にざかな酒店

殺戮の言霊五話

あー、ちょっと続けてアップし過ぎですが、今回、一発目から犯人が名乗っております。
今までの話読み飛ばし注意ですので。
ちなみに扉絵はまたなーーーんも関係ありません。っていうか中身がえぐいので扉絵だけでもちょっとせくすぃーにしてみました。という、かけらほどの良心です。まったく素敵な展開ではありませんので。っていうか、犯人がえんえん言い訳してるだけの回ですので。
では続きどうぞ。

殺戮の言霊五話

私の名前は、三和日菜(みつわ ひな)。
まだ誰も私の名前を聞いた事がないだろうが、願いの木事件の、犯人だ。
どこから話せばいいだろう…えっと、私が入学式で文月さんを見たときあたりだろうか。そう、あの入学式。私の近くにはやたらと背の高い男子がいた。その男子が誰かと話しているのを、ちらりと横目で見た時、彼女が目に入った。
長い黒髪のツインテールの印象的なお嬢様、といった感じだった。
今時、あんな綺麗な黒髪見ない。
だけど彼女はどこか静んだ気品だった。どこにも開けていない扉を連想した。
入学してしばらくの間、何人かの人間が文月さんに話しかけているのをみたけれど、文月さんはたいてい、「ええ、」とか「はい」とか控えめで主張がない。
そこが、ちょっと他のものとの境界をより明確にしていて、ちょっと悪い女の子たちは陰口の的にしだした。
私は物足りなかった。
悪い女の子たちがもっといじめてくれたら、逆に助ける役に回る事ができて、彼女と仲良くなれる。あの文月さんから、尊敬のまなざしで見られる事だってできるんだ。そこで、最初はさりげなく、陰口軍団にまじって「それって言い過ぎなんじゃないの?」とかかばうポーズを見せた。
だけど、なんだか文月さんの反応が、思ってたのと違う。
かげりがより増した。
どうしてあなたは私の思うように反応してくれないの?
どうして?
そこで、考えたのが願いの木だった。
私は能力を使った事がなかったけれど、さすがの文月さんも能力を使えば解るだろう。文月さんの能力で、敵の願いを叶えた。それも、変な方向に。
能力を使われたことには気づいたようだけれど、文月さんは私だと特定できなかったようだ。私ではなく、皆月君に相談した。
そういうつもりなら、手段は選ばない。
文月さんへの陰口もエスカレートしたけれど、そうなれば一部は味方だって現れた。味方と言っても、解りやすく味方はしない。だけど、敵をうまく牽制していた。
そこで、敵が仲間割れする願いをしぼって叶えることにした。
もっともっと、私の願いを叶えてほしかった。
悪いものは、さばかれるべきだし。人の悪口はいったら自分に返ってくるっていうでしょう。あくまで、私は増幅しただけにすぎない。皆本当は思った通りに行動しているから。


でも、そろそろ能力を使うのはやめなきゃ。
皆月君に特定されたら、能力をとりあげられる―――楽しみが減る。
人の嫌な願いがかなってもっともっと憎み合えば、もっと面白い。
「ふーん、そりゃ、自分への殺意おぼえてねーな」
唐突に、声が降ってきた。
「え?」
それと同時に、私の制服のおなかの部分の布が、不自然にちぎれた。いや、制服だけでない。中身も。
痛い、痛いじゃない、熱い。
叫びがひりでていたはずだが、喉も切り裂かれた。血、血の、鉄が体から燃えながらふきだす。喉にあてた指はもう赤いぬめりしか感じない。どれだけ体をちぢこめても、吹き出るものは変わらない。
これじゃあ、死ぬ―――。
「まったく、お前がめちゃくちゃしてくれたおかげで、やっと実体化できたのに、俺の一番の楽しみ先に奪うつもりだったなんてよ」
あ、あなたは―――当然言おうとしても声なんてでない。
人間じゃない。人間の形の影。
「小夜香もあいつも、最終的には俺が殺す予定なんだから、お前はここで死んでな。じゃな」
誰か、確認する前に、命のろうそくはつきた。
私の話は、これでおしまい。
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