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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0721「愛情のはて」

2019-11-20 18:19:01 | ブログ短編

「どうして? 何でか教えてよ。あたし、何かした?」
 彼から突然(とつぜん)別れを告(つ)げられた彼女は、動揺(どうよう)して彼に詰(つ)め寄った。彼からの答(こた)えは、
「別に…。何かさ、お前といても、つまんねえんだよなぁ」
「つまらないって…、それ、どういうことよ。信じられない。あたし、あなたのために…」
「ああ、うざい。もういいかな? これから約束(やくそく)があるんだよ」
「約束? 何よ…、誰(だれ)と会うの?」
「お前には関係(かんけい)ねえだろ。もう別れたんだし、俺(おれ)が誰と付き合おうと――」
「やっぱり他にいたのね。二股(ふたまた)かけるなんて最低(さいてい)! 訴(うった)えてやる」
「ふん、なに言ってんだ? 恋愛(れんあい)に二股も三股もありなんだよ。それに、俺は何もしてないだろ。お前が勝手(かって)に、俺のために金を使ったんじゃないか。もう二度と連絡(れんらく)すんなよ」
 彼はぷいと彼女に背(せ)を向けて去(さ)って行った。――彼女は俯(うつむ)いて、声を押(お)し殺(ころ)して泣(な)いているように見えた。だが次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、彼女の口から笑(わら)い声がもれ出した。それを合図(あいず)に、彼女の背後(はいご)に真っ黒な姿(すがた)の男が現れた。彼女は男に言った。
「契約(けいやく)通りにお願いね。倍返(ばいがえ)しよ。あいつに思い知らせてやる」
 男は暗(くら)い声で、「あなたの怨念(おんねん)は確(たし)かに頂戴(ちょうだい)しました。では、あの男にも同じ屈辱(くつじょく)を味(あじ)わってもらいましょう。それも、倍倍(ばいばい)返しで」
<つぶやき>この男はいったい何者(なにもの)なのか? 憎悪(ぞうお)が生み出した悪魔(あくま)なのかもしれません。
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0720「しずく59~小さな戦士」

2019-11-19 18:28:59 | ブログ連載~しずく

 千鶴(ちづる)の電話(でんわ)のやり取りを盗(ぬす)み見ている二つの影(かげ)。すーっとその場(ば)から離(はな)れると家を抜(ぬ)け出して行った。千鶴はそのことにはまったく気づいていないようだ。
 二つの影は山道(やまみち)を登(のぼ)って、そこから脇道(わきみち)へ入って行った。脇道といっても、ほとんど獣道(けものみち)のようである。しばらく行くと小川(おがわ)に突(つ)き当(あ)たった。子供(こども)でも跨(また)げるような小さな流れだ。草(くさ)をかき分けその川沿いを登って行くと、目の前に高い崖(がけ)が現れた。崖の前は藪(やぶ)になっていて、崖の下の方を覆(おお)い隠(かく)している。二つの影は、その藪の中へ分け入った。
 ――ランプの炎(ほのお)がちらちらと瞬(またた)いていた。一つ、二つ、三つ…。その淡(あわ)い光に照(て)らされて、鍾乳石(しょうにゅうせき)や石筍(せきじゅん)、棚田(たなだ)のような小さな水溜(たま)まりが幻想的(げんそうてき)な風景(ふうけい)を浮かび上がらせている。ここは姉妹(しまい)にとって特別(とくべつ)な場所だった。二人の声が洞窟(どうくつ)の中に響(ひび)いていた。
「やっぱりそうだったのよ。あの人が内通者(ないつうしゃ)だったんだわ」
 ハルは声を震(ふる)わせた。アキはまだ信じられなくて困惑顔(こんわくがお)で呟(つぶや)いた。
「どうして、どうして千鶴おばさんが…。あんなに優(やさ)しくしてくれたのに」
「ここは私たちだけで何とかしなきゃ。あのお姉(ねえ)さんを守(まも)ってあげないと」
「そんなのムリよ。あたしたちだけで、何ができるっていうの?」
「あなただって覚(おぼ)えてるでしょ。パパとママが連れて行かれた時のこと」
「うん、覚えてるよ。あたしたちのこと、敵(てき)に教えた人がいたんだよね。それで…」
「もう、あんなこと絶対(ぜったい)に許(ゆる)さない。私たちも戦(たたか)いましょ。私たちにもできるわ、きっと」
<つぶやき>彼女たちの戦いが始まろうとしています。しずくを守ることができるのか?
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0719「かます」

2019-11-18 18:26:45 | ブログ短編

「なに、話って?」彼は会社(かいしゃ)のロビーで待っていた好子(よしこ)に言った。
 好子はもじもじしながら、「あの、あたし…、ずっと思ってたことが…」
「ごめん、その話、長くなるかな? これから課長(かちょう)と一緒(いっしょ)に出なくちゃいけなくなって…。わるいんだけど、戻(もど)ってからでもいいかな?」
「ああ、もちろん…。あたしの方は別に急(いそ)がないし――」
 彼が彼女から離(はな)れて行くと、もの陰(かげ)に隠(かく)れていた真希(まき)が駆(か)け寄ってきて言った。
「もう、なにやってんのよ。せっかく呼(よ)び出してあげたのに」
「だって、急(いそ)いでるみたいだったし…。それに、こういうことは…、あたし…」
「あーぁ、なに難(むずか)しく考えてんのよ。<好きです>って言うのに五秒もかからないでしょ」
「そりゃ、そうだけど…。あたしには、そういうのムリだよ」
「まったく、あんたは中学生か? そんなんだから男ができないんだよ。いい、好きな男だと思うからいけないの。目の前にあるのは壁(かべ)よ。デッカイ壁だと思えば何でも言えるでしょ。そんで、一発(いっぱつ)ぶちかますつもりで言ってやりなさい。簡単(かんたん)なことでしょ」
「えーっ、それは、ちょっと…。あたしには、思えないかも…」
「はぁ? わたし、イヤなの。白黒(しろくろ)はっきりしないのって我慢(がまん)できない。行くわよ。彼が戻(もど)ってくるまでに、きっちり稽古(けいこ)しなきゃ。そんで、今日中に決着(けっちゃく)つけるからね」
<つぶやき>告白(こくはく)はかますものでは…。でも、ウジウジしてても何も始まりませんけどね。
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0718「告白未遂」

2019-11-17 18:16:49 | ブログ短編

 ある日、彼女は見知(みし)らぬ男に呼(よ)び止められた。男は小さな声で言った。
「あなた、警察(けいさつ)に目をつけられてますよ」
 何もしていない彼女は、怪訝(けげん)そうに男を見た。男は切迫(せっぱく)した感じで、
「あなた、好きな人に告白(こくはく)してませんね。これは告白未遂罪(みすいざい)にあたります」
「なにバカなこと言ってるんですか。そんなの聞いたことありません」
「それは公表(こうひょう)できない事情(じじょう)があるからです。あなたの回りにもいるはずですよ。急に引っ越しをされたお友だちとか、転勤(てんきん)を命(めい)じられた同僚(どうりょう)の方とか…。みなさん、告白未遂罪で逮捕(たいほ)されて、恋愛(れんあい)リハビリセンターへ送られてしまったからです」
「そんなこと…、あるわけないじゃありませんか。変なこと言わないで下さい」
「私はあなたのためを思って言ってるんです。今の生活(せいかつ)を捨(す)てるのか、それとも告白して幸せな結婚(けっこん)をつかみとるのか。勿論(もちろん)、この選択(せんたく)はあなたの自由(じゆう)です」
 彼女は急に不安(ふあん)になった。本当(ほんとう)にそんなことがあるのか…。男は笑(え)みを浮かべて言った。
「心配(しんぱい)はいりませんよ。私共(わたしども)が全面的(ぜんめんてき)に告白をサポートさせていただきます。告白の段取(だんど)りはすべてこちらにお任(まか)せ下さい。あなたは告白だけに集中(しゅうちゅう)して下さればいいんです。今なら格安(かくやす)のお値段(ねだん)でやらせていただきます。勿論(もちろん)、これは成功報酬(せいこうほうしゅう)ですので、断(ことわ)られた場合(ばあい)には無料(むりょう)になっております。ですから、成功するまで何度でもご利用(りよう)いただけます」
<つぶやき>これは新手(あらて)の商売(しょうばい)なのでしょうか? 告白できない人はお気をつけ下さい。
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0717「月の話?」

2019-11-16 18:18:01 | ブログ短編

「今夜(こんや)は…、月がきれいですね」男は女と一緒(いっしょ)に歩きながら夜の空を見上げて言った。
 女は夜空を見上げるが、どこにも月が見当(みあ)たらない。女は男に言った。
「どこにも出てないじゃありませんか。からかわないで下さい」
「別にからかったつもりは…。ですから、<月がきれいですね>って言ってるんです」
 女は首(くび)をかしげながら、また空を見上げる。やっぱり月は見えない。
 女は、「あなたが何を言おうとしているのか分かりません。あたし理系(りけい)なんで、もっと分かるように言って下さい」
 男は一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)いの表情(ひょうじょう)を浮(う)かべたが、意(い)を決したように女を見つめて言った。
「分かりました。確(たし)かに、あなたは理系女子。あなたに分かるようにお話しします」
「はい、お願いします」女は微笑(ほほえ)みを浮かべて、男の方をじっと見つめる。
 これは、男にとってはかなりのプレッシャーだ。でも、ここまで来たら、やるしかない。
「ぼ、僕(ぼく)は…、つまり…、き、きみの…、きみを…、だから…つまり…」
 男は、喉(のど)の奥(おく)まで出かかっていた言葉(ことば)を飲(の)み込んでしまった。代わりに出て来たのは、
「月の話しは、また今度にしましょう。月が出ているときにでも…」
「そうですか…。じゃあ、あたしからも言っていいですか?」
「は、はい。どうぞ…」男は、女に釘付(くぎづ)けになっていた。
「あたしも…、今夜の月は、きれいだと思います」
<つぶやき>もしかしたら脈(みゃく)ありなの? それとも、本当に月の話しをしているだけか…。
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