時事解説「ディストピア」

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地に堕ちたか、岩波書店?

2013-12-29 22:12:29 | 反共左翼
岩波書店と言えば左派系出版社の代表格として認識されている
はずなのだが、細かく見ていくとアベノミクスを礼賛する
岩田規久男氏や農水省の役人で捕鯨推進派である小松正之氏、
小選挙区制や二大政党制の導入を力説した山口二郎氏といった、
「それはどうよ」とツッコミを入れたくなる人間に執筆させていて、
そこまで立派な出版社でもない。


もちろん吉見義彦先生が執筆した『従軍慰安婦』などの
新書ながら研究書としても利用できる本もある。

が、それはその業界全体の研究レベルが高いからであって、
実は岩波現代文庫から慰安婦制度を美化する元日本兵の
本を出版したりしていてスタンスが半端だったりする。

近年、同社の月刊誌である『世界』の質の低下が騒がれているが、
私自身、何度か読んだが確かに「質が悪いな」と感じさせられた。


例えば君が代斉唱問題だが、これを「良心の自由」だとかいう
憲法上の概念の問題に矮小しており、君が代の最大のキモである
「天皇への畏敬と国家忠誠の意思を見るデモンストレーション」
という側面が綺麗に抜け落ちている。正直、良心の自由と言われても
大半の人は「君が代ぐらい歌ってもいいだろ」と無視されて終わりだ。
(民主主義を国是とする国で個人崇拝が制度化されている問題点を無視している)


原発にしても事故が起きた途端、それまで全くノータッチだったくせに
関連本を量産するし、はっきり言って読者が買いたがる本を売っている。
(そういう点では集英社や講談社のような大手出版社と変わりない)


さて、この岩波書店、実は昔っから、
岩波新書で言えば青や黄版の時から
社会主義国を攻撃する本を売りつけていたのだが、
ここにきて何とまぁ、よりによって加藤哲郎氏に
日本の社会主義運動の歴史本を書かせたのである。正直驚いた。


加藤哲郎氏といえば、リビアのNATO爆撃を絶賛したり、
核保有を支持しただけで反米国家のベネズエラを誹謗したり、
共産党の宮本顕治氏が亡くなった時に大喜びしたり、
嘘だったと後で本人が自白した川上徹氏の共産党内部の
党員弾圧事件の本で、さもこの事件が真実であるかのように
あとがきで解説したりと、その辺の右翼よりもよっぽど右な男である。


なにせ非民主主義国(つまり非欧米主義国)の滅亡こそ
彼の望みであり、そのためならば
日常的に慰安婦や南京事件を否定し、
沖縄の集団自決を否定し、在日コリアンやアイヌ、
被差別といった社会的弱者を差別している
櫻井よし子をはじめとした極右勢力とつるんでしまうのだ。



想像できるだろうか?北朝鮮を中傷するためなら
日常的に戦争被害者をうそつき呼ばわりする本や雑誌を
刷りまくってる連中と協力関係を結んでしまう
のである。


拉致事件発覚後にこいつらがやったような
猛烈な北朝鮮バッシングの先に今日の北朝鮮脅威論が
構築され、同国への威嚇を兼ねて日本の軍国化が邁進されている。

加藤氏はそのことに対して
果たして責任を感じているのだろうか?


本人の言葉を引用しよう。


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消費税増税、生活保護切り下げ、TPP参加、
オスプレイ受け入れ、日本版NSC、そして特定秘密保護法強行制定・公布。
そのあとに集団的自衛権、武器輸出3原則緩和、共謀罪、
「愛国」教育強制、原発再稼働・原発輸出と、
レールが敷かれています。

中国・韓国・北朝鮮との国際関係も、
硬直どころかいっそう不安定になって、
2014年が、厳しい年になることを予感させます


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不安定にさせたのは
同氏が極右と一緒になって
「北朝鮮は人権を侵害するひどい国なんだ!
 とっても悪い国なんだ!危ない国なんだ!
 共産主義国は自由がないんだ!」
と喧伝した結果ではないだろうか……



正直、私は最近の軍国化に加藤氏は手を叩いて
「これで北朝鮮をぶっ壊せる!」と大喜びしてるだろうなと
本気で思っていた。まさか上のコメントは同氏のギャグなのか?


平和を望むと言いつつ争いの種をまき右傾化を進める。
本末転倒としか言いようがない。


そういう面があるからこそ、私は、彼が一般的に
「良心的な左派・リベラル」と認識されているにも関わらず、
ゲッベルスや大川周明よりも
姑息で卑怯で無責任
だと思ってしまうのだ。


さて、こういう御仁が書く社会主義運動史だから
中身なんて読むまでもなく、共産党をボロクソに叩き
社会党を讃美する内容になってんだろうと思う。

もともと、彼は原発第1号機の稼働以前から
原発建設に反対し続けている共産党を原発支持派と
事実をねつ造するわ、百歩譲っても真偽は不明である
宮本顕治の殺人疑惑を確定事項として話を進めるわと
けっこう強引な意見を述べてきた人物なのだから。


この明らかな反共本の紹介文は次のようになっている。

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なぜ今,社会主義の歴史を辿るのでしょうか.
著者は,社会主義こそが,
フランス革命の「自由・平等・友愛」理念を継承し,
とりわけその「平等・友愛」理念を実現しようとした
思想・運動の試みだったと言います.

もちろんその試みは歴史的な試練の中で浮き沈みを繰り返しつつ,
冷戦の終結とともに「過去の遺物」になったように思われました.

けれども,グローバル化した資本主義によってもたらされた
格差・貧困への対抗や新たな民主化闘争――
「ウォール街を占拠せよ」や「ジャスミン革命」など――は,
かつての社会主義がもっていた「平等・友愛」理念を
どこか彷彿とさせるものがありはしないでしょうか.

本書は,そのような意味での社会主義の日本における
軌跡を,近代化・経済成長と原爆・原発をめぐる問題を
通して浮かび上がらせます.

社会主義は,原子力にいかに向き合ってきたのか.
平和を求めて社会変革を願う社会科学が
3.11以後の様々な社会問題と切り結ぶためには,
この問題を避けては通れないのではないか.

著者の語りは読者にそう問いかけます.

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とんだ紹介文詐欺である。

長年に渡って共産党攻撃を執拗に続けてきた
加藤氏が今さら社会主義を讃美するはずがない。


岩波書店はどうしていい加減な反共本を好んで
出版するくせに、左翼のポーズをとるのだろうか?

腹の中では反共のくせに
気持ち悪いフォローはやめてほしい。

正直なところ、今の岩波書店は
自民党左派といったレベルで状況に応じて右翼とつるんでいる。
冷戦終結以降、徐々にだが日本は右傾化してきたが、
それは反共ヒステリーの激化と表裏一体のものだ。


近年の日本の左翼は異常にコミュニスム
および共産主義国、あるいはその支持者に憎しみをぶつけている。

「日本は右傾化」したと書いたが、これは正確には
もともと左翼だった人間が急激に右傾化してきた」である。



皮肉なことに保守派と一致して反共ヒステリーを
叫んでいるうちに、妙な連帯感ができあがって、部分的な方策では
反発しあっても全体を通してみると、この国を同じ方向に誘導している。
(つまり反共の当然の帰結としての軍事化、国家主義の隆盛)


これは別に日本に限った話ではない。
だが、アメリカ研究者として言わせてもらうと、
アメリカには本国への批判をこめて旧・現社会主義国の再評価を行う
学者や政治家、知識人がわりといる。そういう人物の意見はほとんど
翻訳されないので、一般の日本人には伝わってこない。

一方、我が国の知識人にあたる人々は、自分の手で自分の首を絞めており、
さらにはそれに気づいていない。こういう点を見るとやっぱりというか、さすがというか、
改めて戦後日本の左翼は当初から反共主義から脱却しきれてなく、
いつ右傾化しても不思議でない状態だった
のだなと痛感してしまった次第である。