みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「妻の勘」

2013-11-29 10:32:27 | ブログ短編
 さっきから妻(つま)の視線(しせん)をビリビリと感じている。家事(かじ)の合間(あいま)にチラチラと僕の方をうかがっているようで、テレビを見ていても何だか落ち着かない。でも、わざわざこっちから地雷(じらい)を踏(ふ)みに行くような行動は自殺行為(こうい)だ。だから、平静(へいせい)を装(よそお)って気づかない振(ふ)りをしていた。
 私の妻は妙(みょう)に勘(かん)がいいところがある。まさか、あのことがバレたとか…。いや、そんなはずはない。だって、あれはちゃんと見つからない場所に隠してあるし――。でも、後で確かめておかないと。
 僕は、やましいことをしているわけではない。ただ、この前の誕生日に、会社の女の子からプレゼントをもらっただけだ。別に、彼女とは特別な関係でもないし、ただの会社の同僚(どうりょう)である。でも、私の妻は変に勘ぐるところがあるから、内緒(ないしょ)にしておいた方がいいかなって…。これも、妻への愛情(あいじょう)である。
 また妻の視線が僕をとらえた。妻は家事の手を止めると、僕の方へ近づいて来る。何だ、何だ、これは…。僕は背筋(せすじ)に冷たいものが走った。妻は、僕の横に座る。無言(むごん)だ。何か言ってくれよ。僕は妻と視線を合わせないように、テレビ画面から目を離さない。もし、妻と目が合ったら、それで最後だ。その先に待っているのは、考えただけでも…。
 妻は僕の耳元(みみもと)で囁(ささや)いた。「ねえ、あなた。あたし、欲しいものがあるんだけど…」
<つぶやき>これはどういうことだ。バレてるのか、それともただのおねだりなのかな?
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「すみれの恋2」

2013-11-26 09:45:44 | ブログ短編
 それは突然(とつぜん)の出来事(できごと)だった。僕が配達(はいたつ)から帰ってくると、店の電話が鳴り出した。僕は受話器を取って、「毎度(まいど)ありがとうございます。山中(やまなか)酒店です」
 電話の向こうで誰かのすすり泣く声が聞こえた。そして、男性の声で、
「あの、そちらに健太(けんた)さんという方が…」
「僕ですけど…。あの、どちら様でしょうか?」
 ――それは、すみれのおじいさんからの電話だった。彼女が、ついさっき息を引き取ったと。僕は、何のことかまったく理解できなかった。だって、昨夜(ゆうべ)、会って、おしゃべりして、元気だったじゃないか。僕は店を飛び出すと、病院まで車を走らせた。
 すみれは、病院のベッドで静かに横たわっていた。僕は、そこで彼女の病気のことを聞かされた。余命(よめい)半年――。彼女は、残りの時間をベッドの中ではなく、なつかしい故郷(ふるさと)で過ごすことを選んだ。たとえ、寿命(じゅみょう)が短くなっても…。
 何で話してくれなかったんだ。僕は叫(さけ)びたくなる気持ちをグッとこらえた。
「これを…」おばあさんが僕に手紙を差(さ)し出して、「すみれが、あなたに渡してと。あの娘(こ)、あなたのことばかり話してました。よほど楽しかったんでしょうね」
 僕は震える手で手紙を受け取った。手紙には、たくさんのごめんが書かれていた。そして最後に、〈ありがとう。あなたに会えてよかった〉と…。僕は、涙があふれてきた。
<つぶやき>例え短い時間でも、彼女は最後の最後まで精一杯生きたんじゃないのかな。
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「すみれの恋1」

2013-11-24 18:32:32 | ブログ短編
 僕がすみれに再会(さいかい)したのは、本当に偶然(ぐうぜん)だった。配達(はいたつ)が早く終わって時間が空(あ)いたので、近くの海岸まで足をのばした。そこは学生の頃、学校帰りによく友達と行っていた場所。すみれと初めて会ったのも、そこだった。
 その頃のすみれは、ちょっと変わっていた。いつも一人で、海岸の岩の上に座って海をずっと見つめていた。どんなきっかけで話すようになったのか思い出せないが、彼女の凜(りん)とした横顔ははっきり覚えている。
 僕にとっては初恋だった。でも、彼女が突然(とつぜん)引っ越すことになり、一年足(た)らずで終わってしまった。その彼女が、すみれが、昔と同じ場所に座っている。僕は思わず彼女の名前を叫(さけ)んでしまった。駆(か)け寄(よ)ってくる僕のことが分かったのか、彼女は昔と変わらない笑顔を見せてくれた。息をはずませている僕を見て、彼女は言った。
「酒屋のケンちゃんだよね。ちっとも変わってない。ほんと、なつかしい」
「おおっ…」僕は大人になったすみれを見て、何だかまぶしくて言葉にならなかった。
 それから僕たちは、途切(とぎ)れた時間を取り戻すように何度も何度も二人で会った。昔の話や、別れてからの出来事を競(きそ)うようにいっぱい話して、いっぱい笑った。――でも、僕は知らなかった。彼女の、本当の気持ちを。それを知っていれば、それを気づいてあげられれば、もっと違(ちが)う時間を過(す)ごすことができたのかもしれない。
<つぶやき>淡い初恋。青春の切なくて甘酸っぱい…。彼女はなぜ戻って来たのでしょう。
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「幸運の使い」

2013-11-22 09:55:31 | ブログ短編
 私には運命(うんめい)の黒猫がいる。私が勝手にそう呼んでいるだけで、自分ちの飼い猫というわけではない。私の人生の転機(てんき)に、どこからともなく現れる。その猫が笑っていれば好運、そうでなければ悪いことが起きる。不思議に思うかもしれないが、実際(じっさい)そうなのだから仕方(しかた)がない。猫は笑わないっていう人もいるけど、ほんとに笑うんだから…。
 最初に出会ったのは、私の大学入試(にゅうし)の頃。でも、もっと前から知っているような気がした。その時は、笑った顔を見せてくれて、志望校に一発で合格した。
 それから四年。今は就活(しゅうかつ)の真っ最中(さいちゅう)。何社も面接(めんせつ)を受けたが、何度も何度も落ちまくっている。面接の帰り道、あの黒猫に出くわしたが、笑った顔を見せてくれたことはなかった。ひどい時は、私の前に姿すら見せてくれない。
 とうとう、私の好運もここまでか…。私は自暴自棄(じぼうじき)になりかけていた。回りのみんなは就職(しゅうしょく)が決まったと浮(う)かれまくり、私のことなんか気にもとめない。あの黒猫もきっとそうよ。私のことなんか忘れてしまったんだわ。
 私はたいして期待(きたい)もしないで、最後の面接に向かった。この会社がダメなら、もうプー太郎確定(かくてい)である。暗い気持ちで家を出る。しばらく歩いて行くと、目の前にあの黒猫が座っていた。黒猫は私を見ると、満面の笑顔で、「ニャ」と短く鳴いた。
<つぶやき>誰しもが幸運を求めています。でも、そう簡単に手にすることはできません。
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「かげぼうし」

2013-11-20 19:22:06 | ブログ短編
 私のかげぼうしはおしゃべりだ。ことあるごとに私に話しかけてくる。それも、ほとんどが私へのダメ出しで、今日の服は全然似合(にあ)ってないとか、化粧が下手(へた)すぎ、などなど…。あげくは、そんなんだから彼氏ができないのよ、と私に最後のとどめを刺(さ)すのだ。
 最近はだいぶ慣(な)れてきて、聞き流すようにしている。それでも我慢(がまん)できない時は、日陰(ひかげ)に入る。そうすると、おしゃべりはピタリと止(や)んでしまう。
 かげぼうしの言ってることは正しいって、私もちゃんと自覚(じかく)してるし。私だって、それなりに勉強して努力はしてるの。それなのに、真っ黒黒の影(かげ)にそんなこと言われたくない。
 今日は、知り合ったばかりの彼と初めてのデート。服装もバッチリだし、髪型やメイクも完璧(かんぺき)よ。これなら、私のかげぼうしもダメ出しなんかしてこないはず。
 待ち合わせの場所で彼を待っている間、私のかげぼうしはひと言も話しかけてこなかった。私は何だが勝ち誇(ほこ)った気分になる。彼が来ると、私たちは歩きだした。何だが二人ともぎこちなくて、手を握(にぎ)ることもできなかったけど…。
 私たちと同じように、二人の影が目の前を歩いている。でもよく見ると、二人の影は手をつないでいた。そして、見る見るうちに二人の影が近づいてひとつになる。その時だ。私のかげぼうしがこっちを振り返り、どうだと言わんばかりにニヤリと笑った。私は愕然(がくぜん)として、思わず彼の腕(うで)にしがみついてしまった。
<つぶやき>まごまごしていると、かげぼうしに先越されてしまうかも。ご注意下さい。
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