みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0235「別れる理由」

2018-06-20 18:47:30 | ブログ短編

「何で?」真希(まき)は彼が突然(とつぜん)言い出したことが理解(りかい)できなかった。
「だから、僕(ぼく)たち別れよう。きっと、その方が良いと思うんだ」
「だから、どうしてそうなるのよ。私たち、愛し合ってるじゃない」
「アリサが…。今朝(けさ)、亡(な)くなったんだ。もう、君(きみ)と付き合っていく気力(きりょく)が…」
「アリサって、あなたが飼(か)ってるカメよね。……そうなんだ。それは、大変(たいへん)だったわね」
 真希は、彼がカメを可愛(かわい)がっていたことは知っていたし、見せてもらったこともある。でも、そのことが別れる理由(りゆう)なんて、全く納得(なっとく)ができなかった。
「もう、僕は誰(だれ)も愛せないんだ。分かってくれよ」
「分からないわよ。じゃ、なに。私より、カメの方を愛してたってこと」
「僕が小さい頃(ころ)から、ずっとそばにいてくれたんだ。アリサがいなくちゃ」
「じゃあ、新しいカメを飼えばいいじゃない。アリサって名前をつけて…」
「アリサの代(か)わりなんていないよ! 君は、どうしてそんなひどいことが言えるんだ」
 彼はけしてダメな人間(にんげん)じゃなかった。とっても優(やさ)しいし、顔だって悪くない。欠点(けってん)があるとすれば、カメに依存(いそん)しすぎることだ。真希は荒療治(あらりょうじ)をすることにした。
「あなたのお母さんから聞いたんだけど。10年前にアリサは死んでるのよ。知らなかったでしょ。さあ、ぐだぐだ言ってないで、カメを買いにいくわよ」
<つぶやき>何があっても動じない。そんな強い女性に男は惹(ひ)かれるのかもしれません。
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