図書館屋の雑記帳

自分のこと、図書館のこと、図書館関係団体のこと、本や雑誌など図書館の資料について気の向くまま書いていきたいと思います。

切り抜き・盗難

2006-12-17 | 図書館つれづれ

「図書館の本、傷だらけ…「切り抜き」「線引き」横行」(12月12日夕刊1面)
読売新聞にこんな記事が掲載されました。

切り抜き・盗難については正直困っています。
<書き込み>
鉛筆ならまだしも、ボールペンや蛍光マーカーで書き込まれるとどうしようもありません。数年前哲学・歴史書を中心に大量の書き込みが発見されたことがあります。これがボールペンと蛍光マーカーを使ったもので、著者に対する悪口「著者は西洋史を理解していない!」などや、長文の反論の書き込みなど、個人所有の本かと見紛うほどで、それも70冊くらい発見されたのです。
利用の様子を詳細に観察するうちに、ある特定の人物A氏が浮上しました。そのころになるとA氏は館内で堂々と書き込みするようになり、ついに現場を押さえて事務室で問い詰めました。最初は否定していたものの結局やったことを認め約10万円の弁償金を支払いました(でもこのお金は雑収入として収めるため、図書館のものにはなりません)。その後も同じマーカーの本が散見されるのですが、以前の名残なのか、同じ人の新しい仕業なのか、新手の人なのか分かりません。いずれにせよマーカーや書き込みは著しく他の人の気持ちを害します。
<盗難>
これは一定数あるものとして図書館は運営されています。もちろん出来る限り減らす努力はしています。磁気テープやICチップの導入を行いBDSを設置すれば一定効果はあるようですが、残念ながら私図書館には導入されていません。私図書館屋の館では、毎年最終的に1,000冊~1,500冊ほどが盗難と思われる理由により除籍されます。経年変化を見てみると若干増える傾向にあります。
原因はモラルの低下とか、公共図書館の運営が資料を消耗する形で行われているから、とか言われていますが、よく解りません。ただ二十年くらい前のアメリカがやはり盗難や放火が横行し、その後銃を携帯した警備員の配置が行なわれるようになりましたが、その頃の状況と似ていると言えなくもありません。結局原因はひとつではなく、失業率の増加や不安定雇用にともなう社会的不安感の蔓延、風潮としてのモラルハザード、コミュニティの崩壊、図書館と利用者の距離感の乖離など多くの要因が重なって起きていることなのでしょう。では図書館にできることはなにか。資料の盗難だけでなく痴漢や置き引きを減らす手段として有効なのが、声かけだそうです。挨拶や書架の間を回っての声かけは「図書館職員はあなたのことを認識していますよ」という合図になるとかで、防犯効果としても優れているそうです。
<切り抜き>
これは雑誌によく見られます。特にでは「Myojo」や「Nicora」、新聞ではスポーツ新聞がよく切り抜かれます。切り抜かれた内容から見て雑誌は若い女の子、新聞は株をやる中年男性と推測されます。カラーコピー機を設置しましたが、さてどのくらい効果があるのでしょうか。
<ゴミおじさん>
盗難とかとは次元が違うのですが、私図書館屋の館には「ゴミおじさん」がいます。一戸建ての自宅は既にゴミに埋まり、外で寝泊りしているようです。昼間は図書館や市役所のロビーなどで眠り、夜はゴミを漁ってうろついているのです。
問題は館内に大量の荷物(限りなくゴミに近いもの)を持ち込むことです。数年前から何度も持ち込みについて注意し、持ってこないと約束してもダメ。先週の金曜日も置きっぱなしの荷物を事務室に移動したら、「俺の荷物をどこにやったんだよ!黙って持って行ったら置き引きだぞ!」と怒鳴り込んできました。「荷物は一つ、それも手元に置くと約束したでしょ。」と館長が言っても「知らない。約束していない。荷物を返せ!泥棒!」といって館長に掴みかかろうとします。彼にとってゴミは全てに優先する大切なものであり、過去何を言おうが約束しようが、今そこにあるゴミが大切な財産らしいのです。


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2 コメント

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心の貧困 (東京駅から15分)
2006-12-17 15:22:09
盗みで身に付ける知識に何の価値があるのでしょう。警告の張り紙だらけの図書館も想像したくありませんが、監視モニターや警備員を置くことも、バッグ持ち込み禁止もしないで、解決できないだろうか。入館者の顔を見ながら明るく挨拶すれば防犯になるかも・・・などと様々な議論をされたことと思います。
館長さんの文章からいろんなことが想像できます。善意を信じる気持ちも伝わります。信じてよかった、と思うような方策が見つかるといいですね。
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信じたいけれど・・・ (図書館屋)
2006-12-17 22:25:19
東京駅から15分さんいらっしゃいませ。たぶんモラルを欠く人はごく一部だと思います。そのごく一部の人の行為ゆえに多くの人が迷惑を被るという点が問題なのですが、過剰な警備自体もまた多くの人に不安感を抱かせるというジレンマがあります。しかし、アメリカを見ていると啓蒙や教育よりも、まして威嚇よりも、環境の整備と図書館職員と利用者の距離感を縮めることの方が効果的なようですね。
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