重箱の隅つつきは、時として読解、解釈の敵となりうる

2012-02-11 23:28:31 | 時事関連
「重箱の隅つつき」。ほとんど誰も気づかないような、ものの細部に目を付けることをそう呼びますが、この言葉は、大体の場合、
「文脈をおよそ考慮に入れず、個々の細部ばかりをあげつらう。」
といった、マイナスイメージの使われ方をされることが多いです。

もちろん、私は法学部を出ていますので、あらかじめことわっておきますが、詳細な語句に注目し、その意味を解釈する能力は、私達にとって必要不可欠なものであると考えています。ですが、問題は、その「細部への注目」が度を越えて、その「細部」の文脈上の位置づけがどのようなものであるかが忘れ去られているとき。実に高度な能力であるがゆえに、適正な扱い方が必要なのです。

たとえば、あなたは国会議員であると仮定したとき。とある法案が、あなたの所属する委員会(すべての国会議員は、何らかの委員会に属します。これちょっとした豆知識)で審議対象になり、あなたはその法案の条文について解釈し、委員会で質問をしなければなりません。そのときあなたがとる行動とは、
「(1)条文の一言一句、すみずみまで目を通す(2)その文言の字義を調べる(3)立法目的が何かを考える(4)そして、その立法目的に適っているかどうかを考える」
この4プロセスがあってはじめて、法(案)解釈といえるのです。弁護士が最高裁判所に違憲審査請求を行うときも、同じことが行われます。このように、しかるべき目的をもって行う分には、「重箱の隅つつき」はきわめてまっとうな行為といえます。

ところが、こんな事例ではどうでしょうか。実際にあった事例です。
「とある代議士が、地方の講演会で「女は産む機械。」と発言した。女性を馬鹿にしている。けしからん。」
という報道。
この内容にも切り貼り、脚色がされており、「女は産む機械。」という言葉自体が、実際にこの代議士さんが発信されたものと異なるそうですが、あえてこの点については深く追及しません。また、実際の講演内容については、「産む機械」をGoogle検索して頂ければお分かり頂けることと思いますので、詳細は割愛しますが、いずれにせよ、「産む機械」というキーワードにのみ着目して、講演内容や文脈に注目せず、この代議士さんを徹底的に非難、攻撃した報道姿勢は、語句の解釈として適当とはいえないし、読解力にも難があるというべきです。

似たような例としては、みんなが盛り上がっている場で出てきた話が、事実と違った場合。
A「みんなで、アイドルの●●の画像、集めてるんですよ~」
B「いやいや、それは違うだろ…オレが集めてるんだよ」
普通なら、その場で笑って見過ごして済む話だと思います。ところが、その日の夜。Aさんは、先輩のBさんからこんなメールを受け取ることになります。
「A君、ウソはいかんぜよ!」
たとえ事実と違ったとしても、それはその場を盛り上げるための話題です。それに対して、「事実と違う!」そのただ一点にばかり着目して、かくのごとく目くじらを立てるのは、あまりにも馬鹿馬鹿しいと思いませんか?事例は違えど、「産む機械」と騒ぎ立てた人々と、読解力のレベルは変わらないものといえます。

そして、実のところ、この程度の読解力しか持たない人々が、報道を牛耳り、教育現場で大手を振って闊歩しているということが、若手世代の読解力を落とす原因を生んでいるのではないかと私は思います。