375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(2) グラズノフ バレエ音楽「四季」

2007年01月09日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

グラズノフ バレエ音楽「四季」(作品67)、ヴァイオリン協奏曲(作品82)
ネーメ・ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル・オーケストラ
録音:1987年 (Chandos CHAN 8596)
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グラズノフ バレエ音楽「四季」(作品67)、演奏会用ワルツ第1番(作品47)、第2番(作品51)
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮 フィルハーモニア・オーケストラ
録音:1977年 (EMI Classics TOCE 59173)
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クラシック音楽の新しい地平を開く(?)「名曲夜話シリーズ」の第2回は、19世紀ロシアの作曲家グラズノフのバレエ音楽「四季」を紹介しよう。

ロシアのバレエ音楽と言えば、一般的にはチャイコフスキーの3大バレエが有名で、その後は、一気にストラヴィンスキーに飛んでしまうことが多いのだが、このグラズノフの「四季」は、チャイコフスキーとストラヴィンスキーの中間世代を代表するバレエ音楽の名作である。初演は、1900年という世紀の節目。だが・・・、これが意外に知られていない。そもそも、グラズノフという名前すら、学校の音楽史の授業に出てこないのではないだろうか。クラシック音楽に興味のない人は、おそらく、彼の名前など、一生知らずに終わるであろう。

アレクサンドル・コンスタンティノヴィッチ・グラズノフ。1865年8月10日、ペテルスブルグで生まれる。11歳から作曲を始め、14歳でロシア国民学派の大作曲家リムスキー=コルサコフに弟子入りし、16歳で早くも自作の交響曲第1番を学生服で指揮するという早熟ぶりだった。後には、ペテルスブルグ音楽院の教授に任命され、ショスタコヴィッチらを育てるなど、母国の音楽の発展に大きく貢献する。そして、1936年3月21日、ロシア革命後の移住先パリ郊外にて、70歳の生涯を終えるのである。

こうして見ると立派な経歴なのだが、実は、40歳台の半ば頃から作曲にいきずまり、アルコール中毒になってしまったともいわれる。さらに、最大の汚点は、1897年、ラフマニノフの交響曲第1番の初演に失敗し、作曲者を失意のどん底に落とす張本人になってしまったことかもしれない。このあたりが、今ひとつメジャーの作曲家として認められるのに、障害となっているのでは・・・と、思ったりもする。

しかしながら、このバレエ音楽「四季」だけは、汚名挽回の名作であり、聴かないでおくのはもったいない。わずか30~40分のあいだに、幻想味あふれる美しいメロディーが、次々と、おいしい御馳走のように運ばれてくるのである。

グラズノフの「四季」は、1幕4場(冬・春・夏・秋)で構成されている。ヴィヴァルディの同名のヴァイオリン協奏曲「四季」のような、春・夏・秋・冬の順番ではない。

ロシアの四季は、まず、果てつくような冬で始まる。ここでは、霜・氷・霰(あられ)・雪という4つの変奏曲が順に登場し、凍りついた雪原の情景をメルヘンチックに描写していく。そして、花と小鳥がダンスを踊る、つかの間の春を経て、ようやく、生命が躍動する夏が来る。矢車菊とケシのワルツ、舟歌が聴こえ、葦笛が響き、麦の穂・森の精らが、ダンスの輪に加わる。そして、「四季」のクライマックス、収穫の秋へと盛り上がっていくのだ。この秋の「バッカナール」の部分は、誰でも、一度はどこかで耳にしたことがあるのではなかろうか。

この曲を初めて聴いたのは、ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル・オーケストラのCDだった。レコード店で「四季」のCDを探していると、たまたま、このきれいなジャケットが目を惹いたというのが、購入した動機だったが、これが、大当たりだった。色彩豊かなバレエの情景が浮かんでくるような、生き生きとした名演で、何度聴いても魅了されてしまうのである。

このヤルヴィ盤があれば、とりあえず十分であるとは思うが、もう一枚、違う傾向のCDを選ぶとすれば、やはり大御所スヴェトラーノフの出番である。

スヴェトラーノフの演奏する「四季」は、とてもテンポが遅い。ヤルヴィの35分30秒に対して、42分もかけて、じっくりと歌い込んでいる。同じロシアでも、シベリアの豪雪地帯を思わせるような、途方もない雪の深さである。春から夏になっても、雪は溶け切らず、やがて、壮大な秋の収穫祭を迎えるのである。

このスヴェトラーノフ盤は、イギリスのオケを振っているためか、派手な爆演をあえて封印し、味わいの深さで勝負しているかのようだ。

グラズノフにも、特別のファンがいる。「実力があるのに、十分認められていない」という思いからの判官びいき(?)は、なんとなく理解できる気もする。最後に、グラズノフの専門サイトを一つ紹介しておこう。

グラズノフのホームページ
管理人「ひげっち」さんが運営する、グラズノフの人と作品を紹介するホームページ。掲示板で情報交換ができます。