常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

躑躅

2016年05月06日 | 万葉集


万葉集で詠まれた躑躅は、短歌が6首、長歌が4首と意外に少ない。当時から、身近にあった花らしく挽歌に歌われていることが多い。5月になって、花は繚乱として咲いていなところがないほどだが、なかでも躑躅は大抵のお宅の庭に咲いている。そのなかで、白躑躅は清楚な感じで好ましい。

風速の美保の浦廻の白つつじ見れどもさぶし亡き人思へば (巻3・434)

この歌の詞書に、「松原の美人の屍見てかなしびて作る」とあり、海に沈んだ乙女が化して白つつじになったという伝説を背景に詠んでいる。この国では、路傍や浜辺に人の亡きがらが、打つ捨てられているのは、珍しい光景ではなかった。それらの死骸が白骨化している姿に、人生の運命を感じた。

水伝ふ磯の浦みの岩つつじ茂く咲く道をまた見むもかも(巻2・184)

草壁皇子は天武天皇と持統天皇との間に生まれた皇子である。皇位に就くことなく、28歳で早世した悲劇の皇子。死因は病死説、他殺説があるが、いずれも確証はなく謎に包まれたいる。若い皇子の死を悼んだ歌は多く残されている。皇子の取り巻きは、墓のそばで宿直をした。一周忌を終わって、それぞれの任地へと引き上げていくが、皇子の側を離れるのを悲しんだ歌である。

コメント
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