にざかな酒店

殺戮の言霊三話

というわけで、三話です。
が、挿絵っぽい絵なのに、イメージ画ということで。何故かというと、場面が教室の真ん中で、壁ドンする壁がなかったから…。笑わないで、真面目なんです。内容もかなり、これでも真面目に描いてるんです、という話になっております。では続きどうぞ。

殺戮の言霊第三話

「しかし、学校で猫に餌やるってのも悪いんじゃねーか?」
月影は後藤に聞いてみた。なんだか猫つながりで妙に仲良くなってしまったが、後藤不良説はあんまり捨てていない月影である。
「ん?悪いっていっちゃ、全部悪いな。考えようによっちゃ、タバコすったり、酒飲んだり、そういうやさぐれ方の方がかまってほしいって感じでかわいいかもしらんし」
「本人が損するだけだからか」
「まあそういうこった。猫に飯やるなは俺は疑問だな。飯やらなくて、ゴミあさられたりした方が猫も人間も不名誉じゃねーか。糞だって、そんなに言うならトイレ設置して管理すれば人間と同じ条件じゃねーか、って思うしよ」
まー、こんな甘い人間は見た事ないな。と月影は思った。
「みんなそんな理想論みたいに思ってくれりゃいーけどな」
「それなりに、みんな悪い部分があるのは当たり前だと思っといた方がいいぜ。俺なんか、文月は割と悪さこじらせてると思う」
「文月が?なんで?」
「傍観者だからこそ、見えるもんもあるってことだ」
わっかんねーなー、と月影は頭をかいた。しかし、特に追求するつもりはさらさらない。もしそういうものを見るとしたら、人の言葉ではなく自分でみたいと思うだろう。
「な、ボン次郎☆」
と、思ったとたん、猫に甘い声を出す後藤。…っていうか、いつゴン太来たんだよ。気配なかったぞ。っていうか、ほんとこいつノラのくせに毛並みふっこふこだな。なでなでブラッシング足りすぎ。しょうもないことに突っ込み入れてるとそのうち何考えてたか忘れるんだよな。悪い癖だ。

隣の、教室に行くと、皆月空斗が珍しく目に見えて機嫌良さそうによってきた。
「月影、いいビデオあるんだけどみるー?」
目が点になるとはこういうことだ。周りのクラスメイトもなんだかどよめいている。
「お前がいいビデオって。」
「刻停間にそんなビデオってあるの」
皆が何にどよめいているのか解ってない様子で、皆月は解説した。
「セクシーで綺麗なお姉ちゃんたちが踊りながらバイオリン弾いてるビデオだよ。メインバイオリンだよ」
ほんとにー?と疑問の声が二人を包む中、凛とした声がどよめきを払いのけていった。
「それって、「外」のものじゃないの?」
その声の主は、一人だけ制服が違っていた。
「あなたは、皆月だから、外とコネクトがあるの?」
「君は、もしかして藤村さん?」
皆月はゆっくりと彼女をみた。
ぎゅっとくくったお下げにメガネの、今時珍しい委員長と呼びたくなるような少女だ。
「私、転校させられたのよ。皆が忘れてる貴志美諒子の事知ってるから」
彼女は静かにいった。
「外、とコネクトがあるなら、彼女の事が聞きたいわ」
「残念ながら、外と関係があるっぽいのは別の人だよ。うちの庭師のおじさんがそういうの、詳しいんだ」
「あなたなら知ってるんじゃないの?彼女は本当に外にいったの」
「俺はあんまりはっきり知らないよ。君はどこまで知りたいの」
詰問口調だった藤村の答えが、きゅっと詰まった。
月影は聞いた名前ではあるが、何故皆月が知っているか、藤村がそれを問題視するか、果たしてここで聞いていいものか、と悩んでいた。
「込み入った話みたいだし、後でゆっくり聞いた方がいいんじゃねーか?もうそろそろ授業はじまんぞ」
見守っていたとなりの席の文月も、息を飲んで見守っている。
「…そうね、」
そのとき、藤村の耳元に、少し小さい声で、俺は彼女は好きだった、と言う声がとどいた。
「…?でもあなた、こないだ女とスーパーにいたわね?」
どたこん。と、皆月は次の瞬間、マンガみたいに転がった。
「こら、皆月、俺の机巻き込むなよ。」クラスメイトから非難された。
「っていうか、それって李々か琉瑠じゃねーか?お前ちょっとショックうけすぎ」
「あ、うん。い、家の人ですけど」
藤村はきょとんとしている。
「家の人?妹?それとも結婚してるの?」
「家の使用人だって。従姉と使用人の双子と住んでる」
もはやどう反応していいか皆月の代わりに、月影が解説した。
「…使用人?従姉?…やだ、それ、全員結婚できるじゃないの」
割とそのままな突っ込みだが、クラスのどよめきはもはや最高潮だった。
「ぜ、全員とは、多重婚で刻停間的にそれはやばいんではないかと」
「お前黙っとけよ、そういう突っ込みはよ」
と、そこで始業の鐘がなった。
「ういよー、お、どうしたお前ら、皆もう起立して。議題はなんだ?」
担任は体育教師らしくジャージである。
「議題は、皆月君の不純異性交遊について、です。」
真面目な生徒が真面目くさって答えた。
「お、そりゃーいかんな。刻停間では、人口の増幅のしすぎで、来年から不純同性交遊を支持するとか言ってたりするぞー、なんちゃ…」
なんちゃって、と言い切る前に、生徒たちが阿鼻叫喚になってしまった。
なにがかなしゅーて、とか嘆息する男子はかわいい方で、いやーとか叫ぶ女子はかなり本気がかっていたりする。
「じょ、じょーだんだ、授業…」
教師はなんとか場をとりもとうと考えたが、今時声を荒げるわけにもいかず、パニックは収まらない。
「みんな―――落ち着いて。いい加減にして」
文月が言霊を使って、強制的に、やっと落ち着いたのだった。
だが、この耐えきれず文月が言霊を使ったのが、逆に問題になる。
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