時事解説「ディストピア」

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ザ・コーブでは何が訴えられているのか?その4

2015-02-23 00:11:15 | ザ・コーブ
国際捕鯨委員会(IWC)にはカリブ海の小国も参加しているが、
彼らは皆、日本の捕鯨維持・商業捕鯨再開に好意的な姿勢をとっている。


『ザ・コーブ』では、いずれのカリブ海諸国も
 日本によって漁場基地が無償提供されていること、
 加えてIWCの会費を日本が肩代わりしていることに触れ、
 賛成国が弱国を買収し、意のままに操っているのだと主張する。


これら漁場基地は現地にとって不要な施設であり、
映像では、なぜか鶏の飼育小屋(?)として利用されていた。


日本のODAが現地のためでなく日本の利益のために行っていることは
東南アジア研究者である故・村井吉敬&鶴見吉行氏をはじめ、
多くの識者によって指摘されているが、これもまたその一例なのだろう。


『ザ・コーブ』は、商業捕鯨が禁止され、需要もないのにも関わらず、
日本が執拗に鯨類を捕獲し、くじら肉(イルカ肉)を市場に売り捌く背景として
日本の帝国主義が関係しているのではないかと述べる。


確かに、捕鯨を語るにおいて、日本の右傾化の指摘は避けて通れないだろう。


手元にある反捕鯨本の発刊年度を見ると、
1990年代前半、つまり環境運動が注目されていた時代、
生物保護運動の本は特にバッシングされることがなかった。


出版社最大手の講談社から反捕鯨・イルカ本が売られていたなど、
今ではとても考えられないと思う。


なお、捕鯨・イルカを正当化する言説は、
岩波書店(岩波新書・現代文庫)に多くあり、
あの水産庁の元役人、小松正之が水産資源について語っていたりする。


鯨類研究所が水産庁の天下り先になっているのはよく知られた話だが、
その中でも小松は最も暴れている番犬の一人だ。


そういう人物に、乱獲について語らせるというのは、
なかなかのチャレンジャーではないだろうか?


他にも、ジャーナリストとして名高い鎌田慧氏も
太地町を訪れ、日本文化に傷をつけようとする外国勢力に憤りを覚えているが、
これなども、日本の左翼の限界を知る好例なのかもしれない。


これまでに述べたように、捕鯨やイルカ漁に反対するのは、
文化に反対しているわけでなく、捕り過ぎに反対しているのであり、
営利目的で鯨類を虐待する水族館ビジネスに反対しているのである。


むしろ、「水族館」という近代西洋文化(自然を囲み、人間の管理下に置くシステム)
の自然への侵略・征服に加担しているのは、太地町を含めた日本の行政府のほうなのだが、
この点に関して反・反イルカ漁論者はこれといって何も言わない。それが問題なのだ。


岩波は左派系出版社ではあるが、実際にはこの程度の左であり、
国家主義(国益に反する意見は基本的には言わない)から抜け出していない。


他方、斎藤貴男氏の反捕鯨論を掲載していたりする面もあり、
率直に評価すれば、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、立ち位置がしっかりしない


別にこれは岩波に限った話ではなく、
日本のメジャーな戦後左翼、つまり反共左翼は
現在、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、右なのか左なのかハッキリせず、
自身を「中道」あるいは「リベラル」と美的表現で粉飾しながら迷走の一途を辿っている。



捕鯨問題は日本の左翼の情けなさを示すリトマス試験紙なのかもしれない。




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