375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●LIVE体験記(5) 八代亜紀 ニューヨーク・ジャズ・ライヴ @BIRDLAND

2013年04月01日 | LIVE体験記



3月27日(水曜日)、ニューヨークのジャズクラブ「BIRDLAND」にて、八代亜紀のジャズライヴを観る。
八代亜紀は30年前にアメリカ西海岸でのツアーは経験しているということだが、ニューヨークではこれが初舞台。
地元出身の伝説的なヴォーカリスト、ヘレン・メリルの登場も予定されている歴史的なイベントである。

実を言うと、昨年10月、自身初のジャズCD『夜のアルバム』(ライヴ盤『八代亜紀と素敵な紳士の音楽会』も含めると2枚目)が世界75ヶ国で発売された時、もしかしたら近い将来ニューヨーク公演があるかもしれない、という予感があった。なにしろニューヨークはジャズの本場でもあるし、もともとジャズ・シンガーとしてキャリアを出発した八代亜紀にとってはニューヨークのジャズクラブで歌うことが長年の夢であるに違いないと思っていたからである。

そして、その夢は思いがけない早さで実現することになった。今年の1月10日前後のウェブニュースで八代亜紀のニューヨーク公演が決定したというアナウンスがあり、2月下旬には「BIRDLAND」の公式サイトでチケットの発売も開始された。夜7時と9時30分の2ステージのうち、特別ゲスト、ヘレン・メリルが登場するのは7時のみということだったので、確実に観に行けるように有給休暇も取り、6時の開場時間から美味しい南部料理(クレオールのミートローフ)を楽しみながら、世紀のひとときを待った。

会場は8割くらいは現地在住の日本人だったが、外国人の顔も意外に多く見かけた。八代亜紀のファンというよりは、おそらくゲストのヘレン・メリルが目当てだったのであろう。

やがて開演時間となり、盛大な拍手に迎えられて、藍色のロングドレスに身を包んだ八代亜紀が登場。
ピアノ、ベース、ギター、ドラムスの伴奏がゆっくりと流れ、まずはお馴染みのヒット曲「雨の慕情」でライヴは始まった。
その瞬間、会場には懐かしい昭和50年代の空気が流れる。ニューヨークに来て長い年月を経た人たちの中には、日本といえばその時代のイメージで止まっている人も多い。かく言う筆者も似たようなもので、昭和が終わってからの日本は、もはや自分の慣れ親しんだ日本とは別の国のように思えるほどである。

続いて「FLY ME TO THE MOON」 、「再会」の2曲が終わったところでバンドの紹介。八代亜紀のMCは簡単なフレーズは英語で、少し長いセリフは同時通訳に任せているので、外国人にも十分楽しめそうである。

「ジャニー・ギター」 、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」のあと、ゲスト・ヴァイオリニストのレジーナ・カーターが登場。印象的なソロ・ヴァイオリンの絡む「枯葉」、さらにはゲストの男性ヴォーカリスト、カート・エリングが加わって「スウェイ」のデュエットとなる。この曲は途中から日本語の歌詞になるのだが、カートも負けじと流暢な日本語で歌いこなし、場内の喝采を浴びていた。

レジーナとカートが退場すると、いよいよ本日のもうひとりの主役であるヘレン・メリルが登場。
「ニューヨークのため息」とも呼ばれている伝説的なジャズ・シンガーである。

ヘレンの年齢には諸説があり、wikiによれば1930年7月21日生まれの82歳。しかし他のサイトでは1920年5月23日生まれの92歳という信じられない年齢で紹介されている。この年齢で他人の手を借りずに歩くことができるし、声もちゃんと出る。それどころかソロで歌った「Wild is The Winds」でのブレスの伸びを聞いた限りでは、心肺機能にも全く衰えは感じられず、このまま行けば100歳まで歌えるのではないか、とさえ思えてくるほどである。

そのヘレン・メリルと「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」と「五木の子守唄」をデュエット。
さすがに一緒に歌った八代亜紀も「夢のような1日です・・・」と感慨深げだった。

そしてライヴの最後を飾るのは、キャリア最大のヒット曲「舟唄」。
これは「ボートソング」ではなく、愛する人を残して海を旅する男の唄です、という八代亜紀のMC通り、堂々たる男のジャズ演歌となって、あの懐かしい昭和50年代の日本が再びよみがえった。

このあとアンコール2曲(1曲目は別れをテーマにした歌謡演歌。2曲目は「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」)で締めくくり、文字通り一期一会のライヴは幕を閉じた。少なくとも、ジャズと演歌は意外に親近性のある分野であることが実感できた貴重なライヴ体験となった。

浪曲師だった八代亜紀の父親は、こう言ったらしい。
浪曲にジャズの要素を加えたものが演歌であると。
 


★ライヴを前にして日系コミュニティーの地元紙に掲載されたインタビュー記事。


★演奏中の写真撮影は禁じられていたので、共同通信のニュース記事から拝借。


★こちらも共同通信ニュース記事の写真。年齢を感じさせないヘレン・メリル(左側)の歌唱。
もちろん、八代亜紀のほうも還暦を過ぎているとは思えない美貌である。 

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