みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0774「極秘書類2」

2020-01-13 18:19:08 | ブログ短編

 そこで男は考えた。こんなのを持っていては、気が散(ち)って仕事(しごと)に身(み)が入らない。それに、それが原因(げんいん)でミスをしてしまうかもしれない。もし会社(かいしゃ)に損害(そんがい)を出してしまっては…。
 男は手に持った茶封筒(ちゃぶうとう)をおばちゃんに渡(わた)そうとしたが、急に手を引っ込めて言った。
「やっぱりダメだよ。自分(じぶん)で持ってないと、もし何かあったら…」
「律儀(りちぎ)なんだね。気に入った。あんたみたいな社員(しゃいん)は大切(たいせつ)にしないとね。さあ、何も心配(しんぱい)することはないんだよ。わたしが悪(わる)いようにはしないからね」
 おばちゃんは手を出して、にこやかに肯(うなず)いて見せた。男はしばらく迷(まよ)っていたが、思い切って封筒を差(さ)し出した。おばちゃんは封筒を受け取ると、
「明日を楽しみにしてなさい。あんたには、ちゃんと礼(れい)をするからね」
 ――翌朝(よくあさ)。男は寝不足(ねぶそく)の目をこすりながら出社(しゅっしゃ)した。本当(ほんとう)に大丈夫(だいじょうぶ)なのか気が気でなかったのだ。早速(さっそく)、男は掃除婦(そうじふ)のおばちゃんを捜(さが)した。でも、毎朝いるはずの場所(ばしょ)におばちゃんの姿(すがた)はなかった。さあ、ますます男はあせった。自分のデスクに戻(もど)ると、上司(じょうし)から社長がお呼(よ)びだと伝(つた)えられた。男はびくびくしながら社長室へ向かった。
 社長室へ入ると、社長は口をへの字に曲(ま)げて立っていた。男は駆(か)け寄って頭を下げようとして、ハッとした。社長の椅子(いす)におばちゃんが座(すわ)っていたのだ。社長がぼそぼそと言った。「こちらが…、会長(かいちょう)だ。君(きみ)は、どうしてあれを――」
 おばちゃんが口を挟(はさ)んだ。「お黙(だま)りなさい! あんたに、社長の自覚(じかく)があるのかい」
<つぶやき>社長はおばちゃんの息子(むすこ)なのかもしれません。さて、何をやらかしたのか…。
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