375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●天才歌姫!ジャッキー・エヴァンコ特集(2) 『DREAM WITH ME』

2014年02月02日 | ジャッキー・エヴァンコ


ジャッキー・エヴァンコ 『DREAM WITH ME
(2011年11月12日発売) SICP-3218

収録曲 01.WHEN YOU WISH UPON A STAR (星に願いを) 02.NELLA FANTASIA (ネッラ・ファンタジア) 03.A MOTHER'S PRAYER (祈り) with スーザン・ボイル 04.NESSUN DORMA (誰も寝てはならぬ~歌劇トゥーランドットより) 05.ANGEL (エンジェル) 06.O MIO BABBINO CARO (私のお父さん~歌劇ジャンニ・スキッキより) 07.SOMEWHERE (サムホエア~ミュージカルウエストサイド・ストーリーよりwith バーブラ・ストライサンド 08.ALL I ASK OF YOU (オール・アイ・アスク・オブ・ユー~ミュージカルオペラ座の怪人より) 09.OMBRA MAI FU (オンブラ・マイ・フ~歌劇セルセより) 10.LOVERS (ラヴァーズ) 11.IMAGINER (イマジネ) 12.THE LORD'S PRAYER (主の祈り) 13.TO BELIEVE (トゥ・ビリーヴ) 14.DREAM WITH ME (ドリーム・ウィズ・ミー)


10歳のクリスマス・シーズンに発売されたメジャー・レーベルでの初アルバム『OH HOLLY NIGHT』(4曲+DVD付きのミニ・アルバム)が史上最年少のミリオンセラーを記録し、天才歌姫としての人気を不動のものとしたジャッキー・エヴァンコは、翌11歳のクリスマス・シーズンに向けて、いよいよ2枚目のアルバムを準備することになった。しかも、こちらは14曲収録で初のフル・アルバムである。

11歳となった2011年10月には、新しいアルバムのプロモーションのため初来日し、TV番組で天使の歌声を披露。これがきっかけで、日本でもファン層が拡大することになった。

そして同年11月に待望の新アルバム『DREAM WITH ME』が発売。ビルボード・アルバムチャートで初登場2位、クラシック部門では1位を記録し、前作に続いて瞬く間にミリオンに達する大ヒットとなったのである。

これはほんとうに素晴らしいアルバムだ。何よりも選曲が良く、11歳当時のジャッキーの持ち味である天使のように透明な高音の伸びを十二分に引き出している。もしかしたら、二度とできないような奇跡かもしれない。数あるクラシカル・クロスオーバー系のアルバムの中でも、本田美奈子の『AVE MARIA』や『時』と並ぶのではなかろうか、と思えるような大傑作だと思う。

・・・と、ここまで書いて手が止まった。
いくら天才歌姫とはいえ、11歳の時点で「あの本田美奈子と並ぶ」と書いてしまっていいのだろうか?

そこで、改めて2人の共通する収録曲を聴き比べてみることにした。 
 

(1)NESSUN DORMA (誰も寝てはならぬ~歌劇『トゥーランドット』より)

ジャッキーの表現はイタリア・オペラ独特の巻き舌も巧みに駆使し、実に堂々としたものだ。しかも一般のオペラ歌手にありがちな押しつけがましさは全くなく、どこまでもピュアで、力強さもある。最後の「星は沈む!暁はわれに勝つ!」のあたりなど、すごい迫力で、とても11歳の少女が歌っているとは思えない。それに対して本田美奈子は日本語訳。オペラ的な編曲ではない。しかし、十分にドラマを感じさせる。微妙な息遣いを駆使しての感情表現など、さすがだと思う。このあたりは長年ミュージカルなどの舞台を経験している美奈子のほうに一日の長はありそうだ。力強さにも欠けてはいない。
 

(2)O MIO BABBINO CARO (私のお父さん~歌劇『ジャンニ・スキッキ』より)

ジャッキーの得意とするイタリア・オペラの曲目。恋を経験しているとは思えない11歳の少女が、正攻法で堂々と一途な恋を表現する。聴かせどころで思い切りロングトーンを伸ばすところなど、千両役者の風格さえ感じさせるほどだ。 それに対して本田美奈子はこちらも日本語訳。しかも岩谷時子による作詞が素晴らしく、原曲にはない「お父さんへの感謝といたわり」が加えられている。美奈子の歌唱もそちらの線に沿った繊細な感情表現に比重を置いているので、原曲にはない感動があり、その点は他のいかなるクロスオーバー歌手も及ばないところであろう。


・・・というわけで、やはり現時点ではわずかに本田美奈子のほうに分がありそうだが、ジャッキーがこのまま経験を重ねていけば、遠からず互角のラインに届く潜在能力があるのは間違いないところだ。そもそも「聴き比べてみよう」と思わせること自体が凄い。今まで、そこまで思わせる歌手が現われたことがなかったのだから・・・

ジャッキーは、歌声だけを聴くと、すでに成人に達しているようにも思える。「A MOTHER'S PRAYER (祈り)」は奇跡の歌姫とも呼ばれるスーザン・ボイルとのデュエットだが、録音当時50歳のスーザンよりも11歳のジャッキーのほうが「大人の声」に聴こえてしまう。歌っていない普段着の彼女は決して大人びた少女とは思えないのに、歌い始めると他の魂が入り込んだように声が変わってしまうというのは、ほんとうに不思議である。

この分野を代表すると言ってもいい名盤だけに、収録曲はどれも甲乙付けがたい出来なのだが、個人的にはサラ・マクラクランの「ANGEL (エンジェル)」と、ララ・ファビアンの「IMAGINER (イマジネ)」に強く心を動かされた。特に後者はまるでラフマニノフそのもののピアノ・ソロが効果的に用いられているところが微笑ましい。

あと、アルバムの最後のほうに収録されたオリジナル(?)の2曲も感動的だ。ジャッキー自身の語りも入る「TO BELIEVE (トゥ・ビリーヴ)」の作者はマット・エヴァンコなる無名のアーティストとなっているが、どうやらジャッキーの叔父らしい。そういえばジャッキーの両親もそれぞれ楽器を弾けるし、なかなかの音楽一家のようだ。エヴァンコという苗字から察するにもともとはロシア・東欧系の血筋が流れているようで、そのあたりがクラシカルで情緒のある音楽性に起因しているのかもしれない。

アルバムの最後を飾る「DREAM WITH ME (ドリーム・ウィズ・ミー)」には、ジャッキー自身も作曲者に名を連ねている。これだけの才能の持ち主であれば、ゆくゆくは自作の曲を出しても不思議ではないだろう。最近のインタビュー記事では、将来は大学に進学して哲学を学び、曲作りに役立てたいというようなことも話していた。家庭環境もしっかりしていて問題なさそうだし、未来に向けての具体的な青写真もある。きっと期待通り、世界の歌姫に成長してくれるに違いない。 
 



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