時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

アメリカ人権外交について

2014-08-28 23:35:27 | 国際政治
かつてヨーロッパ諸国はキリスト教の価値観を絶対視し、
それとは異なる道徳、生活、文化を有していた諸民族を蔑視し、
これを文明化させることに使命を燃やしていた。


その構造は現代でも変わらず、キリスト教に代わって
人権や民主主義が台頭し、中東やアジアなどの非民主国を攻撃している。

これらのイデオロギーは被支配者が自己の権利を求めて拡張させた経緯がある一方で、
あくまでも他者を征服するための発明品なので、自国では徹底されない傾向にもある。

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人権を騒ぐ米国で

9日、米ミズリー州で起きた白人警官による
黒人少年射殺事件をめぐり、米国が揺れに揺れている。

犠牲者は武器を持たず
両手をあげていたという目撃証言も出たことから、抗議デモは主要都市へと拡散。


このような中で、
またも白人警官が20代の黒人男性を射殺するという事件が19日、同州内で起きた

▼国民と社会の安全を守るべき警官が公然と国民を射殺した事件は世界に衝撃を与えた。
 が、白人警官による黒人銃殺事件は後を絶たない。
 近くは昨年7月、無防備の黒人少年を銃殺した白人警官に無罪の判決が下された。
 殺人行為が正当防衛にすりかえられる、構造的なゆがみがこのような事件を後押ししている。

▼にもかかわらず、米国は他国に対しては人一倍人権問題を騒ぎ立てている。
米国務省が定期的に発表している「国別人権報告書」がそれだ。
報告書で非難されたロシアは、今回の事件を受けて、
自分たちの疑わしい経験を他国に押しつける前に、
自身の国の秩序を回復させるよう要求した。

中国、キューバ、イランなども一斉に「反撃」を加えた。
朝鮮外務省は26日、米国こそ人権蹂躙国家だと痛烈に非難した


▼米国に数々の言いがかりをつけられてきた朝鮮の立場は一貫している。
 米国は人権問題の改善に関心があるのではなく、
 人権問題を口実に朝鮮を転覆させようとしているということだ。


 米国社会の実態は、米国に人権問題を騒ぐ資格すらないことを物語っている。
http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/il-352/

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人権や民主主義が本来持っていた役割、
すなわち、社会的弱者や弱国の権利を守るという機能を徹底させるのではなく、
他国への干渉(最悪の場合、消滅)の口実として利用されているわけだ。



ウクライナ問題しかり、北朝鮮しかり、気に入らない国家、
資源を有している国家に対する人権外交は陰湿かつ執拗に行われている。


だが、これは何もアメリカの専売特許ではなく、
イギリスやフランスなどの西洋で一般に見られる行為であり、
日本や韓国などの属国でも同様に行われていることでもある。



私は反共左翼という言葉をもって、本質的には反共主義であり、
右派と提携すらしてしまう集団の悪質性を強く非難してきたが、
人権活動家や平和団体の中にもそういうものはいる。


よって、私たちは右か左かではなく、もっと真剣に、かつ念入りに
相手の本質を見定め、その主張を批判的に解釈しなければならないだろう。

横浜市の思想弾圧 ~現代の焚書坑儒~

2014-08-28 22:53:01 | 浅学なる道(コラム)
独裁は既に始まっている。

始皇帝で知られる古代中国王朝、秦の時代に焚書坑儒というものがあった。
これは書物を燃やし、儒学者を生き埋めにするという思想弾圧政策だが、
これと同じ歴史隠ぺい工作・思想弾圧政策が日本の都市で目下、行われている。


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「朝鮮人虐殺」を抹消/横浜の副読本「わかるヨコハマ」改訂、回収問題(上)
 歴史を学ぶ市民の会・神奈川 後藤周

「わかるヨコハマ」は横浜市教育委員会が市立中学校1年生に配布している副読本である。
この副読本の関東大震災の記述が政治介入によって改訂、回収されるという問題が起きた。
副読本記述改訂と回収の経過と問題点について報告する。


副読本2012年度版は関東大震災時の朝鮮人虐殺について次のように記述している。

「デマを信じた軍隊や警察、在郷軍人会や青年会を母体として
組織されていた自警団などは朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い、また中国人をも殺傷した。
横浜でも各地で自警団が組織され、異常な緊張状態のもとで、
朝鮮人や中国人が虐殺される事件が起きた」

2012年7月19日の市議会・常任委員会で、自民党市議が
「我が国の歴史認識や外交問題に大きな影響を及ぼしかねない」としてこの記述を批判した。

記述の批判点は二つ、
①軍隊、警察は殺害に関与していない。
当時の官憲はむしろ「殺害される朝鮮人を保護していた」
②「虐殺」という言葉は、
関東大震災の朝鮮人殺害では「世間で使われる表現ではない」、というもの。


二点とも歴史研究の成果とはかけ離れた一市議の特異な歴史理解である。
軍隊・警察が殺害に関与したことは軍隊自身の公的記録からも明らかな歴史事実だ。

官憲が当初は朝鮮人暴動の流言を信じ迫害と虐殺に関与したことが、
虐殺を拡大・激化させた一因とみなされている。


また、「朝鮮人虐殺」は百科事典や辞書、
教科書にも記された「世間で使われる」歴史用語である。



この自民党市議の特異な見解は、学習教材を検討する上では考慮の枠外のものに過ぎない。

ところが、答弁に立った山田巧教育長は、
市議の発言を受け入れ副読本の改訂と回収を約束したのだ。

横浜市教委は教育行政の責任者としての自覚も見識も示さず、
政治介入を安易に受け入れたのだ。



政治介入を受け入れた結果、横浜の教育には異様な事態が引き起こされていく。

(1)歴史教材としての検討が行われなかった改訂作業

市教委は改訂の基本方針を2012年10月に決定、「軍隊・警察の関与は記述しない」
「『虐殺』『迫害』の語句は用いず『殺害』とする」を具体的内容とした。

市教委指導主事室が主導し、執筆者には了解を得るという形であった。
歴史教材としての検討はなく、自民党市議の主張に沿った改訂が行われたのだ。


(2)「虐殺不使用」の学校通知と職員処分の強行

市教委は2012年9月25日、
各学校に対して「軍隊・警察の虐殺関与を否定」「虐殺の語句の不使用」を通知する。

また9月28日には関係職員4名に対し、
文書決裁をしていなかったという理由で懲戒処分を行う。



副読本は従来一度も内容に関する文書決裁は行われていない。不当な処分だ。
学校通知と懲戒処分は、
市教委が強い意思をもって教育内容を一方的に統制したものと言える。


(3)前代未聞の副読本回収と溶解処分

2012年度版の回収が行われた。

2013年5月末の回収率は44.3%と半数にも達せず、
6月には二度目の回収指示(未回収者からは理由を聞きとることを指示)を出し、
約2万7千人の生徒とその家族に対して執拗な回収要請を続けた。

1971年に始まる副読本は毎年のように改訂があったが、回収が行われたのは前代未聞のこと。
しかも、回収した15,584冊は年度末の3月、廃棄文書として「溶解処分」された

2012年度版の副読本を
生徒の手から奪い取っただけでなく、
その存在自体も抹消した。


(4)市民の閲覧を妨害

副読本は市民に市販され、
また閲覧できるように市民情報センター、中央図書館に常置されている。
ところが2012年度版だけは市販されず、市民は入手できない。

市民情報センターからは一時引き揚げが行われた。中央図書館では1年以上も、
2012年度版だけが開架棚ではなく、気づきにくいカウンター内に置かれてた。

副読本という歴史教材の問題を、横浜市教委は教育ではなく
一部政治勢力への対応として改訂・回収を断行し、次々に異様な事態を引き起こしたのだ。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/sk282-2/
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自民党の言いなりになっているのも凄まじいものだが、
わざわざ回収して溶解処理する念の入り様には驚かされる。



おまけに文書決裁をしなかった職員を懲戒処分している。逆らう者には罰を……か。


何度か話しているが、独裁というのは
オーウェルが描写した1984年の世界のようなものでは決してない。


オーウェルは当時のイギリスをそのまま描けばよかったのである。
この世界的に有名なプロパガンダ小説のために歪んだイメージが流布されているが、
独裁は言論の自由と思想の自由が認められている民主主義国で民主的に行われる。


一見すると、この副教材に対する市と教育委員会の悪行は甚だしいものだが、
全体的に見れば、圧倒的に多数の人間によって支持・黙認されているし、
手続きも上意下達ではなく、文書決裁の形式で行われている。


問題の市議会議員が絶対的な権力を持っているわけではなく、
教育委員会や校長、教員が場の空気を読んで自発的に協力している。

一連の事件が隠ぺいされているわけでもない。
むしろ、この事件は朝鮮新報ももちろんのこと、共産党も批判している。


http://www.jcp-yokohama.com/archives/7573

圧倒的多数のメディアが関心を寄せないだけにすぎない。

世論でこの種の弾圧が問題視されていないだけだ。



しかし、それが問題である。

独裁というものは大衆の支持によって成り立つのであり、
オーウェルが「これが共産主義国や!」と描いた地獄の世界ではなく、
我々が住んでいる現代の民主主義国で維持されている(現在進行形なのがポイント)。

この点を自覚しない限り、自国の異常性に我々は気付かないのではないだろうか?