みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「普通の人」

2013-06-29 19:12:38 | ブログ短編
 マモル君は彼女から突然別れを告(つ)げられた。その別れる理由を訊(き)いてみると、
「だって、普通(ふつう)すぎるんだもん。もっとさぁ、何かないの?」
「普通って何だよ。そりゃ、確かに僕は運動も苦手だし、勉強だってそんなに…」
「あたしさぁ、前(まえ)付き合ってた人が頭(あたま)良すぎたの。だから今度は普通がいいかなって」
「えっ? そんなんで、僕に告白したのかよ。僕のこと好きなんじゃ…」
「う~ん、好きになるかなって思ったんだけど。やっぱ、無理みたい」
「何でだよ。僕たち、付き合い始めて二日目だろ。まだ、僕のこと何にも――」
「あのね、あたし、よく考えてみたの。この先あなたと付き合って、何か楽しいことあるかなって。でもね、何にも思いつかなかったわ。だから、別れましょ」
 マモル君の中で何かが切れた。彼はいきなり彼女の腕をつかむと、ぐいぐいと歩き始めた。彼女はされるがままに、引きずられるようについて行く。
「ねえ、どこに行くのよ。あたし、これから――」
「いいから、ついて来いよ。これから楽しいことするんだから」
「イヤよ。ちょっと離して。あたし、帰る」
 この後、二人の姿は小さな農園にあった。意外にも、彼女はとても楽しそうだ。大根(だいこん)を引きぬきながら、笑顔を見せてはしゃいでいた。
<つぶやき>普通って何でしょう。みんなそれぞれ違って、いろんな人がいるから面白い。
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「お前は天才だ」

2013-06-27 20:14:49 | ブログ短編
「お前は天才だなぁ。すごいじゃないか」父親は息子の頭をなでながら言った。
「ありがとう、パパ」息子は得意気(とくいげ)な顔で満面(まんめん)の笑(え)みを浮かべた。
 しかし、翌日から息子は勉強をさぼるようになった。宿題も手をつけようともしない。
 息子が言うには、「だって、僕は天才だから、勉強なんてバカらしくて…」
 父親はどうしたものかとヘラヘラと笑うばかり。でも、母親はそれを良(よ)しとはしなかった。息子の首根(くびね)っこをつかむと、「あんたは天才でもなんでもない。何の努力もしないで、何ができるっていうの? そんなことしてると、パパみたいになっちゃうからね」
 母親のキツいひと言で、息子は自分の部屋へ引っ込んだ。父親は疑問(ぎもん)に思って訊(き)いた。
「ママ、今のって…、どういうことかな?」
「はぁ? そのまんまの意味よ。あなた、勉強を見てくれるのはいいのよ。でも、天才とか、そういう余計(よけい)なことは言わないで。あの子、あなたと同じでお調子(ちょうし)もんなんだから」
「でも、あれは、あの子のやる気を引き出すために…」
「やる気ねぇ。あなたも、もっとやる気を出して出世(しゅっせ)とかしてよ。お願いだから」
「いや、それは…。あの、今はあの子の勉強の話を…」
「あなた、あの子の成績とか知ってるの? 仕事仕事って、今までそういうこと聞こうともしなかったくせに。あたしが、今までどれだけがんばって――」
<つぶやき>会社でも家庭でも、人を育てるのは大変です。長所を伸ばしてあげようね。
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「父親の心配事」

2013-06-25 20:35:25 | ブログ短編
 和則(かずのり)は妻から妊娠(にんしん)を告げられたとき、飛び上がらんばかりに喜んだ。いよいよ出産という時も、妻よりもハラハラドキドキして仕事も手につかない状態だった。
「あなたが産むわけじゃないのよ。心配しないで」と妻の方が冷静(れいせい)だった。
 産まれたのは女の子。和則は赤ちゃんの顔を見るなり、子供のように泣き出した。
 この日から、和則の父親としての心配事が始まった。和則は妻に宣言(せんげん)した。
「この子は、箱入(はこい)り娘として大切に育てるぞ。そのつもりでいてくれ」
「あなた、この子はまだ赤ちゃんですよ。今からそんなこと…」妻は呆(あき)れるばかりだ。
「もし、変な男が近寄って来たらどうするんだ。僕たちが守ってやらないと」
 妻は少しからかうように、「そうね。あなたも学生だった私のこと…」
「僕は、真面目(まじめ)だけがとりえの男だ。変な男じゃないぞ」
 和則はふと考えた。「そうか、そうだよな。学校へ行くようになれば、男との接触(せっしょく)も増えてしまう。そうなると…。これは、まずいぞ。今のうちにちゃんとした学校を――」
「もう、今からそんな心配してどうするの? 大丈夫よ。私たちの子供なんだから」
「あのな、そんなことどうして言えるんだ。この子には絶対幸せになってもらわないと。そのためにも、ちゃんとした男と結婚をさせて…」
<つぶやき>父親の心配は際限(さいげん)なく膨(ふく)らむもの。そこには妻とは別の、娘への愛がある。
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「第三の人生」

2013-06-23 18:42:06 | ブログ短編
「だから、何であたしにつきまとうのよ。もう、いい加減にして」
 加奈子(かなこ)は誰もいないはずの隣(となり)の席へ向かって呟(つぶや)いた。
「わしの第三の人生は、人助けをすることに決めたんじゃ。あんた、ほんとは困ってるんだろ?」
 加奈子は首を振り、「いい。やめてよ。もう、あたしの前から消えて」
「そう言われてもなぁ。わしは浮遊霊(ふゆうれい)だから、どこへでもついて行けるんじゃ」
 その時、男が店に入って来た。男は加奈子を見つけると、彼女の前の席に滑(すべ)り込んだ。
「わるいな、無理言って」男は加奈子の手を取ると、にっこり微笑(ほほえ)んだ。
 霊のおじいちゃんは、男が伸(の)ばした手をつかむ。男は身震いして手を引っ込めた。
「こいつはダメじゃ。あんたを幸せにすることはないぞ。苦労するだけじゃ」
 何も知らない男は、「加奈(かな)だったら、絶対助けてくれるって思ってたんだ」
「おいおい。こいつに貢(みつ)いでも何も返ってこないぞ。あんたが損(そん)をするだけじゃ」
 男と霊の言葉が彼女の回りを渦巻(うずま)いていく。加奈子は両手で耳をふさいだ。
「どうしたんだよ? 金、持って来なかったのか?」男は心配する素振(そぶ)りもない。
「もう…、もう、いい加減にして! あたしの前から消えなさい」加奈子は思わず立ち上がると男に向かって叫んだ。「あんたもよ! どうせ他の女に使う金でしょ。あたしが知らないとでも思ってるの。もう、うんざりよ! 二度とあたしの前に現れないで!」
<つぶやき>もし第三の人生があるとしたら…。あなたはどういう人生を過ごしますか?
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「心の波紋」

2013-06-21 19:27:21 | ブログ短編
 昔のサークル仲間が集まって飲み会が開かれた。僕は遅れて行ったのだが、十年ぶりぐらいの再会で、なつかしい顔が並んでいた。僕はその中の一人にくぎ付けになった。
 まさか、彼女が来ているなんて思ってもいなかった。――僕がずっと好きだった人。昔とまったく変わらないその微笑(ほほえ)みに、僕の心はざわついた。今さらどうしちゃったのか。彼女のことは、もうとっくに忘れていたはずなのに。
 彼女が僕の方に近づいて来る。僕の心臓は高鳴った。彼女は屈託(くったく)のない笑顔で僕に話しかけてきた。何でそんなふうにできるのか。そりゃ、確かに彼女とはそういうあれじゃなかったけど…。デートらしいデートもしてないし。僕が勝手(かって)に恋心をふくらませていただけかもしれないけど。でも、彼女だって気づいていたはずだ。僕が好きだったってこと。
 僕たちは昔話に花を咲かせた。僕にとってはちょっと切ない思い出…。笑っている彼女を見ていると、今、幸せなんだってことが分かる。彼女の薬指には指輪も輝(かがや)いているし。
 僕は葛藤(かっとう)していた。今すぐこの場から逃げ出したい気持ちと、彼女のとこをずっと見つめていたい気持ち。――何で僕は来てしまったんだろう。会わなければよかった。そしたら、こんな思いをすることもなかったのに。今さらそんなことを言っても仕方(しかた)がない。そんなこと分かってる。僕の心に広がった波紋(はもん)は、いつまでもどこまでも広がっていく。
 僕は、自分の指輪をさわりながら妻の顔を思い浮かべた。――僕は、昔の僕じゃない。僕には大切な人がいる。そして、僕は今、とっても幸せなんだ。
<つぶやき>昔の恋はいつまでも心に残っているものです。大切にしまっておきましょう。
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