蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

「60歳のラブレター」、 なんですが・・・。

2009-06-01 | 映画
これから、この映画を見ようとしている方は、お読みにならないでください。



私が永年、会員になっている、ある「女性の会」から、定例通信が届いた。
「60歳のラブレター」試写会で見たけれど、ものすごく腹立つ~、という内容も載っていた。
女性たちは、怒っている。それも結構、強く。

この映画、仕事や愛人やらで、家庭を30年間顧みなかった夫(中村雅俊)と、
耐え忍んできた専業主婦の妻(原田美枝子)が、夫の定年を機に一旦離婚するものの、
いろいろあって、最後は、またやり直すことになるのだが。
ラストシーンで、夫が、「やり直そう!」という言葉に、
こくっとクビを縦に振る妻。
信じられない。なんで、タテ? 

前に、松坂慶子扮する妻が、渡哲也扮する夫と離婚するTVドラマ「熟年離婚」が話題になった。
なので、そういう時代の流れを
今頃、同じようなかんじで蒸し返しても、斬新でもなんでもないからなのか、
一石を投じる意味もあるのか、話題性を提供したかったのか、
事情はよく知らないが、なにしろ、この奥さん、どうしようもない夫を許しちゃうのだ。

中村雅俊演じる、こういう男性、よく、いる。
仕事もデキて、女性関係もお盛ん。
また悪いことに、モテてしまうのだ、こういうタイプは。
エネルギッシュだから。いるいる、本当に、よく、いる。
仕事をバリバリと成功させる、こういう類の人、
大会社での肩書きと、自分自身のアイデンティティーをごちゃまぜにしている。
会社のために、ひた走ってきたのだから、仕方ないか・・・。
頑張ったけれど、恩恵も受けている。
オーバー気味に演出してあったのが、面白かった。
ストーリー展開としては、ラストは、ちょっとチープな漫画になっていた気はするが。

脚本は、めちゃめちゃ面白かった。効きよく、サエえていた。
さえないドクター(井上順)の長女の、生意気な口の利き方。おマセ。笑える。
売れっ子翻訳家(戸田恵子)のセリフも。
ドクター「あなたみたいな人は、おモテになるでしょうね」
翻訳家「私はモテナイの。仕事がデキるから」
ほおぉ。。。私は、モテナイけれど、仕事もデキない。ま、それはいいとして。

翻訳家が、離婚したばかりの妻(原田美枝子)に「私がお金の使い方を教えてあげるわ」
といって、エステや、ネイルサロン、ショッピング、パーティへと連れ歩く。
パーティドレスは、薄っぺらドレス、あんなペラペラドレスでパーティに行く?
パーティでは、取ってつけたような売れっ子作家(石黒賢)に
「あなたは、宝石の原石だ」とアプローチされる。
この、取ってつけっぷりが、ますます漫画チックぶりに、磨きをかけている。
何も知らない、ありとあらゆる情報から遮断されている、ド田舎の若い子ならいざ知らず、
60歳前後の熟女の展開としては、かなりチャチ、無理がある。
あのようなストーリーに憧れるのは、せいぜい18歳までなのではないだろうか。
無理矢理どうしても、あの展開にしたければ、「40歳のラブレター」なら、まあ、まだしも。

笑ってしまっては、申し訳ないが、あっちこっちで笑わせていただいた。
そして、涙も自覚なしに、あっちこっちで流していた。
中村雅俊は、キャラ設定は良くないが、俳優としてはカッコよかった。
(もともとの中村雅俊の優男イメージとは、全く違う設定には違和感があったが)
別カップルの、魚屋さん夫婦(イッセー尾形&綾戸智恵)、ズッコケていて、楽しかった。

もう一度やり直しても、やり直さなくても、夫には辛い人生が待っている。
30年耐えた奥さんの恨み辛み、ここぞとばかり江戸の敵を長崎で討たれるはずだし、
利子もついて、大逆転して、偉そうにされるだろうなあ・・・
離婚していたほうが、良かったと思ったとき、もう一度離婚すればいいのだろうけれど、
その頃はどちらかの介護が必要になっていたりして、自由がきかないかも知れない。

全て、自分の身から出た錆、とはいえ、人生って・・辛くて、厳しい・・・。