時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

朝日新聞は本当にサヨク新聞なのか?

2016-01-11 22:33:25 | 北朝鮮
日本の右翼は「朝日新聞はサヨク新聞」だと言うが、
この新聞ほど政府にベッタリの見解を示し、反対者を徹底的に攻撃するゴロツキ新聞はないと思う。

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[朝日新聞] 北朝鮮の核実験 孤立を深めるだけの愚挙 (2016年01月07日)

北朝鮮政策で結束する日本、米国、韓国にとっても、正念場である。
改めて共通の立場を確認し、中国・ロシアとの協調も探り、
北朝鮮に一致して対応する態勢を固めるべきだ。

日本政府は昨年末、韓国との間の最大の懸案だった慰安婦問題の妥結で合意した。
核・ミサイルという北朝鮮の軍事挑発こそ日韓がともに直面する問題だけに、
これまで以上に協力関係を強化していきたい。


北朝鮮の核問題を話し合う、日米中ロと南北朝鮮の6者協議は08年12月以来、開かれていない。
むろん北朝鮮を核保有国と認めるわけにはいかないが、対話に有効な枠組みが6者協議であるのも確かだ。

これ以上、北朝鮮の暴走を許すわけにはいかない。国連での制裁強化を話し合うと同時に、
日米韓は、党大会前に外交的成果を焦る相手の出方を見つつ、
中ロを含む5カ国で北朝鮮を包囲する環境づくりを探りたい。
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上は1月7日朝刊の社説の末部を引用したものだが、次の記事を読んだ後に
もう一度この記事を読み直せば、朝日がどのような新聞なのかがハッキリとわかるだろう。


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慰安婦合意の裏で「均衡外交」の代わりに韓米日同盟強化

28日、韓国政府が日本と慰安婦問題に対する
「最終的かつ不可逆的な解決」を宣言した理由と背景については、
韓国のみならず日本でも「理解することは容易でない」という反応が出ている。

特に、韓国政府が交渉過程で被害当事者の意見を全く聞きもしなかった点、
慰安婦制度は日本政府による“国家犯罪”であるという
国際社会の普遍的認識を追及できず簡単に譲歩してしまった点など、
この問題の“内部論理”だけを考えるならば理解できない点が多数あるためだ。

朴槿恵(パク・クネ)政権が今回の合意で、米日が警戒してきた「中国傾斜」から抜け出して、
結局韓米日「3角同盟」に吸収される外交政策の大転換をした点に注目すれば、
今回の合意の真の意味を推し量ることができる。

2013年の3・1節祝辞で「加害者と被害者という歴史的立場は
千年の歴史が流れても変わることはない」という認識を明らかにした朴大統領は、
今年8月、植民支配に対して謝罪しなかった安倍談話を受け入れた。

続いて11月2日の韓日首脳会談では、
慰安婦問題を「(韓日)関係改善の最も大きな障害物」とまで表現した。


朝日新聞は30日、朴大統領が8月の安倍談話を受け入れたことに対して、
日本外務省のある元官僚が「こういう無礼な談話を受け入れるのか」と驚きを示した事実を伝えた。

このような脈絡で見る時、今回の合意は韓日関係の発展を阻んできた慰安婦問題を除去し、
本格的な韓日軍事協力に乗り出す信号弾と見ることができる


今回の合意が極めて微妙な軍事外交的意味を持つという点には、米日両国も共感している。

岸田文雄・日本外相は28日「(今回の合意で)日韓そして日米韓の安保協力も
前進する素地ができたと考え
、北東アジア地域の安保現状を考えれば日本の国益に大きく
寄与するだけでなく、この地域の平和と安定に大きく貢献できると考える」と話した。

これまで韓日関係の改善を要求してきたジョン・ケリー米国務長官も
「我々は今回の合意が米国の最も重要な二つの同盟関係を発展させることに寄与すると信じる。
 両国と経済および安保協力などを含む地域的・世界的問題を解決するための努力を
 継続できることを期待する」と明らかにした。

米日両国が韓国など地域の他国と多様な三角、多角同盟を追求して行くことは、
今年4月に米日が合意して改定した安保協力指針(ガイドライン)の核心内容の一つだ。

小此木政夫・慶応大名誉教授は「(米国の相対的衰退と中国の浮上という)体制変動に対して、
日本は米日同盟強化で、韓国は対中接近を通した均衡外交でそれぞれ異なる対応をしてきた。
しかし、今年11月2日の首脳会談を通じて韓日両国が同じ船に乗ることになった。
そうした以上、前に進まざるをえなかったのだろう」と今回の合意の意味を説明した。

これに伴い、今後は韓日軍事協力が拡大される展望だ。

読売新聞は28日両国首脳間の電話通話で、
安倍晋三首相が「特に安全保障の側面の協力を重視している」と話すと、
朴大統領が「安保協力は今後も継続したい」と応じたという事実を伝えた。


日本政府は、自衛隊が今後海外で軍事行動に乗り出す時に
韓国と日本が協力できるよう軍事情報保護協定(GSOMIA)、
相互軍需支援協定(ACSA)の締結を推進する方針だ。


これに対して韓国国防部当局者は
「これらの協定を論議することはまだ早い。
 慰安婦合意についても履行事項を見守らなければならない」として
「国民世論など、状況が成熟してこそ可能なことだ。まだ検討していない」と明らかにした。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22925.html
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[寄稿]なぜオバマ大統領が慰安婦問題に介入するのか
 ↑の寄稿もこの問題について考えるには参考になるものだと思う)

要するに、現在の流れとしてアメリカ・韓国・日本が中国や北朝鮮に対して
軍事的経済的圧力・けん制を行うための同盟が着々と築かれつつあるのだが、
これに対して非難するどころか更なる強化を求めているのが朝日新聞というメディアなのである。


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[朝日新聞] 北朝鮮核問題 問われる中国の行動 (2016年01月09日)


北朝鮮による4度目の核実験を受け、国連安保理は新たな制裁決議に向けた論議を始める。
前回3年前の実験後の決議では、再び強行すれば、「さらなる重大な措置をとる」と警告していた。

制裁強化は当然だ。

安保理が結束して早期に新決議を採択し、北朝鮮に暴挙の重大さを明示せねばならない

ただ、これまで北朝鮮の核・ミサイル問題では安保理決議を重ねてきたが、
警告や制裁が効果的だったとはいえない。

最大の要因は、包囲網に大きな「穴」があるからだ。
北朝鮮が政治・経済の両面で最も頼りとする中国である。

中朝の間柄は、朝鮮戦争をともに戦った血盟関係とうたわれた。
同じ共産圏陣営として米国と対峙(たいじ)した時代もあった。

だが、いまや中国の立ち位置は違う。米欧と並ぶ国際責任を担うべき大国である。
世界の安全を脅かす北朝鮮の暴走をこれ以上、許してはなるまい。

核・ミサイル問題の連鎖を断つためには、
中国が北朝鮮に対し、はっきりと過去にない行動を起こす必要がある。

中国はこれまで、北朝鮮のふるまいを不快に思いつつも支援は続けてきた。
自国の安全保障上、北朝鮮の崩壊につながりかねない事態を警戒するからだ。

加えて中朝国境近くの東北3省では北朝鮮との経済的な相互依存が深いため、
中国も実効的な制裁が容易にできない。

日本や韓国など周辺地域にとっても北朝鮮が無秩序に崩壊すれば、
難民問題など重大な脅威にさらされる危うさがある。

だとしても結局、中国が北朝鮮の後ろ盾を演じているだけでは、
金正恩(キムジョンウン)政権は過ちを繰り返すのみだろう。

まず中国が圧力の水位を高めるべきだ。

一方で北朝鮮問題の根本的な打開には、
やはり米国の積極関与が欠かせない。


北朝鮮指導部が最も望むのは、米国との平和協定をめざす協議だからだ。

オバマ政権は、北朝鮮が核放棄へ具体的な行動をとらない限り、
本格的な対話には臨まない方針を続けてきた。だが、その政策も功を奏さなかった。

オバマ政権のうち、北朝鮮に3度も核実験を許したという結果責任は、米国にもあろう。

米国は、日韓中・ロシアと連携して、
金正恩政権下の北朝鮮との新たな向き合い方を探る必要がある。
6者協議などの枠組みで対話をしても、それは必ずしも譲歩を意味しない。

北朝鮮をめぐり、関係国すべてが難しいかじとりを迫られるが、
硬軟とりまぜた積極関与に向け知恵を絞るしかあるまい。
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「制裁は当然」「まず中国が圧力の水位を高めるべき」と書いておきながら、
「新たな向き合い方を探る必要がある」などと心にも思っていないことを主張している。

本当に朝日が従来の強硬姿勢ではなく対話を臨んでいるのであれば、
従来どおりの制裁という名の報復行為を当然と評価したりはしないだろう。

歴史学者の朴宗元氏は、かつて
米国の伝統的アジア外交はアジアでの戦争はアジア人同士で戦わせることである」と語ったことがあるが、これを踏まえれば朝日の主張はまさに
アジア人同士(中国と北朝鮮との仲たがい)を戦わせようとすることに他ならない。

ハンギョレもまた、去年の8月にはお上ベッタリの姿勢を見せたし、
北朝鮮に制裁を下すことに対しては肯定的な態度を見せているが、
その一方で、穏健派の意見を掲載することで、一応のバランスをとっている。

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メリル元局長は、今回の核実験が「予告もなく行われたのではないか」という質問に
「韓国にいるある人物に、北朝鮮が核実験をするつもりだというメモを、最近送ったことがある」
とし
「金第1書記が水爆を開発したと発言したのにもかかわらず、誰も注意を払っていなかっただけだ」
と述べた。

彼は、オバマ政権が北朝鮮の核能力増強を無視してきた理由を尋ねる質問に、
「米国の人々は、北朝鮮が結局は崩壊するだろうし、そうすると(北朝鮮の核)問題が
 消えるだろうという、ナイーブな考えを持ち続けてきたからだ」と指摘した。

彼は「しかし、金第1書記が北朝鮮の状況をかなり安定させたかのように見えるうえ、
断言することはできないが、崩壊のシナリオは可能性が低いものと見られる」
と米国の「戦略的忍耐」政策を批判した。

メリル元局長は、対北朝鮮制裁と関連し
「北朝鮮は民主主義国家ではないため、制裁による衝撃をなんとか吸収できる。
 制裁で北朝鮮を核兵器プログラムから遠ざけるのは不可能だろう」とし
「北朝鮮は米国の力に対する牽制、韓国の従来の軍事的優位に対する牽制手段として、
 核兵器が必要だと考えているからだ」と指摘した。

特に米議会で対北朝鮮制裁の声が高まっていることに関連し、
制裁は効果がないことがすでに立証された」と強調した。


彼は「制裁というと、1940年代に米国が日本に加えた石油と鉄鋼に対する制裁が思い浮ぶ」とし
「その結果、日本は東アジアに移動し、真珠湾を攻撃した」と付け加えた。

そして「北朝鮮はまだ米国を打撃することができないかもしれないが、
朝鮮半島を破壊する能力はある。その点を考慮すべきだ」と強調した。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22985.html
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ハンギョレは北朝鮮が強い反発に出ないレベルの制裁を加えろというスタンスだが、
それでも一応、自分たちの意見とは別の考えも載せている。
(本来なら、それが普通なのだが)


対して朝日新聞は「国連で制裁強化を話し合うと同時に周辺国家で包囲網を形成せよ」
と自民党が望んでいることを代弁したり、ハンギョレすら否定している拡声器による
プロパガンダ放送の再開を黙認したりと滅茶苦茶だ。それどころか1、2面を通して
あたかもこのプロパガンダが本当のことを言っているかのような特集記事を書いてすらいる。

高級寿司にローストビーフ…安倍首相が番記者と国民の税金を使って忘年会!
癒着マスコミは恥ずかしくないのか


上の記事で批判されている忘年会にはもちろん朝日新聞も参加している。
そういう新聞が政府に都合の悪い記事や社説を載せるわけがない。

そもそも、朝日新聞は少なくとも20年前から政府にベッタリの新聞だった。
例えば、ペルーで大使館が襲撃された事件(今から20年ほど前の事件)では、
事件の最中に共同通信社の記者が許可をとった上でテログループに取材を行ったところ、
事態が悪化しかねないと答えた政府の見解に沿って、自分も同じ気持ちだと言わんばかりに
同記者をバッシングし、テレビ朝日のニュース番組「ニュースステーション」で
キャスターが「犯人全員が射殺されたことを残念に思う」とコメントすると、
その場にいた朝日の編集委員がただちに「危険があるのだから殺すのは当然」と反撃した。

なお、射殺された犯人のうち、少なくとも3人は武器を捨て投降していた。
ゲリラの犯人は悪い奴らだから当然という考えは18世紀前半の人権感覚だと
元共同通信社記者の浅野健一教授は述べている。

ちなみに、当時のペルーは反政府の異を唱える人間に問答無用の弾圧を下しており、
その苛烈さはアメリカのメディアでさえ取り上げるほどだったが、朝日は気にもとめなかった。

そのくせ、香港の謎の失踪事件は中国政府が関与しているかどうかもわからない時点で
言論の自由を妨げる中国の人権弾圧だと社説でいきまいている。

こういう態度を見れば、この新聞社が誰の顔色を伺って自分の意見を述べているかは明白だ。

前の記事にも書いたが朝日新聞はイラク戦争を当時、支持しておきながら
いざ空爆が開始されそうになると自社の社員を撤退させ、他社あるいはフリージャーナリスト
からの記事を転載する形で報道を行った。右翼が盛んに気にする慰安婦問題にしたって、
当時は産経や読売も同様の報道を行った。逆を言えば、朝日の記事はその程度のレベルなのである。

他のメディアが政府に追従しているときに、ただ一人だけ果敢に立ち向かったことなどない。
戦前からそういう新聞だったではないか。朝日=サヨクというイメージは、60~70年代に
同社の社員だった本多勝一氏や筑紫哲也氏が日本やアメリカの政府に批判的な記事や評論を書き、
それが全国的に多大な反響をもたらしたことに起因しているのではないだろうか?
(特に本多氏の『戦場の村』や『中国の旅』は左翼学生に大きな影響を与えていた。
 とはいえ、60~70年代は世界的にも左翼が活発的に動いていた時代だったことを
 踏まえれば、この時代においてすら朝日新聞は特に冒険をしてはいなかったと言えよう)

どうも私は長い歴史のある一時期、左派系だったというそれだけのことで
いまだに朝日=サヨクというレッテルが貼られているように思えてならない。

逆を言えば、朝日=サヨクと考えているような輩は社説すら読んでいない人間だということであり、
如何にそいつが脳内のイメージで物事を語っているかを如実に示しているわけである。

そういう意味では、朝日=サヨク新聞という言説は、
語り手のレベルを計る際にはちょうどいい基準になるのかもしれない。


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