時事解説「ディストピア」

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古市憲寿は研究者ではない(&日本学術振興会は死んだ)

2014-08-09 23:09:53 | マスコミ批判
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はてなブックマークから来た方へ

まーた古市憲寿が政府に尻尾を振りだした

なぜだか、2年前に書かれた当記事が読まれているようなので、
現時点での古市氏・・・というより彼をタレントにしてしまった主流左翼に対する批判を
上の記事に書きました。合わせてお読み頂ければ幸いです。

なお、私は以前、アベノミクスを批判した記事を書いたところ、
アベノミクス信奉者の連中にはてなブックマークをつけられ、執拗に攻撃されたことがあり、
それ以来、はてなブックマークに関しては、申し訳ありませんが、良いイメージは持っていません。


ちなみに、その攻撃の主体者が本人曰く、改憲に反対する左翼であり、
そういう点からも日本のメディアに露出してくるリベラル知識人たちの劣化を感じてしまう次第です。

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古市憲寿については、以前の記事で、彼の著書をこっぴどく批判したことがある。

簡単に要約すると、彼は世界各国の博物館を巡ってレポートをまとめているのだが、
靖国神社や遊就館の存在を度外視して日本には国営の戦争博物館がないと断言したり、
各国の展示物を通じての隠された歴史観(例えばアメリカのエノラ・ゲイ事件
ではアメリカ社会で今なお原爆肯定論が根深く存在することが露見された)
を指摘・批判するまでもなく、歴史学としても、社会学としても、
とても研究者の論文・報告書とは思えない内容だった。

こんな駄作をあの加藤典洋が推薦しているという時点で、
かつ、なぜか巻末にアイドルの桃色クローバーZとの対談があったりする時点で、
かなりのイロモノと言おうか、戦争を扱った本としては最低の部類だと思ったものだ。



その後は「今年で29歳なのに若者を代表するのは無理あるだろ」といった
さりげないツッコミで無視していたのだが、
偶然読んだ文春スペシャルに彼の対談があって、愕然とした。


ぼくら若者が考える『永遠の0』


・・・ギャグなのか?

(なお、対談相手は32歳と35歳。無理しすぎである)


内容も非道いもので、歴史評論としても文学評論としても
研究者のレベルに達していない。ネットのおしゃべりのようなものだった。


例えば、嫌韓本が売れているがKPOPはもっと売れているから
日本の若者は右傾化していないといった物凄い詭弁をのたまうのである。


マイケル・ジャクソンやマイルス・デイヴィスの人気があるからといって、
アメリカの人種差別が解消されたと言えるのだろうか?

(なお、アメリカの人種差別については、ティム・ワイズが
 オバマがあれだけ人気があった時期にすら、彼の政策を分析すると、
 実は白人に妥協したものであり、また新たな人種差別も散見されると
 彼の自著『オバマを拒絶するアメリカ」で述べている)


ネトウヨのまとめブログはいくらでもあるし、
サブカル・エンタメ系のサイト(芸能・漫画等)にも、
嫌韓・嫌中系の記事を載せてアクセス数を稼いでいる所がある。

しかし、その逆の現象は無い。
天皇制や戦争犯罪、欧米の植民地主義を糾弾するサイトが
保守速報や、はちま寄稿なみに人気があると言う話を聞いたことが無い。


同様に、池上彰や佐藤優の保守本は大ヒットしているが、
その逆が売れているという話も聞いたことが無い。

比較をする際に、同一の種類を対象に設定するのは常識である。
基本的な社会調査の方法を彼は学んでいないのではないだろうか?


簡単に言えば、ラーメンと鉛筆を食べ比べて、前者は後者よりも美味しい、
だから、このラーメンは不味くないと結論を下しているようなもの
なのだが…


『永遠の0』の批判は今後、行うつもりだが、
それに先行して彼を批判したのは、彼の経歴を読むと、
日本の学問の世界が右傾化しつつあることをヒシヒシと感じるためである。


ウィキをみると、彼は育志賞という賞を日本学術振興会から受賞している。
同団体は、若年研究者に特別研究員制度という就労支援を行っており、
これがなければ、日本の若手研究者は、よっぽどコネがあるか、
准教授レベルの実力がない限り、非正規の教員として生きていかざるを得ない。

そう断言できるほど、日本の研究者の働き口は狭いのである。

この手の話になると何度も例にあげてしまうのがアメリカ・インディアン研究者の
鎌田遵氏で、彼はアメリカ学会という日本を代表する由緒ある学会で受賞したり、
大月書店や岩波書店から数冊の本を出版したにも関わらず、長年講師に留まっていた。


つまり、特別研究員制度というのは若手研究者にとっては希望と言えるものであり、
そこには研究員として採用するさいに、公平性というものが要される…はずだ。


ところが、この育志賞、設立の経緯からして
既に政治的なのである。



ホームページから該当部分を引用しよう。

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日本学術振興会から日本学術振興会は、
天皇陛下の御即位20年に当たり
社会的に厳しい経済環境の中で、勉学や研究に励んでいる
若手研究者を支援・奨励するための事業の資として、
平成21年に陛下から御下賜金を賜りました

 このような陛下のお気持ちを受けて、本会では、
将来、我が国の学術研究の発展に寄与することが期待される
優秀な大学院博士課程学生を顕彰することを目的として、
平成22年度に「日本学術振興会 育志賞」を創設しました。

http://www.jsps.go.jp/j-ikushi-prize/
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学問の中立性はどこに行ったのだ?


育志賞の受賞者が保守(それも極右)の雑誌で、
南京事件を否定する作家の書く特攻隊美化小説を絶賛する。

これは果たして偶然なのか?

どうりで、語り口が砂を噛むような要領を得ないものになっていると思った。

彼の元々の研究は、「若者は貧乏でも幸福感を得ている」という
下手をすれば、労働条件の改悪や社会保障少の縮小を是認するような内容に
なっているのだが、なるほど、確かにこういう政府にとって都合のよい主張は
表彰に値するだろう。だが、仮にも日本の若年研究者に仕事口を与える組織が
お上を批判する内容が書けないような賞を設立して良いのだろうか?



他、彼の経歴をみると、

2012年、野田内閣の内閣府国家戦略室「フロンティア分科会」部会委員
2013年、安倍内閣の「経済財政動向等についての集中点検会合」委員
2013年~ 内閣官房行政改革推進本部事務局「国・行政のあり方に関する懇談会」メンバー

となっており、ベッタベタの御用学者の道を進んでいる

野田も相当な右翼だったが、歴史研究者としては絶対に行ってはならないこと、
すなわち、歴史改ざんを行う連中への協力という歴史研究そのものを否定する行為
を行っている人間が、かつこれといって実績を挙げていない人間が、
どうして内閣の有識者会の一員になれよう?

彼の出身は知らないが、保守勢力とのコネクションが
相当強いのだなということが伺える。


竹島は日本領という主張を出鱈目の根拠をもって主張している下條正男氏も、
韓国でヒラの日本語講師をしていたはずなのに、なぜか大学教授にまで出世して
彼の教え子が外務省や防衛省の役人になっているのも、露骨な裏の力を感じるが、
古市氏も学者というよりは、汚職政治家である。


今となっては転向してはいるが、東裕紀氏や宮台真司氏は、
それぞれオタクやブルセラといった当時の社会学では無視されていた存在を
対象にして、画期的な論文を世に送り出したのがきっかけで大ブレイクした。

いわゆる一発屋だったために、その後は評論家(笑)に落ちぶれているのだが、
それでも彼らは自分の実力と発想力を武器に名を挙げたのである。


右翼の代表格である渡辺昇一氏も英語学ではきちんと結果を出しているし、
もっと大物でいえば、第3世界を経済的に侵略したミルトン・フリードマンも
20世紀を代表する経済学者である(それゆえに近代経済学の問題点が見えてくるのだが)


それと比べて、皇族…というより皇族を信奉する右翼勢力に媚を売り、
日本史研究および研究者の実績をないがしろにし、侮辱する行為を行う人間が
堂々と政府の有識者会議に参加し、日本の右傾化に拍車をかける真似をしている。

こういう人物を支援する日本学術振興会の社会的責任は重大だ。

私もこんな賞がいつのまにか出来ていたので驚いたのだが、
天皇陛下がお喜ばれになる学問を研究するのが学者だというのならば、
そんなのは糞くらえである。学問は権力に抗う最後の砦だ。

その砦の一つがいつのまにか知らないうちに占領されていた。
このことに私は底知れぬショックを覚えてならない。


・追記
中立性が試されるはずの学会で政治やコネが影響を及ぼしているのなら、
真っ当な研究者が働く機会がますます減るではないか。

これでは就労支援どころか就労への妨害を務めている。
どうしてこの国は君が代といい、真面目な教員が迫害される制度になっているのだ?


・追追記

こんな研究者の風上にも置けない人間に仕事を与えている国や
出版社に憤慨することこの上なしだが、よく調べてみれば、この男、
あの上野千鶴子と対談もしているのである。

上野は、もともとはマルクス主義社会学者であり、
女性学やフェミニズム研究に大きく貢献した人間ではあるが、
その後、慰安婦の国家責任を放棄させるアジア女性基金の中心的メンバーとなり、
自らがそれまで築き上げた研究を全否定するような真似をしたことを覚えている。


要するに、金で解決するからこれ以上の日本政府への追求はやめましょうという
恐ろしく身勝手かつ政治的な運動で、慰安婦研究者はこの運動を否定しているのだが、
まさかその後の上野がこのようなコネだけのペテン師と仲良くお話していたとは…


彼女がすべきなのは、彼(というより彼を持ち上げる保守勢力)との対決だったはず。

先述の加藤といい、上野といい、世間的には左翼とみなされていたであろう面々だ。
戦後左翼の失敗を考えるに当たって、やはり左翼の隠れた転向を指摘せざるを得ない。


・追追追記

ところで、AKBに熱を上げている小林よしのりといい、
よりによって自民党の先輩党員が来る場所で、アニメのコスプレパーティを
開いて顰蹙を買った三橋貴明といい、桃色クローバーZと対談する古市といい、
この手の輩はなぜヲタク気質なんだ?さっぱり理解できない。


なお、古市についての批判は、右のサイトでも行われている。

古市憲寿の「おじさん」批判は的外れ
http://blogs.yahoo.co.jp/halfjapankorea/33934263.html


独断と偏見だが、何だかんだで在日・ハーフコリアンのブログのほうが
そのへんのサイトよりも意義深いものが多く見受けられる。


古くは岩波書店と対決し、佐藤優氏を批判した金光翔氏とか。
http://watashinim.exblog.jp/

冷静に考えれば、日本社会のためを思えば、金氏のような
批判力のある人物こそメディアは取り上げるべきだろう。

どうも、古市が目立ったのは、宮台と同じく、メディアの貢献も
あるようで、それは今のメディアがどれだけクソかという試験紙でもある。
(もっとも内容は、宮台のほうが遥かに優れているのだが・・・)


・追追追追記

とはいえ、さすがに岩波や大月、青木書店等の出版社は
今のところ、古市に執筆を依頼していないようで、その点に関しては安心している。


結局、古市がこれから辿る道は宮台や東と同じ、ある一時期に
テレビや保守系雑誌にもてはやされる一過性のピン芸人的評論家ではなかろうか?


彼は西尾幹二や渡辺昇一のようなリーダーシップを取るタイプではないし、
冷静に考えれば、彼の売りは「若者」であること以外にない。

さすがに40を超えてもなお、若者を自称するわけにはいかないだろう。
実は、彼と同じような若者論でウケを誘った人間は左翼にもいる。
赤木智弘というのだが、彼も今はもう、時の人になっている。

なんだかんだで保守系論者も競争が激しいようだから、
彼も今のうちに政府と親密になるでもしない限りは、
過去の人として飼い主から捨てられるような気がする。
(意外とそういう人間は多い。右にも左にも)


第一、若者論にしたって、同世代に後藤和智という本格的な研究者がいるわけだから、
このジャンルで彼が生き残る道はないのではないだろうか?

というか、実際に古市が既に歴史改ざんに関与し始めているあたりで、
彼もまた自身の研究が既に終わっていることを自覚しているのではなかろうか?


この手の特定のグループを代表して読者やメディアの受けを狙う人物として、
姜尚中が想起されるが、彼は有名になる前から哲学者として、
実績を挙げているので、ブームが過ぎた今も健在である。

・・・が、古市の若者ビジネスは実績を挙げる前に始めているし、
その実績も同世代に強力な上位互換が存在するわけで・・・
政府や右翼の人間といっそうのコネクションをつけるよう、
日々両手が摩擦熱で炎がでるほどすりまくらない限り、
ある一定の段階で路頭に迷ってしまうのでは…?

(まぁ、この手の卑怯者はずるがしこく生き延びるんだけどね)