メロディくんの目は、今は見えません |
全盲のメロディくんと暮らす
ANGELICAオーナーの木川典子さんにお話を伺いました。
木川さん、掲載の許可をいただきまして
ありがとうございました。
メロディくんの生年月日を教えてください。
メロディは1999年3月7日生まれの男の子です。
すでに去勢手術をしています。
メロディくんの異変に気付いたのは、いつ頃でしたか?
メロディが3歳のときです。
いつものようにリビングで遊んでいると、
メロディが家具にぶつかったのです。
また、そろそろと歩いたり、
大きく脚を持ち上げて
歩くような仕草が見られたので、
なにかが変だと思って
動物病院に相談しました。
どこの動物病院に行かれたのですか?
かかりつけの真間ペットクリニックに
紹介していただいたくみ動物病院です。
眼科の女医さんがいらして、
詳しく見てくださいました。
また、エムズ動物病院にも見ていただきました。
どこも診断結果は同じで、
遺伝性の網膜剥離ということでした。
エムズ動物病院から、
東京大学農学部構内にある動物医療センターに
紹介状を書いていただいて受診しましたが、
診断は同じでした。
どのような検査をしたのですか?
眼科の精密検査です。
すでに網膜がはがれかかっている状態で、
スポット状にわずかながら残っている網膜で
光を感じることはできているようでした。
その頃は、光を当てると反応を示したのです。
でも、徐々に進行し、
いずれは失明するだろうという診断でした。
当時はまだ、網膜剥離の外科的治療法が
確立されていなかったのです。
大変辛いことをお聞きして誠に恐縮なのですが、
そのときのお気持ちを聞かせてください。
本当に辛くて……。
なぜ、この子がそんなかわいそうな目に遭うのだろうと……。
毎日泣いて暮らしました。
代われるものなら、私が代わりたいと……。
いろいろな動物病院を渡り歩きました。
どこかに眼を治す方法があるのではないかと……。
でも、結果は同じでした。
でも……こんなに元気だし、うれしそうに近寄ってきてくれるのに。
今は視力を失ってしまったので、
メロディは、音と匂いですべてを判断しているんです。
ただ、眼が見えないので、以前散歩中に
枝で眼を傷つけてしまったことがありました。
それからは、散歩にとても気をつけています。
具体的には、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか?
まず、言葉を教えました。
「止まって」「危ない」「こっちだよ」「おいで」
は覚えてくれました。
私がメロディの眼になって、
危険を事前に教えてあげるようにしています。
散歩中に、ほかの人やワンちゃんに会ったときは
どうしていますか?
ほかの飼い主さんから、
「ご挨拶させてもいいですか?」
と聞かれたときは、
「この子は目が見えなくて、
ちょっと臆病なところがあるので、
わっと来ると、吠えてしまうかもしれません。
吠えてしまったら、すみません」
と事前にお伝えしてから、挨拶をさせるようにしています。
また、ほかの方から
「触ってもいいですか?」
と聞かれたときは、
「この子は目が見えなくて、
恐がりなので、そっと触ってあげてください」
とお伝えしてから、触っていただくようにしています。
幸いなことに、今まで事故はありませんでしたし、
メロディもとても喜んでご挨拶をしています。
家の中で、なにか気をつけていることはありますか?
家具の配置をなるべく変えないようにして、
段差の下にはマットやクッションを敷いています。
階段の上り下りは段の数を覚えているようで、
支障なく行なうことができます。
トイレは外でしているので、
外に出たいときはドアのところまで行ってガリガリとやっています。
目が見えなくなる前と後で、メロディくんに変化はありましたか?
昔はとても活発な子でしたが、
見えなくなってからはおとなしくなりました。
遊ぶよりは、ぽーっとしていることが多いです。
普段は、どうやってメロディくんと遊んでいますか?
部屋の中で鈴のついたオモチャを投げて遊んでいます。
落ちたときに音が鳴るので、
メロディは音とオモチャの匂いを頼りに
オモチャを探して、拾います。
拾ったら、今度は私が
「おいで!」と声をかけながら
手を叩いたり足を踏み鳴らしたりして、
メロディを呼びます。
時間はかかりますが、ちゃんとこちらに
戻ってきますよ。
メロディくんは視覚を失っているので、
残された聴覚と嗅覚に刺激を与えながら遊ぶのは
とてもいい方法だと思います。
ほかに、気をつけていらっしゃることはありますか?
メロディは目が見えないので、
お客様が不意にメロディを抱き上げたときに
怖がって暴れることがごくたまにあります。
そのときに、お客様の腕をひっかいても大丈夫なように、
爪にネイルキャップをつけています。
このネイルキャップは、
ANGELICAでもお取り扱いしています。
メロディが目をひっかいて傷をつけることもなく、
とても重宝しています。
メロディくんがはめている ネイルキャップ |
ANGELICAで扱っているネイルキャップ。 ネイルアートがしてあって、とてもかわいい! 透明のネイルキャップも扱っています |
普段のお手入れで、気をつけていらっしゃることを教えてください。
とにかく目やにがすごいので、
動物病院からもらった涙と同じ成分で
作られている清浄液でまめに拭いています。
また、目のまわりをマッサージしています。
目の周りがただれてしまったときは、
動物病院で治療して
目薬などを処方していただいています。
トリミングなどは、どうされていますか?
普通のトリミングショップだとちょっと怖いので、
動物病院でトリミングしていただいています。
目が見えないので、
今更知らないところに連れて行くのも
かわいそうかなあ、と。
自分でトリミングすることもあります。
え、ママカットなんですか!
お上手ですね。
ご自分でシャンプーしたり、トリミングしたりするときに
気をつけていらっしゃることはありますか?
メロディに負担をかけたくないので、
短時間ですませるようにしています。
また、いちいち声をかけています。
「お湯かけるよー」
「シャンプーするよー」
「次はリンスだよー」
「タオルで拭くよー」
とか。とにかく話しかけるようにしていますね。
お出かけのときは、どんなことに気をつけていますか?
車で出かけたときは、メロディは目が見えないので
どこに来たかがまったくわかりません。
だから、私が車から降りようとすると、
置いていかれるのではないかと思って
パニックになります。
声をかけてなだめながら、
かならず一緒に降りるようにしています。
車の中へ置き去りにすることはしません。
メロディくんには妹のプリンちゃんがいますが、
プリンちゃんのことについても教えてください。
プリンちゃんを迎えたとき、
メロディくんはどんな反応でしたか?
プリンちゃん(左)とメロディくん(右) |
プリンは2005年12月22日生まれで、
今年の3月2日に家に来ました。
匂いをちょっとかいで、
それからはプリンにあまり関わらないようにしているみたいです(笑)。
プリンはまだ子犬だから、
いきなりじゃれたり、甘がみしたりするので
触らぬ神にたたりなし、と思っているみたい。
でも、プリンがいるとお留守番のときも安心みたい。
最後に、これから失明するかもしれない病にかかった
ワンちゃんの飼い主さんに、伝えたいことはありますか?
最初、獣医さんに失明を告げられたときは
本当にショックでした。
でも、今はメロディも私も
目が見えないことに慣れたので、
特に不自由は感じていません。
むしろ、手間がかかる分、
メロディが本当に、心から愛しいです。
……。
私は双子の母で、妊娠中は何度も入院したんですね。
妊娠間際は3ヶ月ほど入院し、出産も難産。
やっと生まれた赤ちゃんも一人は仮死状態、
もう一人もすぐに保育器で、
とても大変な思いをしたんです。
グチをこぼす私に、父は
「別に、カトリックでもないけど、
おまえに双子が出来たのは、
おまえならきっとちゃんと育てられるって、
神様が思ったからなんじゃないかな。
今は大変だろうけど、それに負けずにやれるって
神様におまえが見込まれたからだよ」
と言って、励ましてくれました。
病気になってしまったワンちゃんの飼い主さんにも、
きっと同じことが言えると思います。
ともに暮らすワンちゃんに遺伝病が発見されても、
ワンちゃんと力を合わせて
がんばってほしいと思います。
その子とめぐり合ったのは、
あなたならどんなことがあったとしても、
最後まで愛情を注いでかわいがってくれると
神様に見込まれたからではないでしょうか。
ワンちゃんには、
飼い主さん以外頼る人がいないのですから、
強い気持ちでワンちゃんをフォローしてあげてください。
本当にいいお話を聞かせていただいて、
どうもありがとうございました。
「ママたち、さっきから なに深刻な顔をしてお話してるの? そんなことより遊ぼうよ」(メロディくん) |
「よーし」(メロディくん) |
「おりゃ!」(メロディくん) |
「ぼくは目が見えないけれど ママやパパが抱っこしてくれる。 ママやパパの匂いがして 心臓の音が聞こえてくるんだ。 ぼくはとっても幸せなんだよ」(メロディくん) |