時事解説「ディストピア」

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『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その5(徹底批判!池上彰)

2014-12-09 00:24:13 | マスコミ批判
ついでなので、池上が主張するように、
北朝鮮は拉致問題に対して今まで不誠実な対応をしてきたかどうかを考えてみる。


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朝・日政府間合意によって拉致被害者および行方不明者を含む
「すべての日本人」に対する「包括的、全面的調査」が行われる。

合意文によると、朝鮮側は、
「過去、朝鮮が拉致問題に関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価」し、
「従来の立場はあるものの」、調査を実施することにした。



■「矛盾」の解明

日本では拉致被害者に対する調査で
朝鮮側が「不誠実な態度」を繰り返したという
印象ばかりが先行しているが、事実は異なる。


2002年9月17日、朝・日首脳会談が行われ、
拉致被害者に関して「5人生存、8人死亡」という調査結果が日本側に伝えられた。

会談直後、日本政府が派遣した事実調査チームが
平壌で生存者と面会し、情報収集を行った。

ところが、交通事故やガス中毒などの死因が「不自然」だとして、
調査結果を否定する世論が醸成されていった。

朝鮮側から提供された資料に「矛盾点」があるとの指摘もなされた。

2004年5月22日、2回目の首脳会談が行われた。


朝鮮の調査委員会が再稼動し、8月と9月に政府間接触で結果が通報され、
11月には外務省の藪中三十二アジア大洋州局長(当時)を
団長とする日本政府代表団が平壌を訪れた。


当時、朝鮮は日本側の要求に従って、
死亡者8人の死亡経緯など
150余項目にわたる再調査結果を伝えた。


02年の時点で指摘された資料の「矛盾点」に対する説明も行われた。


例えば、横田めぐみさんが入院していた病院の書類は、
首脳会談直前に特殊機関の指示によって作成されたものだった。

本来は、存在しなかった。

記録や物証を残そうとしない特殊機関に関わっていた人物の
死亡事実を客観的に証明しようとして無理が生じた。


「薮中訪朝団」は、内閣府と外務省、警察庁関係者、法医学専門家で構成されていた。

朝鮮の特別調査委員会から日本側の疑問に対する説明を聞き、
証人、目撃者と面談し、現地視察も行った。

団長は、横田めぐみさんの夫を説得し、めぐみさんの遺骨を受け取った。

訪朝団のメンバーは、朝鮮側の協力姿勢を評価し、
「死亡者の問題は90%解決した」(藪中局長)との認識を持って帰国したが、
その後、日本政府がめぐみさんの遺骨を「偽物」だと一方的に断定、発表したことで、
再び「反北朝鮮」の世論がつくられた。朝・日間の懸案は遺骨問題に摩り替えられ、
訪朝団が現地で確認した調査結果の詳細な内容は日本国民に伝わらなかった。


拉致被害者に対する調査は08年にも合意されたが、
日本で首相が交代し、新政権が敵対姿勢をとったために実施に至らなかった。


■朝鮮敵視の口実

これまで朝鮮は、日本側の求めに応じて資料と遺品を提供し、
それに対して説明も行ってきた。一方、日本は、敵対的態度で臨んだ。

拉致被害者調査における朝・日の協力体制を壊すことになった
「偽遺骨説」を朝鮮側は真っ向から否定、反論したが、日本側は
それにまともに答えていない。遺骨の返還要求も拒否している。


拉致事件は、朝・日の非正常な関係が続く中で起きた不幸な出来事だ。
首脳会談で、その事実が確認された。


ところが、日本では、会談後も拉致問題が朝鮮敵視政策の口実となり、
「国交正常化の早期実現」を明記した平壌宣言の履行を妨げるのに利用されてきた。


拉致問題の「解決」を望まない立場からは、調査結果への否定的な反応しかでてこない。

朝鮮側が「われわれが日本に対して誠意を持って対応すればするほど、
疑問点がより大きくなり、新たな問題点が提起される」(宋日昊大使)
と結論づけていた時期もある。


今回の合意で日本側は、「平壌宣言に則って…国交正常化を実現する意思を
改めて明らかにし、日朝間の信頼を醸成し関係改善を目指すため、誠実に臨む」と約束した。

朝鮮側は、日本が過去のような敵対的態度をとらないことを前提に、
調査に関する要請を受け入れた。合意文に「従来の立場があるものの」
というフレーズをわざわざ書き入れたのはそのためである。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/07/sinbo-j_140707-2/
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実際、遺骨が偽物だと断定したのは、たった1回の鑑定を根拠としたもので、
しかも、その鑑定した人物への取材は禁じられており、
第3者による再鑑定すら拒否される中でバッシングが行われた。


この鑑定結果は英国ネイチャー誌でも疑問視されている。

一応、北朝鮮内部のタカ派が意図的に偽物を忍ばせたという説もあるが、
私は案外、あの遺骨は本物だったのではないかと思っている。


当時から軍拡を目指していた日本政府としては、「遺骨が戻りました」で
済ませては困る状態だった。北朝鮮は不誠実な悪の帝国なのだという
印象付けが軍拡・改憲に必要(少なくとも効果的)であることを考えれば、
なぜか再鑑定を拒否していることも含め、大いに怪しいところである。


真相はどうあれ、少なくとも北朝鮮は3回は調査をしており、
その都度、結果報告を行ってきた。翻って強制連行や慰安婦問題に対する
日本政府の対応を見れば、これといった調査を2000年代以降行っておらず、
それどころか、史実を否定する論調が国会で幅を利かせつつある。

大日本帝国の戦争犯罪も日朝問題の1つであることを考えれば、
誠意が足りないのがどちらなのかは一目瞭然だ。


私がこうまで強く池上や日本政府を批判するのも、
現在の日朝対談には、旧植民地をどこまでも下の存在として見下し、
自国の軍拡・改憲・右傾化・史実改ざん・コリアン差別に利用しようとする
植民地主義の残滓が今もなお存在することがはっきりと見て取れるからである。



不思議なことに、池上は日朝対談において、自国のタカ派の動きは完全に無視している。
日本(正確には極右)正しい、北朝鮮ダメという前提をもとに論じている。


個人の自由だから、そういう思想を持つのは勝手だが、
少なくとも自分の立ち位置についてウソをつくのはやめてもらいたい。

インテリジェンスとか中立とか、客観的な意見であるかのように
ごまかすのは勘弁願いたい。そういう意味では石原や安倍のように
自分が保守派であることをアピールする人間のほうがまだましである。


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