで
自らの正当性を主張する新旧左翼によって、行われてきた経緯があるからだ。
国内や国外の政治情勢に左右されやすい分野なのである。

そうであるからこそ、今こそ改めて、多角的にソ連を読み直すことが必要だ。
今回取り上げた中公新書の横手慎二氏の著作はその一助になるはずである。

最後に、同書の紹介文を抜粋して筆を置こうと思う。


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「非道の独裁者」――日本人の多くが抱くスターリンのイメージだろう。
一九二〇年代末にソ連の指導的地位を固めて以降、
農業集団化や大粛清により大量の死者を出し、晩年は猜疑心から側近を次々逮捕させた。
だが、それでも彼を評価するロシア人が今なお多いのはなぜか。

ソ連崩壊後の新史料をもとに、グルジアに生まれ、
革命家として頭角を現し、最高指導者としてヒトラーやアメリカと渡りあった生涯をたどる。


http://www.chuko.co.jp/shinsho/2014/07/102274.html
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・追記

ちなみに、ジョージ・オーウェルの作品は冷戦が開始された直後に評価され始め、
彼自身もイギリスのインドやシンガポール、南アフリカなどの植民地国に対する
横暴な政策よりも、よその国(ソ連)の批判に情熱を燃やし続けた人間だった。

よくある転向者の一人で、日本で言うならば有田芳生氏のような
共産党や北朝鮮を悪魔化する言説を流布して排外主義を助長させておきながら、
いざ国内でヘイト・スピーチが活発化すると反対姿勢を取る無責任な人間だった。

なにせ、結核に苦しみながらも書き続けたのは自国の政治的経済的侵略の批判や
反省ではなく、「イギリスが共産主義国になるとこんな地獄になりますよ」とでも
言いたげなソ連批判の小説(『1984年』)だったのである。

現代で例えるならば、アメリカの小説家が自分は左翼だと言いながら、
アフガン派兵への批判を全く行わずにアサド政権を非難しているようなものである。

つまり、やってることは少しも偉くない。
そのへんの平凡な自称左翼運動家と大差ないのである。


もし彼が、幸徳秋水や小林多喜二のように自国の帝国主義政策を
激烈に批判し、そのために国家権力によって処刑されたり惨殺されたりしたのであれば、
私も彼を勇気ある人間と称賛したいのだが、悲しいことにそんな事実は存在しない。


彼自身がこうまで高い評価を受け続けているのは、冷戦が開始され、
敵国を悪魔化するためのプロパガンダが求められたという時代の流れに救われた面が大きい。


実際、『動物農場』や『1984年』は政治色の強い作品で、
これが仮にソ連や中国の人間がアメリカやイギリスを批判するために
書かれたものであったならば、誰も見向きもしないまま終わったであろう。


今でも彼を異常に評価する人間がいるのだが、
私は彼がソ連を悪魔化することによって相対的に自国を弁護するという
姑息な行為がどうも目について、とてもじゃないが礼賛する気になれない。


この種の一見、反対者のようでいて、実は権力者が飼いならせるレベルの
抗議しか行わず、結果的に体制に支持する人間が跋扈している現在、
オーウェルは模倣すべきテーゼではなく、克服すべきアンチ・テーゼだ。


スターリンの評価も彼の影響が大きく、このスターリンに全責任を転嫁し、
民衆の協力を軽視する個人主義的歴史観の開祖の一人であると言ってもよい。


・追追記

ちなみに『動物農場』では大衆は支配者である豚の言葉に唯々諾々と従う
愚昧でありながらも人間味のある集団として描かれている。

気立ては良いのだが頭が悪い集団として被搾取者を描く手法は、
黒人やアフリカの先住民族を心は豊かだが知能は劣っている人間として描き、
保護や憐憫の対象としてしか見ようとしない欧米の知識人がえてして陥った
家父長主義(劣った人間を導いてやるという独善的行為)でよく見られるものである。


その代表的な作品として『アンクル・トムの小屋』が挙げられるだろう。

この作品の主要人物であるアンクル・トムは敬虔なクリスチャンではあるが、
白人に対して全く抵抗しようとしない非常に白人にとって都合の良い黒人であり、
出版された当初こそ奴隷解放の小説として注目されていたが、
今ではアンクル・トムという言葉は白人に迎合する黒人の蔑称になっている。


この小説を読む人間も稀有であろう。こういう一見、良心的な小説の根底にある
独善的・植民地主義的・人種主義的思想を批判的に解釈する運動が、
なぜかオーウェル研究になると全くと言って良いほどない。


これもまた、現代世界は未だに冷戦が継続中であり、中東や中央アジア、
アフリカ、東北アジア、南米、ロシアなどの非欧米主義的政治を行っている
地域をイデオロギーの面から攻撃するための道具が必要とされているためであろう。

集団的自衛権に反対する気がない岩波書店

2014-08-03 19:32:19 | マスコミ批判
今月は岩波新書から『集団的自衛権と安全保障』、
そして単行本から『集団的自衛権の何が問題か』が出版された。
いずれも、これから集団的自衛権について勉強する上で参考になるものだと思う。


しかし、こういう本を見ても、残念ながら私が思うのは、
岩波はいつも問題が起きてから行動する
ということである。

集団的自衛権の見直しは2013年の2月にはすでに開始されており、
共産党や一部の市民団体は随分と前から反対し続けていたわけだ。

その間、岩波は確かにブックレット(『ハンドブック 集団的自衛権』)を
出版したり、同社の月刊誌『世界』でもこの問題を問い続けていた。


であるからして、まったく無視していたわけではなかったのだが、
それでも200頁ほどのまとまった形で反対姿勢を明確に表す本は発刊してこなかった。

それがいざ、集団的自衛権の容認が閣議で決定された直後に
「待ってました」とばかりに二冊も出版されるのだから、
これでは事故が起きてから問題点を指摘する
屑マスコミと同じではないか。



問題が起きてから騒ぐのは誰でも出来るのであって、
出版社がすべきなのは問題を提起し改善を訴えることである。


…などと書くと「出版社は営利団体ですから」という回答が来そうだが、
まさにそこが問題で、現在の出版社のほとんどがこの利益のために
社会的には意味があるが売れない本より社会的に害悪なのだが売れる本を
大量生産し、薄利多売し、そのくせ売上を落としている
醜態をさらしている。


加えて、高文研や柘植書房新社、緑風出版社、旬報社、新日本出版社、学習の友社など
市民団体や学者を対象として社会改革に役立つ本を出版している弱小企業も存在しており、
仮にも戦後を代表する左派系老舗出版社が問題が起きるまで腰を上げないのを
「それが金儲けの本質ですから」と言い訳をするのはおかしいと思う。



繰り返すが、岩波は集団的自衛権の容認を全く無視していたわけではない。
しかし、それでも既に去年の冬には本格的な内容が書かれた本が
大月書店から発刊されており(浅井基文『すっきり!わかる集団的自衛権』)、
遅すぎるといった印象がぬぐえない。

不十分な反対は遠回しの賛成である。

まだ完全には容認されていない今、岩波はようやく必死になったというところだが、
そもそも、集団的自衛権の問題というのは、日本軍の美化や自衛隊の入隊、
靖国の参拝、新兵器の購入、武器の売買の規制緩和、北朝鮮や中国への強硬政策など、
全体の歪みの中の一部部分にすぎない
ので、
これだけ取り上げてもあまり意味はない。

よって、これは岩波だけでなく前述の出版社各社にもお願いしたいことだが、
安倍政権の軍事政策を多角的に分析し、日本が軍拡に邁進していることを
告発する本を手遅れになる前に、ぜひとも出してもらいたい。


批判のためのメディアから予防のためのメディアへと変身する機会は
いくらでもある。本が売れないこのご時世、何が売れるかのトレンドは
自分から創っていかないといけないような気がしてならないのである。