時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

ウクライナの出来事に目をつぶる国際社会

2014-08-18 23:33:50 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ここ最近、ウクライナについて何も書かないのは、
南東部においてウクライナ軍によるジェノサイドが常態化しているからだ。

つまり、爆撃が当たり前になっているので、
恐ろしいことに書く内容がマンネリ化しているのである。


そこで、今回はこの事態を徹底して無視する国際社会の批判を
ロシアの声の評論を紹介することによって行いたいと思う。


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西側のマスコミは、ウクライナに関する情報をより分けている。
テレビや紙面で紹介されるのはウクライナ政府の発言であり、義勇軍の発言はない。
ウクライナ南部・東部の人道的大参事は無視されている。
ダブルスタンダードの原則が作用している。


現在ウクライナ情勢に関心を持っている西側のジャーナリストは少ない。
欧州のテレビ局も米国のテレビ局も、ドンバスで起こっていることを全く伝えてない。

また避難民についても全く触れられていない。ロシアとウクライナの国境地域では、
空爆によって隣国への避難を余儀なくされた人々のための野営地が開設されている。

だが外国のジャーナリストたちは野営地へ訪れ、
ウクライナ政府による軍事作戦の被害に遭った人々と語ろうとはしない。

基金「ポリチカ」のヴャチェスラフ・ニコノフ総裁は、なぜなら
誉めそやされた客観的な西側のジャーナリズムは、
西側の政治家の公式見解とは異なる視点からウクライナの出来事を
報道することを望んでいないからだと指摘し、次のように語っている。



戦争が始まった時、最初に失われるのは真実だ。
米国とその北大西洋条約機構(NATO)の同盟国が同じ立場を取っているのは明らかだ。

それは、ウクライナ人にとって西側は『明るく良い場所』であり、
ウクライナ人はその明るくて良い西側の一部になることを望んでいるが、
ロシアはそれを妨げる『暗くて悪い場所』だというものだ。
これと一致しないものは全て報道されないか、歪曲されるだろう。
これは、情報戦争の一般的な手段だ。」


(中略)


なお、ロシアがウクライナに向けて送った人道支援物資について、
これが脅威になる可能性があると語られている。


飲料水のボトルの中に特殊部隊が隠れているのではないか、
ベビーフードの瓶の中に砲が隠されているのではないかと真剣に議論されている。


ウクライナ政府とその西側のスポンサーたちの気まぐれで
家を失ったドンバスの住民のために、毛布や医薬品、食料などを集めることなど、
欧米のジャーナリストたちの頭には思い浮かばないようだ。

なぜならその場合、
ウクライナ南部・東部が壊滅的な状況であることを認めることになるからだ。

彼らの課題は、西側社会を落ち着かせ、
ウクライナ南部・東部では特に何も起こっていないと社会を納得させることだ。
これは、臆病者の行動だ。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/2014_08_14/275955551/
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これについて、赤旗では以下のように説明している。

「欧米諸国はウクライナ危機を通じ、
 ロシアによる親ロ派への人的・物的支援を非難してきました。」
(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-18/2014081806_01_1.html)


そもそも、親ロ派は存在しない。

キエフのネオナチ政権に反対した地方の自治体が独立を宣言し、
現地の住人がロシアに好感を抱いているだけにすぎない。

メディアではテロリストのように扱われているが、
親ロ派は、現地の住人であって、組織らしいものはない。

ドネツク人民共和国というものもあるが、
空爆はドネツク・ルハンスク以外の都市でも行われており、
親ロ派という言葉は、この地域一帯の反キエフの諸集団の総称として使われている。


テロリストのねつ造という意味では、メディアの罪は重い。
赤旗は国内の報道に関しては優秀なのだが、海外になるとそうでもない。

共産党自体が、中国や北朝鮮、ロシアなどの共産主義国家と非常に仲が悪い。
そのため、同国に対しても批判するための批判記事になっている。

反共左翼の面々は、この点こそ非難すべきなのだが、
なぜか彼らはこの点に関しては見解を一致させており、
「一体、お前らは何なんだよ」と声を大にして叫びたい。


朝日や読売のような新聞がこの調子なのは当たり前として、
せめて左翼の面々には、ウクライナ報道のおかしさに気付いてほしい。

ウクライナにおける差別主義者のなれの果て

2014-08-18 23:31:32 | リビア・ウクライナ・南米・中東
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_18/276070243/

これは、ドネツクで捕獲されたウクライナ軍の捕虜に対して行われた
取り調べの速記録なのですが、ネトウヨと自称ネトウヨではない差別主義者と
言い分がそっくりで、差別を助長された人間が自発的に軍に志願し、
現地で蛮行を働くことがよくわかります。

ネットでの口げんかなら可愛いものですが、いざ実行に移されるとこうなるのだなと。

ネオナチが軍や司法の要職に就いているキエフ政権ですが、
レイシズムというものが、末端の人間を権力者たちの生きた道具に変える
魔法の杖であることを感じとって頂ければ幸いです。

妄想で中国批判をする池上彰

2014-08-18 21:33:34 | マスコミ批判
完全にテレビタックルの後継番組と化したなぁ……

今日のテレビタック、じゃなかった、
池上彰氏のニュース番組を見て呆れてしまった。時事解説ですらない。
チャンネル桜の合法詐欺番組のほうがまだ開き直っていて潔い。


中国に足りないものはモラル(!)なんだそうだ。

経済では世界一になった!だが道徳心が足りん!

……だそうだ。お前は頑固おやじか。


池上氏は中国のモラル低下の具体例としてメラニンを混入した粉ミルク事件や、
2011年に起きた鉄道事故への対応などを列挙していたのだが、
それはないんじゃないのか?


同氏の理屈に従うと、日本についても同じことが言えてしまう。
原発事故の政府や東電の対応などはその典型だ。


原発事故は偶然おきた事故ではなく、その危険性は以前から問われていた。
しかし、一基につき5000万の金が動くプロジェクトであるためか、
無視や隠ぺい、つまり「安全神話」がささやかれていた。
起こるべくして起こったのである。


他にも、粉ミルク事件のように企業が起こした事件すらモラル低下の事例として扱うならば、
日本でも2013年にカネボウ化粧品が美白効果があるとして肌がまだらになる商品を売りつけ、
6808人から症状や不安を訴える申し出があり、うち2250人は、症状が重いのである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502V_V00C14A7CC1000/

カネボウは日本を代表する大企業の一つであり、その社会的責任は重大だ。
しかし、この事件をもって日本に足りないものはモラルと断定できるだろうか?

原子力発電に対する自治体や電力会社、経産省の動きも非道いものであるが、
それを理由に、日本人のモラル低下を主張できるのだろうか?


さらには、10年以上前から続いている歴史の否定および改善、
慰安婦問題へ対する不誠実な対応、靖国神社参拝、在日コリアンへの差別など、
モラルに欠けた行為を日本はいくらでもしているではないか?


しかし、これらをもって日本人のメンタル自体が劣化したなどと言えるのか?
絶対に言えないはずだ。そもそも、「日本人」というのは非常に大きなカテゴリーで、
その中には帰化した人間や、私のように武家の流れを組む人間もいるし、
網野善彦氏が指摘したように、東日本と西日本では文化も歴史も異なるのである。

このように、日本ですら地域ごと、階級ごとに多様な文化と歴史を
それぞれの人間が背負っているのであって、いくつかの大々的な事件を根拠に、
すべての日本人および日本社会のモラルが低下したなどとは主張できない。

ましてや、12億人もいる中国ならなおさらだ。


しかも、その12億はモンゴルや満州、回、ミャオ、漢などの
多民族で構成され、内陸部と沿岸部では歴史も文化も異なる。

「中国人は~だ」という言説は、中国の多様性を無視した極論であり、
 それは日本人に対しても跳ね返ってくる差別的な発言でもある。


さて、池上氏によると、中国人のモラルの低さは歴史的産物であり、
毛沢東の文化大革命によるものなんだそうだ。馬鹿馬鹿しくて声も出ない。


池上氏の解説は、もはや在特会やつくる会、日本維新の会の解説と
同レベルの出鱈目と化している。完全に合法詐欺師となっている。


池上氏によると、文革は毛沢東による恐怖政治だったそうなのだが、
これは非常に文革の複雑性を無視したもので、嘘と言っても良いレベルだ。


実際には、文革は地方や都市の青年革命家を毛沢東が焚きつけたことで
起きたものであり、当時の中国社会に存在した党における幹部の腐敗や
行き過ぎた中央集権のために生じた非民主的な政治制度に反対して起きたものだった。

当時は世界中で学生運動が活発に行われていた時代だが、
この運動を毛沢東は積極的に支持したわけである。

日本の場合も同様であったが、いわゆる内ゲバが発生してくると、
エリート出身の学生と非エリート出身の学生、あるいは労働者や農民との間の
具体的な軋轢が問題化し、それを暴力によって解決する方向へと向かっていく。

内戦にも似た混乱が各地で発生し、きっかけを作った毛沢東は次第に
この混乱を鎮めるために、当初応援していたはずの改革派を弾圧していく。

加えて、四人組と俗に言われる権力者集団が実権を握り、
党内においても、毛沢東、四人組、反文革との間で抗争が続いた。

結果としては反文革が勝利し、周恩来と小平がその後の中国を築いていく。


このようにザッと説明しただけでも、非常に複雑な事件であることがわかるだろう。
実際に、この複雑性と運動の多様性のため、様々な視点から研究が行われている。


それなのに、中国人のモラルが低いのは文革で儒教が否定されたからだ
という妄言を電波に乗せて叫ぶのは、聴衆を惑わす詐欺行為に等しい。

小平以降の中国では文革は間違いだったと認めているのだが、
このような事実も池上氏はもちろん、触れていない。

また、現在の中国の識字率は95%なのだが、
池上氏は文革のせいで字が読めない人間が何人もいると、
まるで現在の中国が教育後進国であるかのようにウソをついている。

確かに12億の5%だから、6千万の人間が読み書きができないわけで、
これはこれで問題である。だが、そもそも識字率と道徳の間に関連性はない

字が読めればモラルが上がるなら、日本人は善人だらけになるだろう。
中国にしたって11憶人の人間は字が読めるのに事件は起こすのである。

儒教やキリスト教が濃い韓国でも凶悪犯罪や腐敗は起きているし、
今の韓国政府のトップがあのパク・チョンヒの娘であることからも、
軍事独裁政権の記憶を美化し、反動化させる動きがあることを匂わせる。


要するに、池上氏の主張は言いがかりも甚だしいものであり、
到底、まっとうなジャーナリストなら言うはずがない内容のものだ。


氏は以前から中立性のある報道を心がけていたはずなのだが、
ここに来てついにメッキがはがれたような気がする。

中国を批判するのは構わない。
だが、それは専門性のあるもので、
ゴシップであってはならないと思う。


そういう意味では丸川哲史氏の『魯迅と毛沢東』は
現在の中国における批判的知識人が両名の著作を読みなおしていることを
紹介しており、また双方を事例に現代中国の思想史を叙述しており面白い。

私が以前、このサイトでも紹介したユー・ビン氏の資本論入門でも、
小平以降の開放路線によって、行き過ぎた資本主義が正当化されたと
いう批判が書かれており、仮にモラルが低下したとしても、
それは文革というよりも、文革以降によるものだという意見もある。

中国に関心がある者は、なるべく多角的な視点からこの国を見るべきだ。
池上氏の解説はウソと煽動に満ちたもので、とても中立な視点のものとは思えない。

池上彰のテレビタックルに改名しろと書いたこともあったが、
ここまで来るとさすがに笑えない。テレビ朝日の責任は重大だ。