にざかな酒店

殺戮の言霊第四話

っていうか、だいぶきれぎれでやってましたが、最初に言ってた話を忘れてかいてたわけじゃないんです第四話。今回の扉絵もあんまり内容と関係ありません。…いや、なんかもう。あれですね。
いいわけおいといて、続きどうぞ。

殺戮の言霊第四話

二時限目の休憩時間、ショックからいまいち立ち直れてはいないものの、顔はだいたいもとに戻ってきた皆月は、あれ、と廊下をみた。
普段、学校にいない人がいる。
しかもかなり目立つ人が。
俺何か忘れ物でもしてたかな、それにしても彼女が来る訳がないんだけど。
隣に座っていた文月が、気づくと席をたったので、それでようやく話がつかめた。俺は聞かない方がいい話か。

彼女たちは、するりと廊下を渡って人気のない、旧音楽室へといった。
「呼ぶ前に解るとは、なかなか話が早い。」
「釘をさしにきたんですね?私が力を使わないようにって」
「展開によっては、敵に回るかもしれんからな。それはいっておこう。…ただ、私が敵にまわったといっても、いきなり町全部が敵に回るとはならないから、そこは安心ポイントだ。」
ふう、と魅厘は嘆息した。
「能力者はみな一回は力を使うものだ。それが利己的なものであるか、それとも他者のために使うか、の違いだけでな。文月さんは、多分後者だろう」
何を根拠にそう思うのか、文月は問いただしたくなったが、ここで瞳にうつす光を違えてはいけない。
「それをいいに来たんですか、わざわざ」
「誰かのために、この化け物を相手にすることになっても、力を使うか、と―――」
こつん、と物音がした。
「あら、ばれちゃったわね」
出てきたのは、藤村だった。
「あなたは―――」
「皆月の当主でしょう?聞きたい事があるのよ」
「だから、言っただろう。貴志美さんは幸せにやってるはずだと」
「それでは納得できないから聞いてるんじゃない」
「物証を見せるわけにもいかんしな…」
ぶつぶつ、と下を向く魅厘だった。
「なんで、みんなから記憶を奪う必要があったのか、ってことよ」
「その辺が説明するとものすごくややこしいんだ」
「外に行っただけで、なんでそういうことになるのよ」
なんだか込み入ってきたので、私ここで知らんふりしてあっち行こうかしら、とちょっと文月は考えた。
「そうね、あなたが敵に回るって言うなら、私は彼女の味方をするわ。」
と、その時藤村から意外な言葉が出てきたので耳を疑った。
「え、で、でも私―――」
「嫌なの?」
「いや、いや、っていうか、友達ってそんなものじゃないと―――」
もごもごと説明しようとする文月とは裏腹に、魅厘には少し余裕が戻った。
「いいんじゃないか?それで。その展開の方が、暴走の危険性も薄まるだろうし」
ほらね、と藤村は胸をはった。
「どのみち私だって好かれ系キャラじゃないもの。似た者同士で仲良くしましょう」
といいつつ、魅厘ににらみをきかせるのも忘れない。
「いつか、ちゃんと説明ききますからね」
割とすぱすぱ物をいうのは好感だが、それにしたってちょっと強引すぎじゃないかしら、と文月は怪談のネタにされている音楽室の天井を仰いだ。

「ん、だからよ。なんか皆言う事ややることが極端になってきてるだろ?これが、その願いの木の効用じゃねーかと思ってよ」
「…文月の能力借りパクしてるっていう?」
その昼休み、学食でうどんをすすりながら、皆月は月影の解決編をきいていた。
「そそ、あの朝のお前んとこの担任、福井だっけ?の台詞聞いておかしいと思ってよ。あんな、不純同性交遊がどうとかいう冗談、とっさにでてこねーだろ、普通。あれがもしかして、誰かの願望とかじゃねーかと思った訳だ。」
はあ、そんなことで解るなんてすごいね。と皆月はふよふよになるまで残しておいた天ぷらに箸をつけた。
「で、探してみたらあったんだよ、願いの木って奴が。」
うん、君は本当にすごいよ。ちょっとあきれちゃうくらい。
「簡単にかなう願望って奴は、どんどんエスカレートする。で、かなわないものには憎悪ってヤツでな。で、皆の極端化がすすんでいるっていう」
「それが本当だとしたら、それってかなり最終段階なんじゃない?」
皆月は真顔で月影をみた。
「だから、やばいのはやばいだろう。魅厘が来てるんだったら、犯人特定できねーか?」
「…今更特定しても、そこまで増幅しちゃったら、なかなかもとには戻らないかもしれないよ」
「しておいた方がいいにこしたことはねえだろ。」
ぎろり、と瞳で叱られた。
「解った、頼んでみるよ。」

次の日、なんとなく、文月は朝起きたときに違和感があった。
胸騒ぎというのではない。
もっと直接的なものだという直感があった。
しかし、何かと言われるとわからない。
そのまま学校に行くと、学校自体が、ざわめきに包まれていた。
「死体?うん、死体、死体」
そんな声に、何があったのかと喉がつまりそうになる。
「おはよう、文月さん。…何か、大変みたいね」
声をかけてきたのは藤村だった。
「うん、本当に大変みたい…」
何か作ったような会話だと遠いどこかの自分が感じていた。

ここで、特定され、能力を没収されるはずの犯人が、校舎のそばの木に、ぶらさげられているのが翌日発見されたのだ。
それはまるで黒い影のしみが木にはりついているかのような、と第一発見者は証言した。
「誰が―――なんのために」
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