みけの物語カフェ ブログ版

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0730「しずく61~存在削除」

2019-11-29 18:46:15 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは学校では友だちを作ることはしなかった。同じ場所(ばしょ)に何時(いつ)までいられるか分からないし、それに友だちがいるとそれが足かせになる場合(ばあい)があるからだ。それだからだろう、つくねが教室(きょうしつ)に入ってきても声をかける生徒(せいと)は誰(だれ)もいない。
 教室の中はいつもと変わらなかった。生徒(せいと)の一人が焼死(しょうし)していることになっているのに、悲(かな)しんでいる様子(ようす)は微塵(みじん)も感じられない。さらに、しずくが使っていた机(つくえ)は水木涼(みずきりょう)が使っていた。さり気なく、つくねは涼に聞いてみた。すると涼は、
「しずくってだれ? 私、ずっとこの席(せき)だったでしょ。変なこと言わないでよ」
 こう言われてしまっては、つくねもそれ以上(いじょう)は何も訊(き)けなかった。同じことが職員室(しょくいんしつ)でもあった。柊(ひいらぎ)あずみが手にした出席簿(しゅっせきぼ)にはしずくの名前(なまえ)が消(き)えていて、在校(ざいこう)していた記録(きろく)すら残(のこ)ってはいなかった。
 昼休みになって、校舎(こうしゃ)の屋上(おくじょう)にあずみとつくねの姿(すがた)があった。つくねがため息(いき)まじりに呟(つぶや)いた。
「しずくのこと、誰(だれ)も覚(おぼ)えてないみたい。いないことにされちゃうなんて…」
「能力者(のうりょくしゃ)の仕業(しわざ)ね。記憶(きおく)が操作(そうさ)されているんだわ。ここまでやるなんて、あいつらはしずくを完全(かんぜん)に消したがっているんだわ。今のうちに何か手を打たないと」
「あたし、ちょっと気になる娘(こ)がいるんだけど、あの石(いし)で確(たし)かめてみてもいいかしら?」
「それはいいけど…。でも、あなた一人では危険(きけん)よ。私も一緒(いっしょ)の方がいいわ」
<つぶやき>気になる娘って誰でしょう? 敵(てき)の姿(すがた)をつかむことができるのでしょうか。
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