蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

土蔵の中で

2017-09-23 | 
今日は、お彼岸。
嫁ぎ先の墓まいりをした。
お坊さんが檀家を回ってお経をあげる。
恒例行事。
代々、姑たちは、1日も欠かさず、やっていた。
姑抜きで、お坊さんを迎えたのは、今日で5回目。
姑が倒れてからの、去年のお盆、秋の彼岸、今年の春の彼岸、お盆、秋の彼岸。
1年に3回。
お坊さんの稼ぎ時である。

姑たちは、嫁に来て、全員、姑になっている。
わたしだけが、たんなる嫁で、姑という肩書きがない。
息子に嫁がいないからである。致し方ない。

これも時代の流れだろうと、自然に任せている。
奥の土蔵に入ると、わたしの息子や娘たちに実家から贈ってくれた、兜、破魔弓、お雛様、羽子板、市松人形などの入った箱が、積まれている。
娘や息子に贈られた箱の上にかぶせた紙の上の土埃はまだマシ。
(土蔵なので、土埃がある)
思いっきり土埃だらけの紙が乗っているのは、60年以上前のお雛様や、その前のおじいさんたちの兜や人形。
ちょっとマシな土埃の紙に包まれているのは、多分、舅の兜。
これは、毎年のように出していると思われる。

この人形などが入っている土蔵は、電燈がないので真っ暗闇。
小さな窓をパタンと開けて窓に突っかい棒をして、お昼間に入るか、
はたまた、工事現場やイカ漁船を照らしているようなライトを蔵の外にあるコンセントプラグに差し込んで、コードを延長させライトを灯して中に入る。
一階は人形類。
二階は昔の陶磁器や漆器類。
前に入った時より土埃がすごいように思う。ゲホゲホ。
ぶーんと蚊の鳴くような音がして、刺されたら嫌だと焦る。
なかなか、お目当ての品が見つからない。

お目当ての品は、小ぶりの木目込みお雛様。
娘に、初めての女の子が生まれたので、来年、お雛様を娘の住んでいる家に飾ろうと思う。
わたしに長女が生まれた時に実家から贈ってもらった仰々しいお雛様一式はあるが、そんなたいそうなものは、飾れない。(手間、スペースの問題。アンチ省エネお雛様)
次女が生まれた時に、買ってもらったお雛様は、マンションの玄関にでも飾れるコンパクトサイズ。
あれがいいなあ、と思って探したが、なかなか見つからなかった。
しかしながら、仰々しい兜やお雛様、一度出さねば。
そして、箱を包む土埃だらけの紙を新しい紙に変えねば。
前にわたしが、姑と見て初めて飾ったのは30年以上前で(最後に娘、息子の兜、雛人形を飾ったのは25年ぐらい前)、その時についでに見た箱に乗せてあった紙は、昭和30年ぐらいの新聞紙が箱の上にかぶせてあった。
夫の五月人形だ。
30年に一度の、オープン。
その時は、さらにその25年ぐらい前(85年ぐらい前)のお雛様(舅の妹の分)もついでに飾ってみた。
なぜ、舅の妹(夫の叔母)のお雛様があるかというと、、、、
舅の妹が生まれた時に、お雛様を母親の実家から贈られたものの、後に舅の妹は嫁に行ったが、女の子が生まれなかったため、実家にお雛様一式を引き取ってもらった。
たぶん、二人(姑と、1代前の姑と)で、一度は出したものの、その後は、ちらっと存在を確認しただけではないかと想像する。

しかし、わたし一人でガッツがあるかどうか。
30年前には、姑とわたしは、二人で開けて飾って、収納した。
夫の分や、舅の妹の分は、土埃だらけの紙を捨てて、箱から出して飾るにも、膨大な量で、お雛様が佇むお屋敷も、木製の組み立て式で、ものすごく複雑な設え。
出すのは良いが、飾り方に四苦八苦(30年前もかなり苦労した)、それにも増して、仕舞うのが、多分、手に負えない予感。
なので、気持ちは前向きだが、一人ですったもんだの手間暇を考えると、出さないでおこうかと思う。
娘と息子の分だけ、出すことにして。

とすると、子供の誕生を祝う品々は、わたしのようなズボラな者にとっては、贈ってもらった時しか飾らないということだ。
実にもったいない。
昔は、丁寧に手間暇かけて、子供の成長を愛情込めて願い、祝ったものだと、つくづく感じる。

親のこころ、子知らず。
しかし、ライフスタイルも変わり、兜、雛人形、破魔弓、羽子板、市松人形、、、これらを嫁の実家の親が子供一人一人に贈っていた時代は過去になりつつあると思う。
(もう過去完了かも知れない)

わたしは、孫には、作家が作ったの木彫りの兜(壁掛け仕様)と、マンション玄関仕様の破魔弓を贈った。
しかし、あれも、小学生になれば飾らないだろう。
何十万円もするお雛様や兜が、季節になるとデパートに売られているが、親ごころ、どこまで子や孫に伝わるか。

土埃にまみれた土蔵の中で、わたしは、自分の役割を果たさずに、途中下車して降りようとしている自分を発見した。

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