みけの物語カフェ ブログ版

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1326「紛失事件」

2022-11-10 17:30:02 | ブログ短編

 探偵(たんてい)がその屋敷(やしき)に呼(よ)ばれたのは、夜の七時を少し過(す)ぎた頃(ころ)だった。屋敷では、娘(むすめ)の誕生(たんじょう)パーティーが開かれていて、広間(ひろま)には十数名の男女が集まっていた。屋敷の主人(しゅじん)の話しでは、娘へのプレゼントとして用意(ようい)した大粒(おおつぶ)のサファイアが紛失(ふんしつ)した、ということだった。
 探偵は主人の説明(せつめい)を聞きながら部屋(へや)を歩き回った。そして、隅(すみ)に置(お)かれた陳列台(ちんれつだい)の前で、
「なるほど…。この台の上にサファイアがあったわけですね。誰(だれ)でも手に取(と)ることができた。すぐに私に連絡(れんらく)をしたのは賢明(けんめい)でしたな。この屋敷から出たものは誰もいないわけだ」
 探偵は、使用人(しようにん)も含(ふく)めてこの屋敷にいた者を広間に集めさせた。そして、ひとりひとりじっくり観察(かんさつ)を始めた。探偵は一言も言葉(ことば)を発(はっ)しなかったので、見つめられた人たちは何とも不気味(ぶきみ)に感じたようだ。誰もが不安(ふあん)な顔つきになっていた。
 探偵は女性の客の前で足を止めた。探偵は吹(ふ)き出しそうになるのを我慢(がまん)しているようだ。
「これは失礼(しつれい)…」探偵はその女性に言った。「なかなか面白(おもしろ)い髪型(かみがた)ですね。斬新(ざんしん)だ」
 その女性は長い髪を結(ゆ)い上げていて、まるで大きな団子(だんご)を乗せているようだった。
 一通り作業(さぎょう)が終わると、探偵は客たちを見回して言った。「犯人(はんにん)は分かりました。私から、ひとつだけ忠告(ちゅうこく)を…。この屋敷から出た時点(じてん)で、あなたは犯罪者(はんざいしゃ)になります。そして、私から逃(のが)れることはできない。もし、それがお嫌(いや)なら、宝石は…どこでもいいです。この屋敷の内(うち)に置いて行かれることをお勧(すす)めします。では、パーティーを楽しんでください」
<つぶやき>犯人は、ほんの出来心(できごころ)だったのかもね。でも、犯人は誰だったのでしょうか?
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