にざかな酒店

正義の殺人第二話

と、いうわけで第二話。
タイトルに思いっきり殺人とついてますが、これはあくまでイメージ上で、実際は殺人起こってません。
そういうシリーズです…。
というわけでつづきでどうぞ。
正義の殺人第二話

夜の公園。寒いさっむいふゆ。そして、水に氷。鳥野浩太は叫んだ。
「何がアートだ、ばっかやろーーー!!」
ばっかやろー。やろー、ろー。
なんてむなしいやまびこだろう。
彼は、アートの集団に水をかけられたのだった。

「さあっぶぶぶぶぶ」
バイト先の塾のストーブ前に陣取っていても、震えがとれない鳥野はとりあえずそこの自販機で貴志美諒子が買ってきたこんポタージュを頬にあてながら言葉らしい言葉の出ないまま数十分をすごした。
「まったく、それにしてもはた迷惑だねー。氷のアートだなんて」
「だいったいアートってもんははた迷惑なもんだよ。俺はイルミネーションってのも理解できんね。暗いもんを暗いままでよしとしないことに現代の病巣を感じるよ!!」
「………」
自分の分にも買って来たポタージュ缶を口に当てながら、諒子は考え込む。
彼女のことだから考え込んだふりかもしれないが。
「明るいからいいってもんでもないだろうが」
「でも、寒いから光が綺麗に見えるんでしょ?空気がきれいなんだよ、冬は」
「っていってもなあ…あーさぶ」
寒いと言いながら鳥野がストーブ前を離れようとするので、諒子は「あーもうちょっとストーブ前にいなよー」と彼を制止した。
「あんまりストーブ前にいると帰れないだろ」
「水かけられたのに何言ってるのー。乾くまでいてなさいって」
「たって、もう良い時間だよ」
「トリノ君は真面目だなあもう。」
むー、と諒子はふくれる。
「んーじゃ、トリノ君はこれいかないね?」
ちろり、と見せられた券。
「ん?なんだそれは」
「もらったんだよ、プラネタリウムの券、二名様ご案内。アート嫌いなんでしょ」
「プラネタリウム?行くぞ、俺は」
鳥野は即座に言った。
「なんで?」
「そりゃ、だって…」
プラネタリウムはアートじゃねーもん。
というのを、説明するのにはどうすればいいのかと考えつつ、くちごもる。
「変な犯人が出る前から、空にいるもんだからな、星は」
諒子は心底奇妙な顔をした。
「それ、よくわからない」
「そっか、ま、行くぞ」
「ならいいけど」
ところで、さっきの公園、また通るんだけどねー、と諒子はいっそう意地悪な顔をした。
「寒さに負けず、変人に負けず、アートに負けず」
「何それ」
「人生の教訓。何にせよ、負けちゃ駄目だ」
「つよいなあ…ま、ほどほどにね」
「さっきの公園、見事に凍りついてるだろうな」
「冬だからね」
「アートって頭おかしいな」
「一部だけでしょ」
なんか諒子も今日は冷たいような気がするな。気のせいか。
やっぱり冷たい、冬の風に、星の光。
「光、か…」
アートなんて、やっぱり嫌いだけどな。思ったそのとき、
寒い公園に、街灯の光に照らされた、猫がするりと抜けていった。
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