みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく58〜別の顔」

2016-10-31 19:11:13 | ブログ連載~しずく
 あずみたちが帰った後、千鶴(ちづる)はしずくが寝かされている部屋にいた。じっとしずくの顔を見つめていた千鶴は、ささやくように呟(つぶや)いた。
「この娘(こ)が、本当に救世主(きゅうせいしゅ)になるのかしら…。もしそうだとしたら…。――この娘(こ)が神から選(えら)ばれた者なら、私が何をしても変えることなんか出来ないわよね。そうでしょ?」
 千鶴は、小さなため息をつくと部屋を出た。ちょうどその時、インテリアとして飾られていた古い電話が鳴り出した。千鶴は静かに受話器を取ると耳に当てた。受話器の向こうからは、男の低い声が響(ひび)いてきた。
「予定通りに進んでいるな。こちらから迎(むか)えを送る。準備(じゅんび)しておけ」
 千鶴は感情(かんじょう)のない声で答えた。「その必要(ひつよう)はないです。意識(いしき)が戻らないの、もう私たちの脅威(きょうい)にはならないでしょう。このままここに置いて、様子(ようす)を見た方がいいと思います」
「もしその人間が脅威になりうる能力(ちから)を持っているなら、我々(われわれ)が管理(かんり)しなければならない」
「しかし、ここから動かせば気づかれてしまいます。そうなったら…」
「なるほど。ならばしばらく様子をみよう。もし意識が戻ったらすぐに知らせるんだ。君には本当に感謝(かんしゃ)している。捜(さが)し物をするのに、君の能力は大(おお)いに役(やく)に立っている」
「約束(やくそく)は、ちゃんと守って下さい。ここには手を出さないと」
「もちろんだとも。そこは聖地(せいち)だ。君が裏切(うらぎ)らない限(かぎ)りね」
<つぶやき>電話の相手は誰なのでしょう。千鶴は敵になってしまうのか、それとも…。
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「穴」

2016-10-28 19:08:24 | ブログ短編
 いつもの散歩道(さんぽみち)を歩いていて、私は道路の真ん中に穴(あな)が開いているのを発見(はっけん)した。早朝の時間で車はまったく走っていなかったので、私は穴のそばまで行ってみることにした。
 穴の直径(ちょっけい)は二十センチほどで、中を覗(のぞ)いてみても底(そこ)がまったく見えない。どれだけ深いんだろう? 私は確かめてみたい衝動(しょうどう)にかられた。試(ため)しに手を入れてみた。何も触(ふ)れるものはなかった。少しずつ肘(ひじ)まで入れてみる。それでもダメだった。
 こうなったら…、私は道路に寝(ね)そべって腕(うで)の付け根(ね)まで入れてみた。それでも穴の底にはとどかない。そんなに深いのか? これは警察に知らせないと――。
 そう思った私は、腕を穴から抜(ぬ)こうとした。だが、どういうわけか腕がまったく動かない。いくら抜こうとしても、何かに掴(つか)まれているみたいにびくともしないのだ。私はあせった。今、私は道路の真ん中に横になっているのだ。もし、車が走ってきたら…。
 私は必死(ひっし)になって腕を持ち上げた。何かに挟(はさ)まれているはずはないのだ。腕に何かが触れている感触(かんしょく)はなかった。これは、どういうことだ! 抜けないなんて…。
 そんな時だ。私は更(さら)なる危険(きけん)に気がついた。穴が、少しずつ広がっているのだ。ボロボロと穴のふちが下に落ちていく。最初は二十センチだったのに、今みると三十センチ以上になっていた。このままでは、穴の中へ落ちるのも時間の問題だ。もし落ちたらどうなるんだろう。死んでしまうのか、それとも…。私の中に別の衝動がわき上がってきた。
<つぶやき>危険なことはしないようにしましょ。でも、穴の中には何があるんでしょう?
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「本能」

2016-10-25 19:04:08 | ブログ短編
「別れようなんて…。あたしのこと、きらいになったの?」
「嫌(きら)いとか、そういうことじゃなくて…。なんて言えばいいのか…」
「あたしの、何が気に入らないの? はっきり言ってよ」
「君は悪(わる)くないよ。気に入らないとかそういうことじゃなくて…」
「あたしが、月に向かって吠(ほ)えたりするから? それとも、散歩(さんぽ)している犬(いぬ)に…。あたし、これでも我慢(がまん)してるのよ。だけど、どうしようもないの。これは、あたしの本能(ほんのう)だから」
「分かってるよ、そんなことは。分かってるけど…、君といると落ち着かないんだ」
「そんな…。あなたの方から付き合おうって言ったんじゃない。だから、あたし…。あたし、最初に言ったよね。あたしは、普通(ふつう)じゃないって」
「ああ…、分かってるつもりだったけど…。君の目が…、恐(こわ)いんだ。君に見つめられると、襲(おそ)われるような気がして…。身体がこわばってしまうんだ」
「ごめんなさい。あたし、そんなつもりは全然(ぜんぜん)ないのよ。あなたのこと食べようなんて、そんなこと思ったことない。だって、あなたと会う前には、いつもお腹(なか)いっぱい食べるようにしてるの。だから、安心(あんしん)していいのよ」
「そ…、そうなんだ。じゃあ、お腹が空(す)いていたら…」
「お腹が空いてたってそんなことしないわ。あたし、あなたのこと愛してるのよ!」
<つぶやき>彼女の正体は何なんでしょうか? でも、彼への愛は本物だと思いますよ。
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「ゾンビ現る」

2016-10-21 19:07:54 | ブログ短編
「どうしたの? 遅(おそ)かったじゃない」マコは玄関(げんかん)を開けるなり言った。
 入って来たのは友だちの陽子(ようこ)。彼女が真っ青(さお)な顔をしているのに気づいたマコは、心配(しんぱい)そうに訊(き)いた。
「大丈夫(だいじょうぶ)? どこか具合(ぐあい)でも悪いの? もう、ふらついてるじゃない」
 陽子は、マコに支(ささ)えられるようにしてリビングにたどり着くと、その場にへたり込んだ。そして、マコの手をとってか細(ぼそ)い声で言った。「私、ゾンビになっちゃうみたい」
 マコは、一瞬(いっしゅん)、耳(みみ)を疑(うたが)った。ゾンビって…、まさか、あのゾンビ?
 陽子はたどたどしく話し始めた。「ここへ来る途中(とちゅう)でね、ゾンビが歩いてて…」
「なに言ってるのよ。ゾンビなんか、普通(ふつう)にいるわけないじゃない」
「それが、いたのよ。私、逃(に)げたのよ。でも、そいつ足が早くて…。腕(うで)、噛(か)まれちゃった」
 陽子は噛まれた所をマコに見せた。そこには、しっかりと歯形(はがた)が残っている。陽子は、
「ねえ、お願いがあるんだけど…。私と一緒(いっしょ)にゾンビになってくれない? 私たち、友だちでしょ? 私一人じゃ、心細(こころぼそ)くて…。マコと一緒だったら、少しは…」
 マコは慌(あわ)てて陽子から離れると、「そんなの、イヤよ。何で、あたしがゾンビにならなくちゃいけないの? 冗談(じょうだん)じゃないわよ、絶対(ぜったい)、イヤ!」
 その時、玄関のドアを叩(たた)く音が響(ひび)いた。陽子は笑(え)みを浮(う)かべてささやいた。「来たわ」
<つぶやき>何が来たのかな? いくら友だちの頼みでも、こればっかりはイヤですよね。
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「好きなもの」

2016-10-18 19:23:27 | ブログ短編
「ねえ、亜利沙(ありさ)って、何か癒(い)やされるものってあるの?」
 京子(きょうこ)の質問に、ぽっちゃり系の良江(よしえ)が横から割(わ)り込んできて、「あたしは、甘(あま)い物を食べてるときかな。もう、イヤなこと全部忘(わす)れて、幸せな気持ちになれるの」
「はいはい、それはみんな知ってるよ」京子は頷(うなず)きながら言った。
 ちょっと謎(なぞ)めいた雰囲気(ふんいき)がある亜利沙は、おどおどしながら答えた。
「わたしは、そういうのは…、別に…」
「何かあるでしょ? 亜利沙って、美人だし、きっとモテるんでしょうね」
「そ、そんなことないよ。わたしなんか…。あの、ちょっと違(ちが)うかもしれないけど…、わたしの好きなものはね。でも…、これ言うと、みんな笑(わら)うわ。だから…」
「笑わないよ、約束(やくそく)する。あたしたち、友だちじゃない。ねえ、教えてよ」
「じつはね、わたしの好きなものはね……、にのうで…、なの」
 二人はきょとんとして亜利沙の顔を見つめた。亜利沙は自分の二の腕(うで)を見せて興奮(こうふん)したように、「ここの、ぷにゅぷにゅ感がたまらないの。これは猫(ねこ)の肉球(にくきゅう)にも勝(まさ)るとも劣(おと)らないわ。だから良江の二の腕を見たとき、わたし、震(ふる)えたの。触(さわ)りたくてうずうずして…」
 良江は戸惑(とまど)いながらも言った。「あ、あたしのでよかったら、いつでも…」
「ありがとう。夏の間ね、わたし、ずっと我慢(がまん)してきたの。だって回りには二の腕だらけじゃない。もう毎日が拷問(ごうもん)って感じで…。だからわたし、なるべく出かけないように――」
<つぶやき>やっと願いがなかったみたいで良かったです。嗜好(しこう)は人それぞれなんですね。
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