ねことわたしのやわらかな日々

17年一緒に暮らした愛猫を亡くしましたが、日々のささやかな幸せを、
手のひらで温めて暮らしています。

「くもをさがす」

2024年08月18日 09時50分26秒 | 出会い

以前テレビで紹介されていて

近くの図書館で予約待ちをしていた

西加奈子さんの「くもをさがす」を

やっと読むことが出来ました。

予約した時点では、確か50人待ちくらい。

 

コロナ禍、子連れでカナダのバンクーバー滞在中に

トリプルネガティブの浸潤性乳管癌が見つかり

両胸を切除したという体験談なんだけど

とにかくぶっ飛ぶような驚きの連続。

なのにユーモラスでパワフルで感動する。

 

 

だって、全身麻酔で両胸と

リンパも3つ切除したというのに

日帰り手術なんて、信じられる?

しかも手術当日の朝に別の病院で

リンパ節転移の有無を調べる

センチネルリンパ節生検を受けたのち、

自力で手術を受ける病院に移動し、

正午から手術して15時に退院予定だなんて。

しかも帰りに別の場所にある薬局に寄って

自力で薬を貰いに行かないとならないなんて。

 

 

そんな驚きの体験にもへこたれることなく

心の中で「無理に決まってるやろ」とか

「そんなん出来るかーい」などと

関西弁で絶えずツッコミを入れながらも

優しい友人たちに支えられながら

乗り越えていく作者の明るい力に

読んでいて大きく励まされました。

 

日本でも入院期間はどんどん短くなってるけど

それにしても両胸切除が日帰り手術とは。

術後麻酔から覚めたらすぐに歩かされて、

そのまま退院させられるなんて過酷すぎる。

 

でもそれを可能にしているのが、

数多くの友人たちの善意と愛だというのが

必ずしも「日本で良かった」と思えないところ。

日本だったら家族に病気が見つかったら

家族がすべて面倒をみなきゃいけないけれど

「他人様に迷惑をかけていけない」どころか

「困ったときはお互い様」とばかりに、

周囲の人々が当然のように支えてくれたという。

事実、手術に立ち会ったのも、送り迎えしたのも

作者の夫ではなく友人の一人だった。

 

「バンクーバーに数年いた私が感じたのは、

日本人には情があり、

カナダ人には愛がある、ということだった。」

そして作者は、この過酷な経験の中にも

たくさんの「美しい瞬間」があり、

それを「書くべきだ、皆に知ってもらうべきだ」と

思ったのがこの作品になったのだという。

「私は、私に起こった美しい瞬間を、

私だけのものにして、死にたい。」

もともとはそう思っていたにもかかわらず。

 

作者が彼女の「美しい瞬間」を

共有してくれたことに感謝しながら、

次に待っている人のために

図書館に返してこようと思います。

どうか彼女の「美しい瞬間」が

一人でも多くの人に届きますように。


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