時事解説「ディストピア」

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集団的自衛権と安保法制懇

2014-05-18 20:57:30 | 軍拡
安倍首相は依然(少なくとも8年前)から一貫して集団的自衛権を唱えていましたし、
近年の日本版NSCの設立、秘密保護法、軍事費増加、靖国参拝、歴史批判と
典型的かつ露骨な極右政治を行ってきたのだから、
なぜ今さらメディアが騒ぐのか理解できない方もいらっしゃるでしょう。


簡単に説明すれば、これは反対のポーズを取るふりをしながら、
政権を支持するメディアのいつもの卑劣で品のないパフォーマンス
です。



今日のバンキシャでも、中立的な立場を装いながら、
安倍政権の集団的自衛権の容認を支持していました。


ポイントなのは、私は賛成だと番組からは決して言わずに、
コメンテーターやインタビューされた市民の声を通じて、
間接的に「集団的自衛権は必要かもしれないよ」と匂わせること。



今回の集団的自衛権の検討開始については、
まず、安保法制懇という御用学者の団体を安倍首相が設立させ、
いかにも有識者の見解・承認を得て今回の検討に踏み込んだかのように
カモフラージュした行為と、上層部の人間だけで決定した経緯を責めるべき
です。



では、この安保法制懇のメンバーはどういう連中なのかというと、
北岡伸一氏(イラク戦争勃発時にアメリカを支援せよと日本政府に提言した人)、

岡崎久彦氏(『尊敬される国民 品格ある国家』など、数々の極右本を出版)、

葛西敬之氏(原発推進論者。親米保守の代表者の一人)、

坂元一哉氏(日米軍事同盟の強化の主張者。親米保守の代表者の一人)、

佐瀬昌盛氏(産経新聞の正論の執筆者。拓殖大学客員教授)、

佐 藤 謙氏(元防衛事務次官。、海上自衛隊スパイ事件で処分を受けた)、

田中明彦氏(北岡氏と同じく、イラク戦争支持派。)、

中西 寛氏(親米外交を主張する。イラク戦争全面支持者)

西  修氏(一応、憲法学者。改憲論者。『ここがヘンだよ!日本国憲法』)

西元徹也氏(元統合幕僚長。つまり自衛隊のトップにいた人物)

細谷雄一氏(北岡氏の弟子。武力行使を国際協力と主張する)

とハッキリしているだけでも、14名中、11名が右翼で構成され、
残り3名も集団的自衛権の提唱者というオール右翼団体です。


北岡氏と細谷氏に至っては、師弟で高いポストに座っているという
政治学業界のドス黒い部分がはっきりと見えてくるわけで、
中西氏や田中氏も加えた国際政治学者たちの横の繋がりがあり、
無作為に賛成派・反対派を選んだわけでなく、特定の結論へ導くことを
前提に結成された典型的な官僚的・秘密談合的組織
と言わざるをえません。


ちなみに、田中氏はイラク戦争について
「現在までのところイラクとアルカイダなどのテロリストとの関連を示す証拠は、
 確実なものはほとんどないようだが、これが結びつく可能性は絶無とはいえない。

 もしイラクの保持しているかもしれない大量破壊兵器が
 テロリストの手にわたったら、9・11事件をおこしたテロリストであれば
 必ず使用するであろう。」と話しています。



これを書き換えてみましょう。


「現在までのところ中国と北朝鮮などの脅威を示す証拠は、
 確実なものはほとんどないようだが、これが結びつく可能性は絶無とはいえない。

 もし北朝鮮や中国の保持しているかもしれない大量破壊兵器が
 日本の同盟国に使用されたら、戦争をおこしたテロリスト国家であれば
 必ず日本の安全を脅かすであろう。」



要するに、自分の妄想を根拠にして武装を主張しているんです。



細谷氏も、この問題は右翼と左翼の戦いではなく、
国際協力をするか孤立外交を選ぶかの戦いだと言っているように、
この方々の言い分のほとんどが言いがかりに近い


細谷教授の言い分が正しいならば、
日本は現在まで一貫して孤立外交をしてきたことになります。

外交史に詳しい方ならば、軍事面で他国と協力しないだけで
鎖国だとか孤立していると主張するのがいかに暴論であることかがわかるはずです。


日本国内に米軍基地を提供したり、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争と
戦後の日本は支援ばかりしてきました。これを不十分だと述べるのは、
湾岸戦争で軍事作戦に参加しなかっただけで圧力をかけてきた米国ぐらいです。

※なお、この手の論者は米国の力の衰退を主張しますが、
 集団的自衛権事態が湾岸戦争でのアメリカからの叱責が発端になっているので、
 衰退どころか、依然、強い影響力があるのは明らかです。


以上、スターリンも真っ青の工作に客観性があるでしょうか?


はっきり言いますが、こんな御用学者の団体を結成させ、彼らの口を
通して軍拡を正当化させる行為は、中国や北朝鮮ですらやりません。


日ごろ、両国の官僚主義に対して下品にわめいているメディアが
なぜか日本のそれにはお行儀よく受け止めている。

その意味は、言うまでもないでしょう。



ちなみに、バンキシャも自衛官の妻や幹部の反対意見をちょこっと紹介して、
同じく別の幹部や自衛官の賛成意見を多く取り上げ、
部屋に神武天皇以来の歴代天皇の絵を飾っている典型的な極右政治家である
佐藤正久氏にインタビューする一方で、反対派の議員には聞いていません。

というのも、自民党の内部でさえ、これはヤバいと思う方が多いようで、
逆を言えば、こんなものを本気で支持できるのは極右しかいないのでしょう。
(公明党すら苦言を呈しているようです。まぁ、後で賛成すると思うけど)


さて、番組では日本テレビの解説委員である青山和弘氏が
「どうしてこのタイミングで?」とまるで急に集団的自衛権が
 問われだしたかのようなペテンをかけながら解説していました。

個人の視点によるものではなく、中国や北朝鮮の脅威によるものだ
という安倍の言い分をそっくりそのまま拝借した説明でした。

 
    (日本テレビの解説委員は誰でもなれるのでは?
     政府の言い分をコピー&ペーストすればいいだけなんですから)


 8年前にも同じことを言っていたんですよ?安倍首相は。
 この8年間で日本が中国や北朝鮮から武力攻撃を受けましたか?


この間に起きたのは、震災と普天間基地移設の決定であり、
日本の国民を守ると言いながら、全然守っていない、
むしろ危険な原発を放置し続けて結果的に殺してきました。


「国民の命を守ることを重視している」とも説明しましたが、
 福祉の削減と雇用の不安定化(流動化)も重視していることには触れません。


国民の命は戦争ではなく、日々の生活での圧迫で
少しずつ脅かされているんです。


なぜそれを言わないのでしょうか?


この手の御用団体を作って、さも討論したかのようにごまかし、
表面的な手続を取りながら、事実上の独裁を行うのは軍事だけでなく、
沖縄基地問題や歴史問題、捕鯨、原発、すべてにおいて同様です。

日本政治の特徴とも言える問題点を指摘せず、
安倍がプレゼンテーションの絵に注文をつけてわかりやすくしたとか
どうでもいいことに時間を割く報道番組バンキシャ。

残念ながら、これが異端ではなくスタンダードなんですよね。今の日本では。

・追記
なお、北岡氏の詭弁については、以下のページを参照のこと。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/112364

積極的平和主義の欺瞞性についてはこちら。
http://irorio.jp/kawasemi_tubasa/20131018/82650/

中国側の見解はこちら。
http://j.people.com.cn/94474/8622560.html
http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2014-05/16/content_619247_3.htm


・さらに追記
イラク戦争を全面支持、アメリカ支援を主張した田中明彦教授って、
2008年から2010年まで、日本国際政治学会の理事長だったんですよね。

それも、2012年まで東京大学の副学長ですよ。
本人も東大出身ですし、まず政治学者としては超エリート。本物の一流です。

そういう方がイラク戦争に対して
「証拠はないけど、テロが使うかもしれないぞ!潰せ!」と提言する。
戦争の結果、イラクでは200万もの難民が発生しました。

安倍政権が日本版NSC、秘密保護法、自衛隊の美化、軍拡と
明らかに他国にとっての軍事的脅威となるなかで、
集団的自衛権の行使=日本国憲法9条の形骸化を主張してしまう。


本当、政治学って何のためにあるんでしょうね。

もちろん、パレスチナ研究者である早尾貴紀氏のように
攻撃される側から研究を進めている方もいることは知っています。
(この方の本や論文は本当に読み応えがあります)

ですが、早尾氏が若いとはいえ、
研究員で留まっている(ランクとしては「教授」ですらない)のに対して
田中教授は、この国の国際政治学の権威です。教授の中の教授ですよ。


イスラエルのガザ地区への想像を絶する飢餓政策に反対し、
サイードなどのアメリカ外交に抗議する人間の著書を日本語訳した
早尾氏が研究員どまりであるのに対して、この集団的自衛権を肯定し、
イラク戦争を全面的に支持し、日本のアメリカへの協力を要請した
(実際、彼は政府と密接なパイプがあり、発言力がある)田中氏が
学会の理事長、東大の副学長ですか。すごい業界ですね。


イラク戦争開始直前にフセイン政権を徹底的に攻撃する本を出版し、
結果的に世論のイラク戦争参加を支持する要因の一つを作った
酒井啓子氏をはじめとして、日本の政治学者は社会的…というより
世界にとっては害悪な人間ばっかりいるんじゃないですか。


いや、本当にひどい。小保方氏なんて取るに足りません。
日本の外交に強い影響を与える国際政治学が、政府の後押しをしている。

これこそ、私に言わせれば、日本にとっての本当の脅威ですよ。


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