みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「不老長寿」

2013-12-29 18:44:04 | ブログ短編
 彼と一緒(いっしょ)に海釣(うみづ)りに出かけた。私は初心者なのだが、彼の影響(えいきょう)で釣りが楽しくなりはじめていた。でも彼のこだわりがすごくて、うっとうしいくらい。私はいちいち指図(さしず)されるのが嫌(いや)で別の場所で釣りをすることにした。さすがに彼も心配したみたいで、怒って離れていく私に叫(さけ)んだ。
「岩場は危(あぶ)ないから、あんまり遠くまで行くなよ! おい、聞いてんのか!」
 私に彼の忠告(ちゅうこく)を聞く余裕(よゆう)などなかった。どのくらい歩いただろう、とても景色(けしき)のいい場所に出た。ここなら、きっと大物(おおもの)が釣れるかも。私は何だか嬉(うれ)しくなった。近づいて行くと、岩場の陰(かげ)に人の姿を見つけた。いかにも名人(めいじん)という感じのおじいさんで、真剣(しんけん)な表情で釣り糸の先を見つめていた。私は恐る恐る近づいて声をかけた。でも、おじいさんは気さくに答えてくれて、隣(となり)で釣りをしてもいいと言ってくれた。私はさっそく釣りを始めた。
 しばらくして、おじいさんの竿(さお)が大きく揺(ゆ)れた。そして、いとも簡単(かんたん)に大物を釣り上げてしまった。でも、おじいさんは魚から釣り針を外(はず)すと、そのまま海へ魚を投げ入れた。
 私は驚いて、「どうして逃がしちゃうんですか? もったいないですよ」
 おじいさんはまた釣り糸を海に垂(た)らすと、「わしが狙(ねら)ってるのは人魚(にんぎょ)なんじゃよ」
「人魚?」私は自分の耳を疑(うたが)った。だって、人魚なんておとぎ話の――。
 おじいさんはにっこり微笑(ほほえ)むと、「人魚の肉を食うとな、不老長寿(ふろうちょうじゅ)になると言われてるんじゃ。わしは、もうここで百年ほど、こうして毎日釣りをしとるんじゃ」
<つぶやき>このおじいさんは人魚を食べたのでしょうか? それとも、海の妖怪なの!
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「ツンデレ」

2013-12-27 19:36:58 | ブログ短編
「だから、これは違うでしょ。何度言ったら覚えてくれるのよ。しっかりしなさいよ!」
 貴子(たかこ)は後輩(こうはい)の男性社員に猛烈(もうれつ)に注意した。たまりかねて、近くにいた和美(かずみ)が間(あいだ)に入る。
「まあまあ、それくらいでいいじゃない。後は、私からよく言っとくから。ねっ」
 貴子はツンツンしながら行ってしまった。和美はしょげ返っている男性社員に、意味深(いみしん)な顔をして訊(き)いた。「あんたさ、貴子のこと、どうよ?」
「えっ、どうって?」
「だからさ、女としてよ。好きになっちゃうとか」
「いや、それは…。まあ、可愛(かわい)いかなとは思いますが…」
「じゃあ、付き合っちゃいなさいよ。貴子もさ、あんたのこと気にしてるよ」
「いやいや、それは無理(むり)ですよ。だって、嫌(きら)われてるじゃないですか、僕」
「違うなぁ。私のカンだけど、あんたのこと気に入ってると思うんだよね」
「どこがですか? 今もあんな恐い顔して、めちゃくちゃ言われてるじゃないですか」
「そこよ。貴子さ、ツンデレだから。人前ではああなっちゃうの。心で思ってることの反対(はんたい)のことをしちゃうわけ。でもね、二人っきりになれば、フフフ。いい、これから私が二人っきりにさせてあげるから。今夜、貴子を食事に誘いなさい。大丈夫(だいじょうぶ)、私に任(まか)せなさい」
「ちょっと待って下さいよ。そんなこと突然(とつぜん)言われても…。僕、困ります」
<つぶやき>でも、これってかなりのバクチですよね。カンを信じちゃっていいのかな?
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「しずく2~食いしん坊」

2013-12-24 18:40:57 | ブログ連載~しずく
 しずくは背中に激痛(げきつう)を感じて呻(うめ)き声を上げた。彼女が目を開けると、道路から三メートルほど離れた塀(へい)の前にうずくまっていた。さっきの激痛はその塀にぶつかったせいだ。しずくの腕の中で、子供が大きな声で泣き出した。しずくはホッと息をつく。
 トラックがエンジン音をあげて走り去って行った。子供の母親が駆(か)け寄ってきて、しずくの腕から子供を抱きあげる。そして、母親は何度もしずくに礼(れい)を言った。
 しずくは家に帰ると、そっと二階の自分の部屋へ入った。制服は汚れているし、母親に見つかったらどう説明すればいいのか分からない。トラックの前に飛び出して子供を助けたなんて言ったら、きっと母親は目を丸くして気絶(きぜつ)してしまうだろう。
 着替(きが)え終わると、しずくは階下(した)へ降りて行く。母親はキッチンで夕食の支度(したく)をしていた。母親はしずくに気がつくと、「いつ帰って来たの? 今日は早いじゃない」
「ただいま。お腹空(なかす)いちゃった。今日の夕飯はなに?」
 しずくはテーブルの上のおかずに手を伸(の)ばす。すると、すかさず母親が言った。
「手を洗ってきなさい。つまみ食いはダメだからね」
 しずくはペロッと舌(した)を出して退散(たいさん)した。母親には何でもお見通(みとお)しなのだ。後(うしろ)にも目があるようで、たいていのことは見つかってしまう。母親には隠(かく)しごとはできないのだ。でも、今日のことは内緒(ないしょ)にしないと。家族に心配をかけるわけにはいかないから。
<つぶやき>こっそりつまみ食い。これはやめられないよね。でも、母親にしてみると…。
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「妄想の狭間」

2013-12-22 18:41:44 | ブログ短編
「は~ぃ、あたしが食べさせてあげる。お口、あ~んして」
 僕は彼女の声で目を覚ます。目の前には、僕の憧(あこが)れの彼女がいて、卵焼きを僕の口のほうへ――。僕は、思わずのけぞった。何じゃこりゃ! こんなことあり得(え)ない。
 確かに、僕は彼女との恋愛(れんあい)を何度も何度も妄想(もうそう)していた。あんなことや、こんなことまで…。今、目の前で起きていることは、僕の妄想の世界にほかならない。きっとこれは、僕が変な妄想を膨(ふく)らませ過(す)ぎたから、妄想の世界に取り込まれてしまったんだ。
 どこからか声がした。「何やってんだよ。チャンスじゃないか、食べさせてもらえよ」
 その声は紛(まぎ)れもなく自分の声だ。僕は考えた。このまま、欲望(よくぼう)のおもむくままに突き進んだら、絶対、元の世界に戻れなくなる。踏(ふ)みとどまるんだ! また声がした。
「なにビビってんだよ。ここで引いたら男じゃないぞ。それでもいいのか?」
 かまわない。それでも全然(ぜんぜん)かまわない。だって僕の憧れの彼女が、こんなことをするなんて…。僕は、彼女を冒涜(ぼうとく)することなんてできない。そんなこと許(ゆる)されないんだ!
「ね~ぇ、山田くん」彼女が優しく僕に微笑(ほほえ)みかけてくる。「山田くん。山田くん…」
 僕は目覚(めざ)めた。そこは教室で、僕は元の世界に戻れたんだ! 僕は思わず叫んだ。そして、隣の席にいた彼女の手を取り、「ありがとう。君のおかげで――」
「コラ、山田! 授業中だぞ。なに寝ぼけてるんだ!」
<つぶやき>この後、憧れの彼女から手痛いビンタをくらったのは、間違いないだろう。
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「旅の目的」

2013-12-20 18:32:58 | ブログ短編
「あたしね、あの雲(くも)になりたいなぁ。風の吹くままに、いろんなとこを旅するの」
 鈴音(すずね)は観光地のお休み処(どころ)で、まったりと抹茶(まっちゃ)をすすった。隣にいた秋穂(あきほ)は音をたてて抹茶を飲み干すと、「私は嫌だな。そんなの時間の無駄よ。さあ、行くわよ。私たちにはのんびりしてる暇(ひま)はないの」
「えっ、もう少しいいじゃない。さっき座ったばっかだよ。ここからの眺(なが)め、すっごく良いんだから、もう少しいようよ」
「あのさ、景色(けしき)なんてパッと見ればそれで充分(じゅうぶん)よ。もう、あんたのおかげで予定がどんどん遅れてるんだから。このままだと旅館(りょかん)に着くの夜になっちゃうよ」
「そうなの? それは大変ね。じゃあ、行くわ」
 鈴音は茶菓子(ちゃがし)を頬張(ほおば)ると、あたりをキョロキョロ見回して、
「ところで、ここからどうするの。バスとかあるのかな?」
「なに言ってるの。ここからは歩きよ。四時間かけて旅館まで歩くわよ」
「えっ! そんなこと聞いてない。ねえ、タクシーで行こうよ」
「私たちの旅の目的(もくてき)、忘れたの? 美味(おい)しいものを美味しく食べよう。そのためには、お腹(なか)を空(す)かしておかなきゃ。いい、ここからが私たちの勝負(しょうぶ)よ」
「何か、それって違(ちが)うんじゃない? そこまでしなくても……」
<つぶやき>旅の目的は人それぞれです。どんな旅でも、良い思い出になるんじゃない。
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