図書館屋の雑記帳

自分のこと、図書館のこと、図書館関係団体のこと、本や雑誌など図書館の資料について気の向くまま書いていきたいと思います。

BSEはどうなった?

2006-10-22 | 本の紹介
 アメリカ産牛肉の輸入が再開されましたが、BSEに関して根本的な問題はどうなったのかよく判らないので、その関係の本を数冊手にとってみました。

 手にした本は次の3冊。
 ①『もう牛を食べても安心か』
もう牛を食べても安心か もう牛を食べても安心か
福岡 伸一

文藝春秋 2004-12
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 ②『プリオン説はほんとうか?』
プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー
福岡 伸一

講談社 2005-11
売り上げランキング : 99585
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 ③『BSE禍はこれからが本番だ』
BSE禍はこれからが本番だ BSE禍はこれからが本番だ
響堂 新

洋泉社 2006-02
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 ①と②の著者は同じ福岡伸一青山学院大学教授です。
 ③はウィルス学者で検疫官の響堂新氏によるものです。

 ①②の特徴は、プルシナーが唱えたBSEの原因が遺伝子をもたないたんぱく質プリオン(のうち異常なもの)であるとする「プリオン説」に強く反発してる点にあります。特に②では各種論文や科学的思考法を駆使し、プリオン説がまだ確定した原因ではなくウイルス核酸が原因である可能性を提示しています。
 また①ではシェーンハイマーの「動的平衡説」に依って独特の食物と人間の関係論を展開しています。

 一方③ではもっと社会学的な見地からBSEを論じています。各国のBSE対策を概観することで、人間が普遍的に持っているかもしれない性癖-事態の過小評価、対策の先送り、保身など-(なんだか最近の学校現場や教育委員会の対応とだぶってしまいます・・・)や、安全性と経済的な損失を天秤にかけ中途半端な対策をとってきたことを明らかにしていきます。
 そしてBSE対策が一定のレベルで行なわれているのはEUと日本だけであり、アメリカや東南アジアではほとんど行なわれていないことも明らかにされます。BSEを世界に拡散した原因といわれるイギリス製の肉骨粉は、世界100カ国以上に輸出され、特に東南アジアには大量に輸出されたにも関わらず、アジアでは日本以外の国からBSEが発生していないという現実に対し筆者は「ありえない」と断言します。
 BSEの今後を考える手軽で有用な本は③といえますが、ミステリー小説的雰囲気をもった②もとても面白く(不謹慎ですが)読めました。

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