みけの物語カフェ ブログ版

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0878「おまもり」

2020-04-28 18:10:47 | ブログ短編

 私には二人の娘(むすめ)がいる。今年、次女(じじょ)の高校受験(こうこうじゅけん)を控(ひか)えていた。どこの家でもそうなのだろうが、我(わ)が家でもいろいろと気を使わなければならなくなっている。
 思い出すのは、長女(ちょうじょ)の大学(だいがく)受験の時のこと…。長女はおっとりしているというか、何があっても動(どう)じない性格(せいかく)のようで、家族(かぞく)の心配(しんぱい)をよそに無事(ぶじ)に合格(ごうかく)を勝(か)ち取った。それは良かったのだが――。次女の方が、これほど心配性(しんぱいしょう)だとは思わなかった。
 次女はどこで聞いてきたのか、〈落ちる〉とか〈すべる〉という言葉(ことば)に異常(いじょう)に反応(はんのう)していた。私たち夫婦(ふうふ)が長女の前でその言葉を口にしそうになると、大声をはり上げて制止(せいし)した。そして沢山(たくさん)のお守(まも)りを長女に手渡(てわた)して、二人で使っていた部屋も明(あ)け渡(わた)した。
 こんな彼女の初めての受験である。想像(そうぞう)できると思うが、姉(あね)のとき以上にピリピリとしているようだ。私が話しかけようとすると、すぐに口をとがらせてこう言うのだ。
「話しかけないで。勉強(べんきょう)に集中(しゅうちゅう)させてよ。あたしには時間がないの」
 こんな調子(ちょうし)で、最近(さいきん)はまともに話すこともできない。これは反抗期(はんこうき)ってやつなのか? 私はもう、どうしたらいいのか分からなくなっている。それでも、女同士(どうし)ではおしゃべりしているようで、妻(つま)や長女から話しを聞いてほっと胸(むね)をなで下ろしたりもしている。
 私は次女が寝静(ねしず)まるのを待って、彼女の勉強机(づくえ)にそっと受験のお守りを置いた。
<つぶやき>受験って大変(たいへん)ですよね。でも、受験に合格するのがゴールではありませんよ。
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