書評
きれいなものを見ると汚したくなる変質者と朝日新聞に似ていないか
日本(きれいなもの)を貶めることがよほど楽しいらしい
高山正之『サンデルよ、「正義」を教えよう』(新潮文庫)
皮肉たっぷりの譬喩がある。
「先日、京浜東北車内で美人に痰をなすりつけた男が鶴見署に捕まった。きれいなものを見ると汚したくなると自供した。朝日新聞はこの変質者に似る。きれいな日本をみると汚したくなる」
改めて文庫になったので、評者(宮崎)は読み返す機会を得たが、初読でスルーしていた重要箇所があったことを知った。
この本、単行本のでた2,011年にいちど小誌でも書評している。最初にそれを下記に再録する。
「ご存じ『変見自在』シリーズも第六弾。辛辣で皮肉たっぷりで、相手が一番触れて貰いたくない患部をぐさりと突き刺す。矛盾をえぐりだす。『週刊新潮』の看板コラムの単行本化である。
日本の精神の腐れ、知的腐敗の元凶は朝日新聞だが、いかにこのメディアが卑怯で、それでいて本質的恐喝や暴力には怯懦であるか、本書をよめば溜飲が下がるように、パノラマを見ているように納得できる。正義を標榜する戯れ言は旨くても、かれらが隠し続ける左翼の不正義が、そこはかとなく浮かんでくる。船橋洋一がいかに偽物であるか。
同時に歴史的経緯を簡潔に分析している行間のなかに、欧米とりわけ米国、英国、フランス、オランダという「民主国家」が、いかに残虐で、無謀で、暴力と謀略がすきな国々であるかも明らかになる。
その左翼の詭弁と詐弁が擁護するのは中国、韓国、北朝鮮、そして冷戦時代はロシアを徹底して擁護した。その論理的破綻を隠蔽しつつ、今日もまたでたらめな報道、主張を織りなして多くの日本人を洗脳しようとする。
これまで英雄視してきた人物達のいかがわしさ、これまで敬愛してきた集団や国家群や国際組織の欺瞞。そして歴代NYタイムズ東京支局長なる人々のいかがわしさと無教養。
その嘘を、この本では表題に用いたハーバード大学の詐欺男に象徴させるのである。
サンデルなるおっさんが、いかなる詐欺的弁舌を展開しているのか、評者(宮崎)は寡聞にして知らなかったが、高山さんが要領よく、端的にまとめる。
「サンデルの頭にこうした日本的な正義はない。商売は阿漕に、金持ちは命を惜しむ。それを何とか正義で包みたい。あの大学(ハーバード大学)に中国人が増えるわけだ」
さて。
文庫になったのを機会に読み返してみて、おやと思った箇所はコソボの独立に関してである。
かつてトルコはセルビアを落とし、「強いセルビアが復活しないよう彼らの都、コソボに(トルコは)イスラム教徒のアルバニア人を住まわせた。セルビア人の心の拠り所を奪ってしまう手法だ。先の戦争のあとGHQは都会のいいところを三国人に不法占拠させ、パチンコ屋をやらせて日本の景色を一変させたこれと一脈通じるところがある」
実際にコソボを歩くとアルバニア人が夥しく、セルビア人は家を放置して、ベオグラードやほかのEU諸国や米国に移住した。だから寂しい田園風景。治安はNATOが守っており、皮肉にも世界遺産はキリス小教会だ。
もう一つ、ルーマニアの串刺公こと、ワラキア公がなぜか吸血鬼ドラキュラ、悪魔に扱われているのだろうか。かれはトルコの侵略を撃退したのに?
評者、現場に立ってドラキュラの王城を見学し、なぜ、この英雄が、単なる吸血鬼扱いされているのか訝しんだ。そこで拙著(宮崎正弘『日本が全体主義に陥る日』、ビジネス社)のなかでこう書いた。
「言うならば外国侵略軍と戦って散華した鎌倉武士の棟梁のような存在であり、イスラエルでいえば『マサダ砦』ではないか。ルーマニアの英雄である。それなのになぜドラキュラの汚名を着せたままルーマニア政府は放置しているのか、不思議に思った」。
その答えは簡単だと、高山氏は言う。「彼らはローマンカソリックではなかった、東方正教会系だったからだ」
清涼飲料をまとめて十本のんだようになれるのが読後感があった。