江戸川区某所のある老人アイ氏❨推定年齢80代❩。
養子縁組をした養女ワイさん❨推定年齢40代❩を連れて江戸川区某所は自分の縄張りかのように振る舞い歩く事が日課の小金持ち。
アイ氏は一年前に警察に逮捕された。
養女のワイさんも行方をくらませた。アイ氏の若い衆のエイチ氏❨推定年齢50代❩と駆け落ちしたのだ。
エイチ氏は違法薬物の売人だった。エイチ氏が刑期を終え出所後間もなく親父と呼んでいたアイ氏が逮捕され、養女ワイさんと行方をくらませた。
何故行方をくらませる必要があったのかは、二人の駆け落ちをきっかけに公になった。
アイ氏とワイさんは義理の親子でもあるが、実態は愛人関係だったのだ。
アイ氏は現在仮釈放で一年ぶりに娑婆にいる。
私は知人と江戸川区某所に居た。
知人はアイ氏から金を借りており、アイ氏は勾留中も返済をせまっていた。
知人は一部返済するといい、我々がいる飲食店でアイ氏を待つ事になった。
現れたのは三人組で、老人の男と中年の男と女性。
三人組と知人の会話から、老人がアイ氏、中年の男はアイ氏の身柄引受人、女性がワイさんである事が分かった。
だが目の前でかわされる三人組と私の知人の会話は余りにも不自然だった。
ワイさんがこの場にいる事について何の説明も質問も無いのだ。
一年前の二人の駆け落ちはアイ氏への裏切りだ。
これは大騒動となったし、私の知人も含めアイ氏の周囲の者達も裏切り者の行方を探していたのに一言の説明も無い。
私の知人も何の質問もしない。
散々周りを巻き込んで騒がせておいて一言の説明もしない「無礼」は不問にしたとしても、あまりにも不自然だった。
不自然というのは気持ちが悪いものだ。
「不自然過ぎて気味が悪いな」思わずそう言いかけて【暗いと不満を言うよりも進んで灯りをつけましょう】という言葉を思い出した。
「ところでワイさんは、アイ氏のお嬢さんのワイさんですか？駆け落ちしたはずですが、どうしてここに居るんですか？」
普通に聞いた。私はこの「普通感」に自信がある。
初対面の名前も知らない人である私が突然立ち入った質問をしても、ワイさんは全く気を悪くしなかっと断言する。
ワイさんがよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに話し始めたのは美しい部分だけで構成された感動的な美談だったが、養子縁組とはいえ親子で肉体関係を持ってたなんてクソみたいな真実より耳に心地良かった。
【暗いと不満を言うよりも進んで灯りをつけましょう】
私は子供の頃に聞いてた仏教ラジオの言葉を改めて噛み締めている。