mimi-fuku通信

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【柴田是真(ZESHIN)】:日曜美術館(放送)×根津美術館(展覧会)。

2012-12-01 00:43:21 | 美術・芸術・創造

日曜美術館
『柴田是真:漆で“粋”を極めた男』
NHK/ETV:2012年12月2日(日)PM8:00~8:45(再放送)

特別展:ZESHIN
『柴田是真の漆工・漆絵・絵画』
根津美術館:2012年11月1日(木)~12月16日(日)

*****

11月25日朝に放送された日曜美術館。
明治時代の蒔絵師&絵師の柴田是真の特集番組があった。
また、
現在進行形で東京青山の根津美術館では柴田是真の展覧会を開催中。
今回は日曜美術館で放送された番組から少しだけ紹介させていただく。

2011年5月(3回シリーズ)と、
同年11月(3回シリーズ)に、
BSプレミアムで放送された、

『極上美の饗宴:世界が驚嘆したニッポン』
*生き物が踊る器:陶芸家・宮川香山
*色彩めぐる小宇宙:七宝家・並河靖之
*金属に刻んだ一瞬:彫金家・正阿弥勝義
*謎の巨大香炉:鋳金家・鈴木長吉
*幻の赤を追う:七宝家・安藤重兵衛
*絵画を超えろ:漆芸家・柴田是真
の6回のシリーズは何れも秀逸の番組群。
*地上波でも是非放送して欲しい。

明治時代に活躍した工芸作家(職人)。
その超絶技巧と精神性は日本の輸出品として、
西洋では高い評価を得ており今もコレクターは多い。

日曜美術館で再放送される柴田是真は漆芸界のトップ・ランナー。

帝室技芸員(=現在の人間国宝)に選出されている。

多くの工芸職人が〝そうだった〟ように
江戸から明治への激変。
大名や武士の“お抱え職人達”はその職を失うこととなる。
職を失った職人達は激動の時代の中で新しい技法の模索と挑戦。

*収得した技術=それまでとは違った分野での思考錯誤。

*超絶技巧(テクニック) 
*創意工夫(クリエイト) 
*斬新な意匠(デザイン)

名人:柴田是真は何れの才能も他を抜きんでるセンスを持っている。
番組を見れば理解できると思うが是真の“粋”は細密表現(テクニック)

日本映画界の巨匠:黒澤明監督の“見えないタンス”の逸話は有名だが、
柴田是真の細密もまた素人には気付かない場所への徹底したこだわり。
*漆芸の特徴としての粘り気と盛り上げ⇔乾燥の困難と漆の収縮。

後世に名を残すキーワードとしての“完璧主義”はテクニックだけでなく、
これまでに誰も挑戦しなかった新しい技法(クリエイト)への徹底した追求。
現代のお手軽文化とは程遠い壮絶な鍛錬(=日々の研鑚)に強く心打たれる。

そして、
ハッとする構図の斬新(デザインの革新)には驚くばかりだ。


*月薄鈴虫蒔絵額/三隅悠コレクション

満月の前に風もなく静かに存在する薄(すすき)。
夜露(よつゆ)は銀の粒で表現され1匹の鈴虫がシルエットに映る。
*画像右上部:暗闇の中にも1匹の鈴虫(茶漆)が微かに写る。

『月に松』や『太陽に鶴』など遠近を利用した絵画は日本の伝統。
夜露や雨の雫(しずく)を露玉で表現するのは漆芸では定番。
しかし、
暗闇に浮かぶシルエットの美しさを単純に描くセンスは、
浮世絵の中で『月に落雁』など遠い風景では記憶にあるが、
眼前の近景と月光の対比構図は私の記憶に中に存在しない。

漆黒(しっこく)に浮かぶ月の明かりに照らされる鈴虫の鳴き声。
月に照らされる夜露(よつゆ)の静寂は禅にも通じる日本の美。
こうした着眼点にこそ“伝統的日本の精神”を感じることができる。


11月25日:放送日の夕方(晴天無風)。
薄暗くなった空に浮かぶ“月明かりに立木の葉”を重ねてみた。
葉を月の輪の中に入れるために自らが動いて距離を調節。
是真が生きた時代(幕末から明治)は月の明かりに心和み心弾む時代。
日本人の観察力や想像力はこうした自然を楽しむ文化に通ずるのだろう。

現代社会では観月(=お月見)を楽しむよりも明解なビジュアルの時代。
世界はおろか宇宙の果ての映像や画像が溢れ“微妙な変化”を楽しむことは少ない。

1枚の写真を撮りながら夏であれば蜻蛉(トンボ)が葉に止まるだろうか?
晴天でなく雲の切れ間の月に浮かぶシルエットは如何なものか?
日が沈み夕暮れから闇の時間に肉眼はどこまで観察可能だろうか?
そんな空想や構図の工夫を脳裏に描きながら楽しい時間を独りすごす。

11月下旬の寒い夕暮れに一人佇みながら夢中で月を観る。
それは健常な何人にも平等に与えられた“自然美の瞬間”である。
ただ、
気付くか?気付かないか?は人の心の位置に相違ない。

*****

【展覧会図録】
『ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画』 
定価:2300円+送料500円=2800円

【問い合わ先
〒107-0062
東京都港区南青山6-5-1
根津美術館出版物係
TEL:03-3400-2536
FAX:03-3400-2436
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/publications/order.html


別冊太陽『柴田是真
定価:2415円
平凡社

『幕末・明治に咲いた漆芸の超絶技巧 』
ムック: 159ページ
出版社: 平凡社 (2009/11)
商品の寸法: 29x22x1.2 cm

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