時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

ドネツク人民共和国議長のインタビュー記事

2014-05-09 00:35:36 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ウクライナから分離独立を4月7日に発表したドネツク州(ドネツク人民共和国)。
同国の議長がインタビューに応じてくれました。

以下、その記事を紹介いたします。

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―現在、住民投票の準備が急ピッチに進んでおり、
 すでに、中央選挙委員会が創設され、財源が見つかり、
 選挙人名簿が印刷されていますが、住民投票が実施された後はどうなるのですか?
  5月12日に生活が一変するのでしょうか? 隣人との関係をどのように築いていくのですか?
  まず第一に、住民投票を認めていないウクライナとの関係を?




隣人との関係はすでにあります。かねてから。今のドネツク共和国は
元のドネツク州です。ルガンスクそしてハリコフも私たちに続くでしょう。

(注: 3月以降、ウクライナ東部のハリコフ、ルガンスクの諸州では、
    ウクライナの連邦化や自治権拡大の住民投票を求める
    ロシア系住民の抗議行動が活発化している。)

いずれも共和国へ合流したがっていますから。
私たちは、ニコラエフやオデッサやヘルソンの人たちに対する暴力行動について知っており
やはり独自の国家体制を求めているルシン人(ウクライナ人)のことを耳にしており
住民投票における人々のあらゆる意思表示を尊重します。



―ドネツク共和国は4月7日にすでに宣言されているのに、さらに住民投票を実施する理由は?

 共和国の宣言に関する文書は、4月7日に署名され、ただちに発効しました。
 しかし、私たちは、人々が何を欲しているかをはっきり知るために住民投票を行います



―ウクライナとの関係はどうなりますか?
 食料の供給や石炭の購入といったさまざまな関係がありますが…。



経済関係が急に断たれることはありえません。
こちらへは年金や補助金が支給され、こちらからは税金や手数料が納付され、
今のところすべてが機能しています。私たちは、損害が生じないよう
一つのプログラムも停止しませんでした。けれども、何か事が起きれば、
この転換期に私たちを支援する人々がきっと現れることでしょう。
損害を被るのは、そうした関係を断絶しようとする者だけです。



―チラシには、「住民投票、それは、すべての収入が共和国に残ること!」
 というフレーズがあります。これはドンバス(ドネツ炭田)に収入が残る
 という意味でしょうが、ウクライナの政権が黙っていると思いますか?


すぐにそうなるわけではありません。
まず、票の集計が行われて住民投票の結果が公表され、
それから、検事や内務省や治安機関や裁判所の幹部の選任が行われます
私たちは、今年、治安・国防関係省庁のすべての長官の選挙任命制を保障します
その後、新たな議会選挙がかならず実施され、憲法が採択されます



―大統領選挙は?

大統領制については、どうなるかわかりません。
もしかすると、議会制共和国になるかもしれません。
それは、あれこれ議論しても意味がなく、人々が自ら決定することです。




―ウクライナの政権は、炭鉱は中央の補助を受けていると言っていますが、
 もしも石炭を買ってくれる人がいなくなったら、どうするつもりですか?



ご存じありませんか?炭鉱労働者たちは、
先日、西ウクライナとポーランドのシレジア地方の同業者たちへ公開書簡を送りましたが、
そこには、ウクライナの政権のそうした声明をめぐる騒ぎの真相が暴かれています。

イギリスドイツの政府は、社会の緊張を和らげるために、
これまで閉鎖されていた40~60の自国の炭鉱を再び開きつつあり、
自国の高い石炭のために市場を空けるべく、
シレジア地方、西ウクライナ、ドンバス(ドネツ炭田)の
炭鉱を閉鎖するようウクライナの政権に求めている
のです。


http://jp.rbth.com/politics/2014/04/29/48129.html
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イギリスとドイツは、どちらもウクライナ暫定政権を支援していますが、
その狙いが何となく見えてくるインタビュー記事だとは思いませんか?


この記事は、暫定政権に反対しているウクライナ民族もいて、
一連の内乱が、ロシア派とウクライナ派との争いというよりは、
地方と中央との間の政治や経済を巡る戦いであることを示しています。


朝日新聞に所属する特派員の偏向報道を取り上げたばかりですが、
現地にいるはずの記者は、なぜ、
ドネツク州の炭鉱が閉鎖されかけている
という重要な事実を知らせないのでしょう?



何度か言及しましたが、別に今の反対者はヤコヌヴィッチ大統領に
心酔していたわけではなく、もっとシンプルに、
自分たちの生活を守るために立ち上がっているわけです。


これは大変、重要な事実だと思います。
キャメロン(イギリス)やメルケル(ドイツ)の支持率稼ぎのために
ウクライナの炭鉱で働く人達が犠牲になるのかもしれないのですから。



加えて、「治安・国防関係省庁のすべての長官の選挙任命制を保障します」
という言葉も、現在の国防・治安の重職にネオナチがいて、
彼らは選挙によってではなく、ヤコヌヴィッチを国外へ追放した手柄によって
任命されているという事実を考慮すれば、かなり重い言葉だと言えるでしょう。



さて、このインタビュー記事が掲載されたほぼ同時期(4月28日)に、
次のような記事がアップされていました。

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ドネツク人民共和国幹部会共同代表デニス・プシリン氏は
24日記者団に対し、
「現在の状況では、ウクライナの西部と東部が
ともに認める大統領を選ぶなど不可能だ」と述べた。

指導部は遅くとも5月11日に自治共和国の主権に関する住民投票を行う計画であるという。
この日はルガンスク州でも住民投票が実施される。

(http://japanese.ruvr.ru/news/2014_04_24/271590658/)

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これはロシアの国営放送、「ロシアの声」のサイト記事ですが、
実はほぼ同じ内容を朝日新聞は次のように報道しています。


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ウクライナ東部で庁舎占拠を続ける同国の親ロシア派は8日、
事実上の独立を問う独自の「住民投票」を予定通り11日に行う考えを明らかにした。

住民投票をめぐっては7日にロシアのプーチン大統領が延期を要請。
親ロシア派が要請に応じるかどうかが注目されていた。

東部ドネツクで州政府庁舎を占拠し、
「『ドネツク人民共和国』政府代表」を自称するプシーリン氏が
8日の幹部との会合後に記者会見し、明らかにした。

親ロシア派は4月以来、ドネツク、ルガンスク両州の各地で行政庁舎を占拠。
11日の住民投票では、両州が「人民共和国」として自立することの是非を問うという。

(ドネツク=石田博士)
http://www.asahi.com/articles/ASG586G3ZG58UHBI024.html
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百歩譲って、ドネツク人民共和国を「自称」と表現するなら
わからなくもないのですが、仮にも同国の代表である人物に対して
「自称する」と書くのは、失礼ではないでしょうか?


これでは、あたかもドネツク人民共和国の本物の代表が他にいるように
受け取られると思うのですが、石田記者は、その人物を知っているのでしょうか?


彼らが抵抗する理由を書かずに、「各地で行政庁舎を占拠」と
わざわざ書き足して説明するのは、この騒乱を理解するために
必要なのでしょうか?私は逆に実像をぼかして虚像を広めているように思えます。

朝日新聞ウクライナ特派員の偏向報道

2014-05-09 00:01:54 | リビア・ウクライナ・南米・中東

当サイトで幾度も指摘したように、現在のウクライナ暫定政権は、
司法や国防(つまり軍事)などの重要な機関にネオナチの構成員が就いている
異常事態であって、これに反発したドネツク州が独立を発表(ドネツク人民共和国)、
クリミアやオデッサ、ハリコフ、ルガンスクなども暫定政権に抗議をし、
それぞれ独立、あるいはロシアへの併合を選択しています。

この間、「テロリストを排除する」という名目のもと、
スラヴァンスクに軍を派遣、攻撃を開始するという
ヤコヌヴィッチ前大統領すらしなかった弾圧を始めています


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スラヴャンスク自衛団より2日早朝、
ウクライナ軍による攻撃が開始されたとの報告が寄せられた。

自衛団広報担当がリア・ノーボスチに明かしたところによれば、
ウクライナ軍が複数の検問を同時に攻撃し始めた。

「ロシア24」テレビによれば、市上空にウクライナ軍のヘリが認められた。
間欠的にサイレンが鳴る。攻撃の開始を住民らに知らせているのである。
自衛団幹部によれば、地上部隊からも上空部隊からも銃砲が発せられている。

人的被害については報告されていない。


(参照 http://japanese.ruvr.ru/news/2014_05_02/271894706/)
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もちろん、こういう情報を日本の特派員も承知しているのですが、現政権は
粛清を行っているのではないのかという疑問が呈されることはありません。


たとえば、朝日新聞の記者とか・・・

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「敵意をあおるメディア」


テレビを見ると頭が痛い。基地局が占拠され、ロシアの放送に替わったせいだ。

戦闘服に覆面の珍奇な集団が「ナチに栄光を!」と唱える。
「ウクライナ政権支持の秘密のファシスト集団の映像を発見」というニュースだ。

ロシアのメディアは、親西欧路線のウクライナ政府はファシストの支援を受けると伝える。
だが、「インターネットで見つけた」とする映像の信頼度はどう調べたのだろう。


ロシアの介入に反対するデモ隊が襲われたときは「ファシストが西部から来て乱闘した」。
現場にいた私には、女性や子供連れの多い平和なデモ行進に突然、
親ロシア派の腕章を巻いた集団が襲いかかったとしか見えなかったが。

http://www.asahi.com/articles/ASG540HG0G53UHBI029.html

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頭が痛くなってくるのは、こちらのほうです。
ジュリー・ハイランド氏の論評を紹介します。


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アメリカが支援したウクライナ・クーデターにおけるファシストの関与を否定したり、
彼らの役割を、取るに足りない枝葉末節であるかのように描き出したりする、
政治的に悪質なマスコミのプロパガンダ攻勢が進行中だ。


~中略~


現実は公然と反ユダヤ主義、親ナチの政党がアメリカとヨーロッパ帝国主義の
ご厚意により、ヨーロッパの首都で国家権力の主導権を1945年以来初めて握ったのだ。

選挙で選ばれたわけではないウクライナ政府は、
アメリカが指名したアルセニー・ヤツェニュークを首班とし、
ファシストのスヴォボダ党から少なくとも6人の大臣が入閣した


~中略~

スヴォボダは、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を
打倒したマイダン抗議運動における主要政治勢力だった。
クーデターに突撃隊を提供した見返りに、彼らは重要な省庁の支配をまかされた。

スヴォボダの共同創設者アンドリー・パルビは、抗議行動では“治安司令官”として活動し、
準軍事組織ウクライナ民族アンサンブル・ウクライナ民族自己防衛(UNA-UNSO)を含む、
ファシストと極右民族主義者の同盟、右セクターによる攻撃を指揮した。

ヒトラーの武装親衛隊を模した制服を着た隊員達は、チェチェン、
グルジアやアフガニスタンで、ロシアと戦ったことを自慢している。

パルビーは、現在
国家安全保障・国防会議議長で、国防省と国軍を統括している
右セクターの指導者ドミトロ・ヤロシが彼の副官だ。

副首相オレクサンドル・シチも、オレフ・マフニツキー(検事総長)、
セルヒー・クヴィト(文部相)、アンドリー・マフニュク(環境相)や
イホル・シュヴァイコ(農相)等と同様、スヴォボダ指導者の一人だ

UNA-UNSOと関係していると報道されている他の人々として、
ドミトロ・ブラトフ(青年・スポーツ相)や、
政府の反腐敗委員会議長に任命された
“活動家”ジャーナリスト、テチヤーナ・チェルノヴォルがいる。


http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-daed.html
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木を見て森を見ずとは、このことでしょう。
ウクライナまでわざわざ取材に行っておきながら、
政府の要職にネオナチがいて、しかも、彼らが今回のクーデター、
欧米風にいうならば、革命の中心人物だったという肝心の事実を書かずに、
やれ映像の信頼性が低いだの、私が見たのとは違うと細かい部分にケチをつける。

天下の朝日新聞が、こういう文章を
サイトに掲載しても良いのでしょうか?



ところで、このリポートでは、デモ隊に乱入する親ロシア派のことが書かれていますが、
もしかすると、この記者はオデッサの虐殺を目撃していたのかもしれません。


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2日夕方オデッサのクリコヴォ・ポーレ広場にある労働組合会館で起きた火災は、
2か月前にキエフで起きた出来事を彷彿とさせるこの日の騒乱の悲劇的幕切れとなった。


民族主義グループの戦闘員や地元のサッカーチーム「ウリトラス」のファン達が
「統一ウクライナ」を合言葉に組織した無許可の行進は、
その後、クリコヴォ・ポーレ広場にテントを張り少し前から
抗議行動をしていた連邦制支持者達との対立に姿を変えた。

そして新しいウクライナの「革命的伝統」に従って、
バットによる殴り合い、投石、火炎瓶投げが始まった。


警察は、双方を引き離そうと試みたが、
その行動は消極的で、断固としたものではなかった。


その結果、所謂「右派セクター」の民族主義過激派らは、
テント村に火をつけ始めたため、キエフの現政権の政策に同意しない
連邦化支持の活動家達は労働組合会館に逃げ込んだ。

しかし過激主義者らは、そこにも火を放った。


そのため、ある人は生きたまま焼かれ、
別の人は発生した黒煙に巻かれ一酸化炭素中毒で命を失った。
炎から逃れようと、人々は窓から外に飛び降りた。

目撃者によれば、消防隊がようやく到着したのは、
火が出てから30分も経ってからの事だった。

(http://japanese.ruvr.ru/2014_05_03/271950269/)
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行進の最中に武装した親ロシア派が乱入したとの情報もありますから、
もしかすると、このことを言っているのかもしれません。


しかし、その後に何が起きたのかといいますと、
建物から脱出しようとした人間に殴打し、病院送りにしているわけです。
(行進者・乱入者、双方が重火器を所持していたとの情報がある)

(http://jp.rbth.com/politics/2014/05/08/48219.html)


これもまた、「木を見て森を見ず」であり、
先にどちらがやったかにこだわって、その後に起きた
建物に閉じ込めて焼き殺す(逃げてきた人間は殴り殺す)という
この事件で最も重点的に扱うべき内容に触れもしません。


特派員が何を思っているかは知りませんが、
この文章は結果的に現地での行き過ぎた民族主義を無視し、
ロシアを悪漢に仕立て上げる欧米の戦略に乗っかったものになっています。

これは、殺す側にとっては都合がよい報告だが、
殺された側にとってはたまったものじゃない。




テントを焼き払い、
建物に親ロシア派を追い込む
平和的デモ行進者の図。



朝日新聞が反共左翼であることは重々承知しているつもりでしたが、
それにしたって、この報道はありえないでしょう。

得てして、内戦とはどちらに非があるのか、はっきりしないものですが、
少なくともハッキリしていることは確かに伝える義務があるはずです。

朝日新聞の記者は、余所のメディアを小馬鹿にする暇があるならば、
自身の隔たった報道を猛省するべきです。

追記・
このオデッサの虐殺事件、朝日新聞は、「火災が起きた」と報じていました。
ちなみに、TBSニュースでは、ちゃんと放火したと報道しています。

書いた記者は、本記事で批判した方でした。喜田尚さんですか…覚えておきましょう。